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外注費が「給与認定」される3つの判断基準とは 税務調査に備えて業務委託契約書に記載すべきこと
税理士法人田中経営会計事務所 代表社員 税理士/中小企業診断士 田中 慎
最終更新日:
2025年06月27日

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スタートアップで昨今よく見受けられるのは、雇用契約ではなく業務委託契約でメンバーとして仕事をお願いする組織形態です。なかなか資金面で雇用をするのはリスクが大きく、柔軟な体制で業務を回していく必要があることは理解できます。専門性があるメンバーに特定の業務の遂行を依頼する場合もあれば、実態はほぼ雇用契約であるにもかかわらず、経済的なメリットを重視して業務委託契約としている事例もあるように思います。雇用契約ではないからというだけで安易に外注費として処理していた場合、税務調査で給与認定されてしまうと、給与の源泉所得税の徴収漏れと消費税の課税仕入れが認められず、大きな追徴税額になる恐れがあります。今回は、給与(雇用契約)と外注費(業務委託契約)の違いについて理解を深め、税務上のリスクを避けるための知識を身に付けましょう。
給与と外注費の法的・税務上の定義
まず、給与と外注費が法的にどのように区別され、それが税務上どのように扱われるのかを理解することが重要です。
図表1:給与と外注費の法的区別と税務上の扱い
給与(雇用契約) | 外注費(業務委託契約) | |
---|---|---|
法的根拠 | 労働契約法、民法(雇用) | 民法(請け負い、委任、準委任) |
特徴 | 雇用契約は、労働者が使用者の指揮命令下で労働を提供し、使用者がその対価として賃金を支払う関係。労働者は労働基準法等の保護を受け、会社は社会保険料の負担義務や源泉徴収義務を負う。 | 請負人が特定の業務の完成を約束して、注文者がその結果に対して報酬を支払う関係(請負契約)や、特定の事務処理を委託する関係(委任契約・準委任契約)。請負人は会社の指揮命令を受けず、自己の責任と裁量で業務を遂行する。 |
税務上の扱い | 受け取る側では所得税法上の「給与所得」に該当し、会社は源泉徴収義務を負う。また、消費税においては、給与の支払いについては課税仕入れにはならない。 | 受け取る側では所得税法上の「事業所得」または「雑所得」に該当し、原則として源泉徴収義務はない。消費税においては、原則として課税仕入れに該当し、消費税の仕入税額控除の対象となる。 |
税務調査で「給与認定」される判断基準
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