総務のトピックス

【税務トピックス】:

税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組

2016-12-13 13:00

 国税庁では、大企業を対象に「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組」を進めており、このたび、平成28年6月14日付けでその事務運営指針を示しました。

1.趣旨

 大企業の税務コンプライアンスの維持・向上には、トップマネジメントの積極的な関与・指導の下、大企業が自ら税務に関するコーポレートガバナンスを充実させていくことが重要かつ効果的であることから、その充実を促進するとともに、効果的・効率的な調査事務運営を推進することを趣旨としています。

2.取組の背景

 本取組を実施するに至った背景には、以下のようなものが挙げられます。

 (1) 我が国全体の税務コンプライアンスの維持・向上の観点から、大企業の税務コンプライアンスの維持・向上は重要であること。
 (2) 近年、国内外において、コーポレートガバナンスの充実が重要との認識が高まり、法整備を含め、その充実のための環境整備が進展していること。
 (3) 税務当局の国際的な会議等において、税務に関するコーポレートガバナンスの充実が大企業の税務コンプライアンスの向上に重要との指摘がなされていること。

3.取組の概要

(1)税務に関するコーポレートガバナンスの確認

 「国税局特別国税調査官所掌法人」を対象法人とし、当該対象法人に係る実地調査の機会を利用して、対象法人に「税務に関するコーポレートガバナンス確認表」の記載を依頼します。当該確認表によって、下記のような項目がチェックされます。

 (1) トップマネジメントの関与・指導
 (2) 経理・監査部門の体制・機能の整備・運用
 (3) 内部牽制の働く税務・会計処理手続の整備・運用
 (4) 税務に関する情報及び再発防止策の社内への周知
 (5) 不適切な行為の抑制策の整備・運用

(2)税務に関するコーポレートガバナンスの判定

 調査によらずとも適正申告を期待することができるか否かを念頭に置き、調査への対応状況や帳簿書類等の保存状況も勘案して各確認項目の判定が行われます。なお、法人の取組が形式的なものではなく、実効性が確保されているかなどの観点から評価・判定はなされ、評価する項目について、確認表に記載がない場合や、取組に係る運用状況が明確でないものについては、法人にその状況を聴取し、評価されることとなります。

(3)トップマネジメントとの面談

 トップマネジメントがリーダーシップを発揮して税務に関するコーポレートガバナンスの充実に取り組んでいくことを促すため、調査結果の概要を説明し、その是正事項の再発防止に向けた取組を含め、税務に関するコーポレートガバナンスの評価が低かった事項について、効果的な取組事例を紹介しつつ、トップマネジメントとの意見交換が行われます。なお、前事務年度までにトップマネジメントとの面談を行っている法人については、前回の面談の実施状況等を踏まえて、具体的な改善策を提示するなど、さらなる充実が図られるよう意見交換が行われます。

(4)判定結果の活用

 調査法人の税務に関するコーポレートガバナンスの判定結果は、当該調査法人の調査必要度の重要な判断材料の一つとして活用されることとなります。


4.税務に関するコーポレートガバナンスの状況が良好な法人への対応

 税務に関するコーポレートガバナンスの状況が良好であり、調査結果に大口・悪質な是正事項がなく、調査必要度が低いと判断される法人については、一般に国税当局と見解の相違が生じやすい取引を自主的に開示し、当局がその適正処理を確認することを条件に、次回調査までの調査間隔が1年延長されます。
 なお、自主開示は、調査間隔を延長した結果、一回の調査の事務負担が法人及び国税当局双方にとって過重にならないようにするために実施するものであり、主な自主開示事項としては、申告済の事業年度に係る以下に掲げる取引等の処理で、取引金額が多額のものとなります。

 (1) 組織再編における適格組織再編か否かの判定
 (2) 特別損失計上取引の処理
 (3) 仮受金又は仮払金計上取引の処理 等

5.「申告書の自主点検と税務上の自主監査」に関する情報(調査課所管法人向け)

 前述の取組の対象となる法人はいわゆる「大企業」ということになりますが、その他にも納税者に自発的な適正申告を促す取組を充実させていくことを目的として、国税庁は、申告書の自主点検や税務上の観点からの自主監査を行う際に活用するための「確認表」を作成・公表しています。これらを有効に活用し、適正な申告を行うことが望まれるものと思われます。

(参考URL)
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/hojin/sanko/tk.htm

連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
    ( http://www.akj-partners.com/

 

【税務トピックス】:

役員給与の取り扱いについて
== 過大役員報酬と過大役員退職給与 ==

2016-11-16 11:34

 ある泡盛の酒造会社【原告】につき、役員4名に支給した役員報酬ないし役員給与【論点1】及び代表取締役を退任した者に対して支給した退職給与【論点2】について、いずれも不相当に高額な部分があり、当該金額は損金の額に算入されないとして法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことについて、当該役員報酬ないし役員給与及び退職給与の支給額はいずれも適正であるとして、原処分の取消しを求める事案につき、地方裁判所の判決が下されました(原告控訴中)。

 原処分庁側は、役員の職務の内容や法人の収益及び使用人に対する給与の支払状況、類似法人の役員報酬等の支給状況に照らし、類似法人の中から更に比較法人を抽出した上、複数の比較法人の役員給与の最高額を抽出し、これらを平均した額を超える部分は、不相当に高額であると主張して、原告の請求を棄却するよう求めていましたが、

【論点1について】
役員報酬については、地方裁判所は、役員らの職務の内容は、酒類の製造及び販売等を目的とする一般的な法人の役員において想定される職務内容を超えているとは認められず、また、原告の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況については、各事業年度において、その前に比して売上総利益、営業利益、経常利益はいずれも減少し、使用人に対する給与の状況に変化はないのに、役員給与総額のみが上昇していること、そして、原処分庁において抽出した類似法人の役員給与等の状況等にも照らすと、類似法人の役員給与の最高額を超える部分は、不相当に高額(過大役員報酬)であるとの判断を下し、原告の請求を棄却する一方、

【論点2について】
役員退職給与については、原処分庁は、「功績倍率法により不相当に高額な部分を判断する上で、退職する役員の「最終月額給与」相当額につき、抽出した複数の比較法人それぞれの役員給与の最高額を平均した額を超える部分は不相当に高額である」と主張していたところ、地方裁判所は、「比較法人の平均額については、比較法人間に通常存在する諸要素の差異やその個々の特殊性が捨象され、平準化された数値であると評価することは困難であると言わざるを得ない」と指摘し、その上で、退職した代表取締役の原告における従前の職務の内容等に照らすと、原告の経営や成長等に対する相応の貢献があったというべきであって、その職務の内容等が代表取締役として相応のものであるとはいえない特段の事情があるとは認められないから、比較法人の平均額を超える部分が不相当に高額な部分であるとすることはできないとの判断を下しました。


 法人税法においては、役員報酬のうち、当該役員の職務の内容や法人の収益、使用人に対する給与の支給状況、類似法人の役員給与の支給状況等に照らし、不相当に高額な部分の金額は損金不算入とされることとなっています。

 また、役員退職給与のうち、その法人の業務に従事した期間や退職の事情、類似法人の役員退職給与の支給状況等に照らし、不相当に高額な部分の金額は損金不算入とされることとなっています。

 このように、役員報酬・役員退職給与ともに、過大部分の有無につき「類似法人の支給状況」が判断要素の1つとされていますが、一方で、特に中小企業については上記判例にあるような類似法人に関する情報を正確に入手することは困難であることも少なくなく、こういった原処分庁でなければ入手しえない情報を基に課税処分が行われることに強い抵抗感が無いわけではありません。

 しかし、役員報酬や役員退職給与の金額につき、少なくとも、どのような過程で金額が算定されたのかを議事録等において残し、税務調査において説明ができる状況を作っておくとともに、役員報酬については、会社の売上や営業利益、使用人に対する給与の支給状況等に照らして、定期的に見直す必要はあるものと思われます。

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セルフメディケーション税制
== 医療費控除の特例としてのスイッチOTC薬控除の解説 ==

2016-08-17 17:28

 適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、健康の維持増進及び疾病の予防として一定の取組を行う個人が、平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る一定のスイッチOTC医薬品(*)の購入の対価を支払った場合において、その年中に支払った対価の額の合計額が12,000円を超えるときは、その超える部分の金額につき、88,000円を限度に所得控除を採ることができる仕組みであり、従来からありました「医療費控除」との選択制となっています。

(*) OTCとは「Over The Counter」の略で、街の薬局のカウンター越しに売られる薬、つまり市販薬のことを指します。
以前は医療薬であったものが、市販薬として薬局でも買えるように販売が許可されたものを、医療薬から市販薬(OTC)にスイッチされたということから「スイッチOTC」と呼ばれています。

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(*1) 「一定の取組」とは、医師の関与がある次の検診等又は予防接種をいいます。
   (1)特定健康診査 (2)予防接種 (3)定期健康診断 (4)健康診査 (5)がん検診

(*2) 厚生労働省のHPにおいて、対象品目一覧が公開されております;
   http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html
   (こちらのウェブページの「2セルフメディケーション税制対象品目一覧」から最新情報をご確認ください。)

(*3) 保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補填される部分の金額

(*4) 88,000円が限度となります。


 上述の通り、従来からありました「医療費控除」との選択制となっている点に注意を要するものの、本制度の下限は12,000円(医療費控除の下限は100,000円)とハードルも比較的低く、積極的な活用が期待されます。


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D&O保険(会社役員賠償責任保険)料の新たな取り扱い

2016-06-30 09:57

=== 社外取締役のいない未上場会社は特約部分も従来どおり給与課税 ===

 平成28年2月に国税庁より、「新たな会社役員賠償責任保険の保険料の税務上の取扱いについて(情報)」として新たな取扱いが公表されました。
 新たな取扱いとしては「株主代表訴訟担保特約」部分についても条件を満たすことにより、会社役員等に対して給与課税を行う必要が無いことを明確にしました。
 会社役員賠償責任保険は、D&O(Directors and officers)保険とも呼ばれています。このD&O保険の従来の取扱いは、以下が基本とされてきました。
1. 基本契約の保険料(「1.会社役員の責任とD&O保険の概要」参照)は給与課税の必要なし。
2. 株主代表訴訟担保特約の保険料は給与課税。

 今回「2.」について、コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会が取りまとめた報告書「コーポレート・ガバナンスの実践 - 企業価値向上に向けたインセンティブと改革 -」においては、会社が利益相反の問題を解消するための次の手続を行えば、会社が株主代表訴訟敗訴時担保部分に係る保険料を会社法上適法に負担することができるとの解釈が示されました。
1. 取締役会の承認
2. 社外取締役が過半数の構成員である任意の委員会の同意又は社外取締役全員の同意の取得

 これに対応して経済産業省が国税庁に照会し、国税庁は上記の手続きを行うことにより会社法上適法に負担した場合には、役員個人に対する給与課税を行う必要はないと公表しています。


1.会社役員の責任とD&O保険の概要

 D&O保険は、経営に関わる多くのリスクに備え、幅広い補償に対応している保険です。保険期間中に被保険者に対して損害賠償請求がなされたことにより、被保険者が被る損害を填補する保険をいい、いくつかの保険会社から商品が販売されています。
 すなわち、保険商品ですので各保険会社が取り扱う具体的な内容は各保険会社との契約により異なります。実際、様々な特約等により填補が拡大されているようですので、税務上の判断は今後においても慎重に行う必要がある点は変わりません。
 今回の新たな取扱いをより理解していただくため、会社役員の責任を下記の通り整理します。

    <会社役員の責任>
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 これらを国税庁から公表されたものに当てはめると、「基本契約の保険料」は、会社役員が第三者(取引先・株主等)に損害を与えた場合に損害賠償を求める訴えを提起するものに対する保険料と考えられます。また、「株主代表訴訟担保特約」は株主が会社に代わって会社役員に対して損害賠償を求める訴えを提起するものに対する保険料と考えられます。
 言い換えると、従来は基本契約の保険料は「経済的利益の供与」は無いものとして取り扱われ、株主代表訴訟担保特約の保険料は「経済的利益の供与」があるのではないかと解釈上の争いがあったことから、その取扱いは実務上の安全策をとったとされています。
 なお、各保険会社のD&O保険は、株主が提訴した株主代表訴訟であれば、保険による填補の対象となることが多いと考えられますが、会社が独自に役員に対して損害賠償を求める訴えを提起した場合の損害賠償は免責となっている場合があります。つまり、いわゆる社内の不祥事があった場合に、社内の第三者委員会等で役員に対して損害賠償請求を請求した場合等は保険契約の対象とならないことがあります。平成27年7月24日にコーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会が取りまとめた報告書においても、標準的なD&O保険は、犯罪行為や法令違反を認識しながら行った行為等の悪質な行為は免責とし、職務執行から不可避的に生じるリスクに対しての保険とされています。


2.取扱いの変更により想定される上場会社・未上場会社への影響

 今回の取扱いが認められた条件を鑑みれば、「社外取締役」がいることがD&O保険の「株主代表訴訟担保特約」部分の保険料を会社が負担した場合に会社役員の給与課税とならないための必須条件ともいえます。
 ただ、社外取締役の選任がそもそも必須とされているのは、公開会社かつ大会社である監査役会設置会社等ですので、これに該当しない限りは社外取締役が存在する会社はごく少数と考えられます。
 すなわち、上場会社からしてみれば、社外取締役の必要性が高まる中、今回の変更は社外取締役の就任を承諾してもらうための有効な材料になると考えられます。一方、会社法上の問題が解消されたとはいえ、未上場会社は社外取締役を選任しない限りにおいては給与課税が免除されることは無いと考えられます。しかし、条件として「社外取締役全員の同意」があれば良いとされているので1名選任し同意を得ることにより条件をクリアすることが可能と考えられることから、そもそも社外取締役の意義が未上場会社においても見直されることにつながる可能性もあります。


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平成28年度税制改正 ―利益連動給与と譲渡制限付株式―

2016-03-25 10:41

1.利益連動給与

 損金の額に算入することができる利益連動給与とは、同族会社に該当しない法人が業務執行役員に対して支給する、利益に連動する給与で次に掲げる要件を満たすものをいいます。

(1) その算定方法が、当該事業年度の利益に関する指標(金融商品取引法に規定する有価証券報告書に記載されるものに限る)を基礎とした客観的なもの(次に掲げる要件を満たすものに限る)であること。

  •   (a) 確定額を限度としているものであり、かつ、ほかの業務執行役員に対して支給する利益連動給与に係る算定方法と同様のものであること。
  •   (b) その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに、報酬委員会(会社法に規定する報酬委員会をいい、当該法人の業務執行役員等がその委員になっているものを除く)が決定をしていることその他これに準ずる適正な手続として一定の手続きを経ていること。
  •   (c) その内容が、bの決定または手続の終了の日以後遅滞なく、有価証券報告書に記載されていることその他財務省令で定める方法により開示されていること。

(2) (1)に規定する利益に関する指標の数値が確定した後1か月以内に支払われ、または支払われる見込みであること。

(3) 損金経理をしていること。

 このうち、上記(1)に規定する「当該事業年度の利益に関する指標を基礎とした客観的なものであること」について、平成28年(2016年)度税制改正により、利益連動給与の算定指標の範囲にROE(自己資本利益率)その他の利益に関連する一定の指標が含まれることが明確化される見込みとなりました。これに伴い、従前より柔軟な報酬設計が可能になったと言えます。


2.譲渡制限付株式(Restricted Stock)

 譲渡制限付株式(Restricted Stock)とは、法人が役員等に対し、一定期間の譲渡制限が付された株式を報酬として付与するものであり、中長期の業績向上に向けたインセンティブプランの1つです。

 平成28年(2016年)度税制改正により、各種役員給与制度に関する見直しの1つとして、法人が個人から受ける将来の役務の提供の対価として譲渡制限付株式(Restricted Stock)を交付した場合には、当該役務の提供に係る対価の額は、「事前確定届出給与」の1つとして損金算入できることになります。ただし、通常の事前確定届出給与とは異なり、事前確定の届出は不要とされる予定です。

 なお、当該損金の額に算入される時期は、一般的な税制非適格ストックオプション(1円ストックオプション)と同様に「給与等課税事由が生じた日の属する事業年度」ということになります。

 当該譲渡制限付株式に係る「給与等課税事由が生じた日」については、「譲渡制限付株式の譲渡制限が解除された日」になると考えられます。

 また、今回の改正が適用される「譲渡制限付株式」は、2016年4月1日以後に交付決議されたものが対象となります。

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