前回までで印紙税法で定める第1号文書から第20号文書までのすべての課税文書を一通り見てきましたので、みなさんも課税文書については、だいぶイメージをもっていただけたのではないでしょうか?
今回は、ビジネスをしているとよく目にするような契約書について具体的に考えてみたいと思います。 ぜひ、みなさんも一緒に考えてみてください。
最近では実際に店舗を持たない会社がインターネット上のサイバーモールに出店を行ったり、実店舗を運営しておられる会社でもサイバーモールに出店をし物販を行うといったことも多いかと思います。
日本では、楽天やYahoo!、Amazonが有名かと思いますが、サイバーモールに出店をする際には、当然サイバーモールの運営会社と出店者の間で出店に関する取引条件を定めるために契約書を交わすことになると思います。
では、このサイバーモールの出店契約書は課税文書に該当するのでしょうか?(また、該当する場合は第何号文書でしょうか?)
正解は...
契約書の内容により、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)もしくは課税文書に該当しないものと考えられます。
印紙税は文書の名称だけでは、その文書が課税文書なのかどうなのかを判断することはできません。
サイバーモールにはそれぞれの出店者がもつ店舗ページへの窓口的な役割を果たすリンク集のようなものから、決済代行サービスまで提供しているものまで、様々な携帯のものがあります。 前者のリンク集的なもの、例えば、単にサイバーモール上に出店者のページを掲載することを許諾する内容の契約書であれば、これは、課税物件表のどの文書にも該当しませんので、課税文書には該当しない(不課税文書)ということになります。
対して、後者のようにサイバーモールの運営会社が商品の購入申込情報を受け付けて、これを出店者に送信するといったシステムであれば、出店者の受注業務を委託する目的で作成された契約書ということになりますので、第7号文書に該当すると考えられます。
ただし、第7号文書には「契約期間が記載されている必要があったり、契約期間が3ヶ月以内で、かつ、更新の定めのないものを除く」といった条件がありますので、不安な方は課税物件表や本コラム第22回、第23回を確認してみてくださいね。
一言コラム:遺産分割協議書と印紙税
相続税法の改正による増税が世間では何かと話題になっていますね。 相続税といえば、今までは財産をいっぱい持っている人が納める税金というイメージだったと思いますが(実際に改正前の課税対象者は年間死亡者数の約4%程度でした。)、この改正により、相続税の課税対象者は1.5倍になるとも言われています。
相続税のお話はこれくらいにして...今回は相続に関する印紙税のお話をしたいと思います。 相続が起こった場合、相続人の間で遺産を分割するために「遺産分割協議書」というものを作成することになると思います。
では、この遺産分割協議書は課税文書になるのでしょうか?
「どういうこと?」と思った方のために少し補足をしますね。 通常、不動産の譲渡に関する契約書は第1号文書として課税の対象となりますよね。
では、遺産の中に不動産が含まれていた場合、その不動産を分割する協議書は不動産の譲渡に関する契約書と言えるのでしょうか... 答えは、遺産分割は不動産の譲渡ではないことから、課税文書には該当しません。
印紙税法基本通達 別表 第1課税物件、課税標準及び税率の取扱いの第1号の1文書の中にも、 「相続不動産等を各相続人に分割することについて協議する場合に作成する遺産分割協議書は、単に共有遺産を各相続人に分割することを約すだけあって、不動産の譲渡を約するものでないから、第1号の1文書(不動産の譲渡に関する契約書)に該当しない。」 と記載されています。
さて、冒頭でもお伝えしましたが、前回までで課税文書については一通りご説明をさせていただき、今回、それらを踏まえて具体的な文書の判断についてお話させていただきました。 これからは一つ一つの文書に対して、みなさんがその内容から課税文書なのか、または、第何号文書に該当するのかといったことを判断していかれることになるかと思いますが、このコラムが少しでもそのお役に立てば幸いです。
印紙税についての私のコラムは今回で一旦終了となりますが、次回からは別のコラムとして関税についてみなさんにお話をさせていただく予定です。 輸出入についてご興味のある方は、そちらのコラムで引き続きお付き合いいただけましたらと思っております。 今までありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いします。
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