今回からは印紙税を考える上で重要な要素である「記載金額」について見ていきたいと思います。
印紙税では、記載金額が一定額未満の取引を非課税としたり、契約書や売上代金の受取書(領収書)のように記載金額によって印紙税額が決定されることから、「課税文書の記載金額」は非常に重要なものなのです。
記載金額とは、「契約金額、券面金額その他当該文書により証されるべき事項に係る金額として当該文書に記載された金額」とされています。(印紙税法別表第一の課税物件表の適用に関する通則4)
要するに、一言で言ってしまえば契約書や領収書に書かれた金額のことですので、そんなに難しく考える必要もなさそうなのですが、みなさんは契約書に契約金額○○円と明記されていない契約書などを見たことはないでしょうか?
例えば、ある請負の契約について、物品の単価と数量は記載されているが総額が明記されていなかったり、金額は見積書の通りなどと、単価や数量すら記載されていない契約書などです。 実は、こういった場合の記載金額の考え方についてもしっかりと決まりがありまして、
(1)単価及び数量、記号その他により契約金額を計算することができる場合
→計算により算出した金額が記載金額となる。
(2)譲渡契約や消費貸借契約、請負契約において見積書や注文書などが存在し、それらの文書より当事者間において契約金額が明らかである場合
→明らかである金額または計算により算出した金額が記載金額となる。
(3)売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書(領収書など)において請求書や支払通知書など受取金額の記載のある文書を特定できる事項の記載があることにより、当事者間において受取金額が明らかである場合
→明らかである金額が記載金額となる。
となっており、「契約書や受取書に○○円といった形で金額が明記されてない=記載金額のない契約書に該当する」というわけではないので、注意が必要です。(印紙税法別表第一の課税物件表の適用に関する通則4ホ)
一言コラム:外国通貨で記載された契約書の記載金額はどうなるの?
みなさんは、契約書の記載金額が外国通貨で書かれているといったケースを目にされたことはないでしょうか? 印紙税法は日本の法律であり、また、印紙税は日本に納税することから、当然その通貨の単位は「円」になるのですが、それでは、契約書の記載金額が外国通貨で書かれていた場合には、一体どうやって日本円に換算すればよいのでしょうか...。
実は、印紙税法では、記載金額が外国通貨により表示されている場合には、文書を作成した日に適用される基準外国為替相場または裁定外国為替相場により円換算した金額を記載金額とすると定められています。
(印紙税法別表第一の課税物件表の適用に関する通則4ヘ)ここでぜひ注意していただきたいのは、法人税法や所得税法では、外貨建取引をした際に円換算を行うレートについて、「取引日における対顧客電信売買相場の仲値(TTM)」にて換算を行うことを原則としていますが、印紙税法ではそれらと扱いが異なるということです。 ちなみに、基準外国為替相場や裁定外国為替相場は、日本銀行のホームページで調べることができます。
日本銀行HP「基準外国為替相場および裁定外国為替相場一覧」
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