企業はいよいよ国際標準である「社会的責任の手引」(ISO26000)を使いこなして、慈善活動的CSRから本業CSRへ転換し、ポーター教授らによる社会課題と経済価値の同時実現を狙う競争戦略としての「共有価値の創造」(CSV)も織り込んでいく必要があります。
また、最新の国際的な共通言語であるSDGs(持続可能な開発目標)を使いこなさなければなりません。
さらに、企業は、投資家に対してもESGを重視してどのように持続的に価値を創造していくかという「ストーリー」を語り、メディアをはじめ関係者と良い関係(リレーションズ)を築く本来的な意味の「パブリックリレーションズ」が重要です。わかりやすくするため「三方よし」の考えも使い、「隠徳善事」では伝わらないので「発信型三方よし」として理解していきます。
筆者の31年の行政経験と9年の企業経験を活かし、「これならわかる共有価値創造とサステナビリティ経営の理論と実践」という実践的な角度で皆様と考えていくサイトです。地方創生もCSR/CSVの実践として紹介していきます。
CSR、IR、広報、ブランディング、経営企画など幅広い業務の責任者・実務家、そして経営層の関心にも答えていきます。


(※)CSR企業の社会的責任: corporate social responsibility   CSV共有価値の創造:creating shared value
ISO国際標準化機構: International Organization for Standardization   SDGs持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals

笹谷オリジナルコラム:

笹谷秀光の「協創力が稼ぐ時代」<第6回>
美的・次世代マーケティング

2018-03-29 16:00

パリのルイ・ヴィトン

 パリのヴァンドーム広場。ココ・シャネルが住んでいたり、ナチス時代に本部が置かれ、映画「パリは燃えているか?」に出てくるパリの爆破をヒトラーに命令され拒否したコルティッツ司令官などで歴史上有名なホテルリッツのある広場です。筆者がパリで最も好きな広場です。2017年10月にパリを訪れた時の印象をお話しします。

 このヴァンドーム広場に行く前に、はっとするようなビル全体へのラッピングが目に入りました。景観規制の厳しいパリですから許可を取ったのでしょうか。

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 良く見るとルイ・ヴィトンの入ったビルでした。ルイ・ヴィトンと言えば、建築家のフランク・ゲーリーの手で2014年に誕生したパリの「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」(ルイ・ヴィトン美術館)がブローニュの森にあります。

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 フランスをはじめとする世界各国の現代芸術の創作活動を支援し、多くの人々にその作品を紹介する複合文化施設だそうです。公式サイトを見ると興味深いです。
http://www.fondationlouisvuitton.fr/ja.html

 最近、有名ブランドもこのような美や環境を企業の志(「パーパス」と言います)として打ち出すところが増えています。モノを売る時代から、美や価値創出を売る時代への変化を感じさせます。ルイ・ヴィトンのこの取り組みは、まさに「美的マーケティング」です。

 この点に関連して、オルタナの小松遥香さんの次のサステナブル・ブランド(オルタナ)サイトでの記事が秀逸です;
「高級ブランドが相次ぎサステナビリティ・シフト加速」http://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1190318_1534.html

 

建築と街並みが今後の重要な価値

 ブローニュの森にあるルイ・ヴィトン美術館の建物はひときわ目を引きます。

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 フランス人は、昔も今も、建築価値を重視する国民性を持っています。例えば、観光の「緑のミシュラン」日本版では、銀座の国際フォーラムのガラス棟やエルメスのビルが三ツ星になっています。

 国際フォーラムは今後東京五輪・パラリンピックも控え、MICE需要も盛り上がり、インバウンドのインフルエンサーが多く訪日するのでチャンスです。

 

 近くには、まちづくりでグッドデザイン賞を取った丸の内仲通りもあります。今やパリのブランド街の通りのようなおしゃれな街並みになりました。グッドデザイン協会の展示店もあります。この丸の内仲通りの周辺は、三菱地所グループやその関係者が力を入れるエリアです。

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「三菱地所を見に行こう」

 この宣伝の伝え方が大好きなので、「パリにもあったはずだな」と思い、見に行きました。

 周りの歴史的な建物の中でひときわ目立つガラス張りのモダンなビルでした。欧州進出の一つの拠点にするそうです。

 2014年12月に開設されたオフィスビルで、「46 Rue La Boétie」にあります。凱旋門やシャンゼリゼ通りからもほど近いパリ中心部の8区に位置し、三菱地所グループとしてはヨーロッパ大陸に保有する初の物件だそうです。

 このビルのあるボエシー通りは、オスマン通りやサントノーレ通りといった著名な大通りの間に位置しています。

 三菱地所は「人を、想う力。街を、想う力。」がキャッチフレーズでエリアマネジメント力を磨いています。この「想う」というのが含蓄深いです。今後の展開が期待されます。

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パリのユニクロ

 パリのブランド街の一つ、マレ地区は、シャネルなどもありシックな街並みです。

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 その中に日本のユニクロの店舗があります。おなじみのロゴが小さく出ていました。店舗に入ると日本のユニクロとは様相が違います。美的オブジェを置いたコーナーもあり、「奥の院」のようなところにヒートテックのコーナーがあります。日本のクールジャパンの技術を売り込んで、評判が高まっています。

 ヒートテックの効果の「魅せ方」は、SDGsを思わせる、言葉のいらないピクトグラムが功を奏しているようでした。

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 近くには「MUJI」もあります。もはや、これが日本発の「ブランド」と思うフランス人はいないかもしれません。

 

パリは美的マーケティングのプラットフォーム

 このようにパリで現地化すると何でもおしゃれになります。パリはすごい「器」だと思います。換言すれば「プラットフォーム」です。

 それは数々のイノベーションを生んできた都市だからでしょう。

 ちょうど「Nuit Blanch」(白夜祭り)というイベントをやっていて、例えば、歴史を感じさせるパリ市庁舎前で現代芸術のパーフォーマンスを市民参加型でやっていました。

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パリの美的・次世代育成

 パリにはどうしてこのような活力があるのでしょう。その一端は次のようなことかもしれません。私の著書の一節をご紹介します。

 フランス・パリの住宅街16区にマルモッタン美術館があります。印象派の由来となった、モネの『印象、日の出』という有名な絵がある美術館です。筆者はここが好きで、パリに行くとよく訪れます。そんなある日、興味深い光景を見ました。

 フランスの小学生十数人が、教師に連れられてこの絵を車座で囲んでいます。教師がこの絵を見てどう思うか問い掛けます。小学生は「光が美しい」などさまざまな感想を述べ、教師は双方向の方法で実践的授業を進めています。

 「なぜそう感じるか」「絵の描き方にどんな工夫があるか」など、小学生相手とは思えないやり取りをしているのです。解説するのではなく、絵を見て考えさせています。「なるほどなぁ」と感心しました。

 本物の名画を見て小学生が「気づき」を持ち帰ることで、斬新なアイデアや美的感覚を持つ人材が生まれます。フランスでは、個人の才能を花開かせる教育が威力を発揮しているのでしょう。その才能の発揮が効果的な仕組みやコミュニティづくりにつながっているのです。

 斬新なアイデアや構想が採用されるよう、多様性(ダイバーシティ)を認めて社会のダイナミズムを保持しています。フランスは少子化問題も乗り越えました。内閣の閣僚の半数が女性です。

 経済では必ずしも成功しているとはいえませんが、美感覚・景観・まちづくり計画に関しては、やはり欧州の中でも随一といっていいでしょう。

 

パリの建築中の覆いに見る美の追求

 パリ16区、―筆者がかつて住んでいた住宅エリアで面白いものを見つけました。

 ビルの改装の建築現場で「覆い」をしてそこに絵をあしらって景観に溶けこませています。ブルーシートやプラスティックの囲いではなく、建築中でも周りの景観に配慮にする工夫と姿勢には学ぶ点が多いと思いました。

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笹谷オリジナルコラム:

笹谷秀光の「協創力が稼ぐ時代」<第5回>
次世代育成SDGs

2018-03-23 14:00

青少年の体験活動推進企業表彰とSDGs

 筆者が審査委員を務めた関係で平成29年度青少年の体験活動推進企業表彰でのパネルディスカッションでモデレーターを務めました(3月1日)。主催者の文部科学省では、企業のCSR/CSV活動を通じた青少年の体験活動を推進するため企業を表彰しています(今回が5回目)。

  http://www.csr-award2018.jp/ceremony.html#oubo

 これはSDGsの目標4「質の高い教育」に該当し、「SDGsアクションプラン2018」で示された次世代の育成です。パネルは「企業と青少年教育をつなぐ連携とは」というテーマで、モデレーターとして示した論点整理をここに採録いたします。

 

パネルディスカッションで論点提示を行う筆者

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パネルディスカッションでモデレータを行う筆者

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(右は同じく審査委員の明石要一先生)

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青少年を取り巻く状況

 最初に、今の時代状況を読み解く3つの要素を確認しました。相次ぐ文化遺産がヒントになります。2013年に富士山、これは日本人の心に刻まれた文化遺産。それから和食、手漉き和紙、祭り、富岡製糸場、神宿る島。日本的な価値観が世界のユネスコに認められ、しっかりと世界に発信ができて、そこに五輪・パラリンピックが来るわけです。

 また、ICTやAIの進化を活用する「Society5.0」が課題です。日本の良いもの(クールジャパン)をしっかり発信して、ますます増えているインバウンドの方々にも訴求して、レガシーとして遺していくというのが今の時代の課題でしょう。

 政策課題も国際都市東京の形成は「2020」まで、地方創生も2019年までが第1期で、今まさに真っ最中です。加えて「次世代育成」が重要で、全部合わせて日本創生を目指すという状況と整理できます。

 国民全体が「2020年までに」というタイムラインの「締め切り効果」を生かして、それぞれ自分はそれまでに何ができるかを考える必要があります。

 そして、企業にもこれから世界で渡り合っていく羅針盤が欲しいところです。その絶好の羅針盤がSDGs、筆者の言葉で言えば持続可能性に関する世界の共通言語です。今日のテーマはSDGsの4番「質の高い教育」です。このロゴを見るとノートとペンですね。

 

「発信型三方よし」に「学び」を加える

 このような中で、企業は、簡単に言えば「三方よし」、つまり、「自分よし、相手よし、世間よし」という、もともとあった商人哲学を生かして活動すると良いでしょう。

 この三方よしに、今日のご提案として、まず「学び」を加えて欲しいと思います。三方よし構造をつくり、三方のそれぞれが学ぶ。つまり、企業では社員が学び、相手のパートナーも学び、そして世間、つまり地域社会でも学ぶのです。

 もう一点、三方よしには補正が必要です。いつも申し上げているとおり、「陰徳善事」というのが常に一緒に心得としてある。「徳と善いことは隠す」「わかる人にはわかる」「空気を読め」という意味です。ところが、今のグローバル時代には、そして今や日本でも若い世代には通用しない。

 いわゆる「ミレニアル世代」、2000年に成人を迎えた若者 - Facebookのザッカーバーグが代表例です - がいます。その前はX世代といわれ、ザッカーバーグのミレニアル時代をY世代とも言います。さらにそれ以降に生まれた若者はZ世代といいます。このY世代からZ世代までの若者には、「わかる人にはわかる」は、日本人の間でも全然伝わらないです。

 ミレニアル世代の特徴は世間を見る価値観として持続可能性を重視する、SNSなどを徹底的に使いこなす、不要なモノは持たない、買わないといった特徴があります。世代論ですから全員というわけではなくそういうタイプの人の比率が高いということです。

 そこで、筆者は、三方よしに発信を付けろということで「発信型三方よし」を提唱しています。今回の文部科学省での受賞企業は絶好の発信のキッカケをつかみました、これが受賞の大きな意義の一つです。

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本業活用で好循環を

 青少年の体験活動が必要な理由は「体験格差」を是正することです。そこに企業の本業力を使えないかということがポイントです。

 企業が本業を使うとなぜ青少年の体験活動に充実度を与えるか。まず、企業にはいろいろなスキルや資格を持った人がいます。加えて、「本物」の現場を持っている。工場、作業の現場、テレビ局の撮影室の中などリアルな現場がある。学校ではこれらの現場を提供するには限界があります。

 さらに現場に出向けば、生き生きと仕事をしている人たちと直に触れ合うことができます。一方、青少年を迎える社員にとっても学ぶことができて、それにより社員が新たな気づきを得てイノベーションにつながる効果が出てきます。

 この好循環のサイクルができると、本業に好影響が生まれます。簡単に言えば、まず「いいね」と共感を呼ぶのです。次にこの活動をなぜ行うのかをうまく説明すれば「なるほど」と理解が深まります。そして、そんなにいいなら「またね」と継続につながっていくのです。

 この「いいね、なるほど、またね」というサイクルを築いて欲しいと思います。これがCSR/CSV活動のコツです。この循環を目指していると「さすが」という評価につながるのです。

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関係者連携のSDGsで共有価値を創造

 もう一点重要なことは、1社だけで活動するのではなく、「産官学金労言」の連携で行うことです。

 SDGsについてもパートナーシップが重要であると強調されています。昨年12月に発表された「ジャパンSDGsアワード」受賞12団体・企業の中には小学校も選ばれています。江東区立八名川小学校で、教育内容にSDGsを参照しています。この事例を分析すると、青少年の体験活動でも有益なヒントになると思います。

 

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笹谷オリジナルコラム:

笹谷秀光の「協創力が稼ぐ時代」<第4回>
ジャパンSDGsアワード

2018-02-03 07:00

ジャパンSDGsアワード:SDGs「実装元年」を迎えて

 第1回「ジャパンSDGsアワード」の発表(昨年暮れ)で、各セクターのトップランナーが選ばれ、SDGs推進の政府としての方向性が示されました。いよいよSDGs「実装元年」を迎えたと思います。

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「ジャパンSDGsアワード」(平成29年度)は、持続可能な開発目標(SDGs)推進本部が公募し、SDGsで優れた取組を行う企業・団体等を表彰する制度で、2017年度が第1回目です。おかげさまで筆者が勤務する伊藤園も特別賞を受賞しましたので、受賞内容を振り返っておきます。

 第一回の受賞者は、内閣総理大臣賞1団体、内閣官房長官賞3団体、外務大臣賞2団体、SDGsパートナーシップ賞6団体の計12団体です。

(12団体の取り組み紹介はこちら: http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/ )

 全受賞団体の代表が勢ぞろいしてプレゼンテーションする政策分析ネットワーク主催のシンポジウムが1月20日に開催されました。外務省国際協力局 地球規模課題総括課長 甲木浩太郎氏、国連広報センター所長根本かおる氏、朝日新聞社報道局デスク北郷美由紀氏がコメンテーターとして参加しました。

 私は伊藤園の枠でプレゼンし、現下の企業のSDGsへの対応での基本的方向を述べましたので、概要を以下に採録しておきます。

 

笹谷のプレゼン:なぜ今SDGsか

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 はじめに、SDGsをめぐり、企業の現在おかれている状況を確認しておきます。

 日本再興戦略で日本企業の競争力を高める、このために、もともとあったトリプルボトムライン、つまり、企業は経済だけでなく環境(E)・社会(S)と接点を持ちながら活動すべきあるという考えが基本です。最近ではこれにガバナンスの規律を強化していくESGという動きになっているのです。

 EとSはもともとありましたが、経済主体の統治構造のところをガバナンスとして強化するという流れです。このESGのうねりがきていると思います。

 そこで、SDGsのタイムラインを考えてみますと、ESGすべてについて重要な決定があったのが2015年でした。まもなく2020年の東京五輪・パラリンピックも来て、大阪の万博招致が2025年、そして2030年のSDGs目標に向かう。こういうタイムラインの中で2018年はまさにSDGsの実装元年と言ってはいいのではないかと思うわけです。

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本業で社会対応力:CSR 再考:本業CSRへ

 ここでCSRについてもう一度捉えなおしておく必要があります。これまでの「フィランソロピー型」のCSRでは継続性がないので、今は本業CSRになっているわけです。

 一方、CSRの訳語の「社会的責任」。この「責任」という訳語のニュアンスは若干狭い。本来的な意味である「レスポンス+アビリティ」。すなわち「社会対応力」と捉え直す必要があります。

 もともと2010年に、CSR関連で網羅的なガイダンスとしてISO26000ができています。これは、国際標準化機構が作った「社会的責任に関する手引き」ということで、今日お集まりの関係者の皆様に適用される。いろんな組織に適用されるわけです。もちろん企業にとってもこれはCSRの羅針盤です。

 この規格は読んでみると、大変網羅性が高く、CSRを進める上で国際合意がありJIS規格にもなっている。これを今日改めて見直していく価値があります。 

 ISO26000では本業でCSRをこなしていくべきであるという点を明確化し、7つの中核主題(やるべきことリスト)を示しました。「組織統治」をきちっと真ん中でやり、「人権」「労働慣行」「環境」「公正な事業慣行」「消費者課題」「コミュニティへの参画およびコミュニティの発展」。この7つのテーマをこなすということになったのです。

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 このようにCSRを社会対応力と捉えますと、別途提唱されている「共有価値の創造」(CSV)につながります。社会価値と経済価値を同時実現する魅力的な概念です。この概念の実践にも持続可能性の共通言語であるSDGsが役立ちます。

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既存の体系を生かす:SDGsとISO26000

 こういう流れの中で今回SDGsが発効されたわけであります。現在、一部上場企業では、7つのテーマで課題の洗い出しが既に終わっている企業が多いわけです。

 そこでISO26000の図にSDGsの各目標を「主として」関係ある項目にマッピングしてみます。例えば、ジェンダーは人権、労働慣行に関係がある。8番は働きがいのある職場づくり。6、7、13、14,15番は環境の関連です。公正な事業慣行は16番。消費者課題のところは「つくる責任、つかう責任」(目標12)や3番の健康。コミュニティ系でいけば11番が代表なわけです。全体に関係あるものとして1番、2番、10番、17番です。

 このように主に関係あるところに位置づけながら、今までの体系をうまく使って2030年の目標を念頭に置きながら活動する。これによってCSRが最新課題に対応できるものになります。

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共有価値創造戦略:SDGsとCSV

 そして、今回のSDGsは企業の役割も強化しました。このためSDGコンパス、企業の導入指針がありますが、非常に良くできています。

 まず、チャンスは何か、次にリスクは何かの両方を見直すことによって経済価値の実現・競争優位とリスク回避と社会課題の解決につながります。これは経済価値と社会価値を同時実現しようというCSVをさらに最新の世界的な社会課題と絡めることでバージョンアップできる構造になっているわけです。SDGsを使うことによって競争戦略に役立てることができます。

 

投資家にも訴える:ISO26000とESG

 もう一点、7つの中核主題のISO26000体系を整えておけば、真ん中にGがありますし、Eもあります。そして残りの5項目がSであると理解すればいのです。このようにISO26000体系はESGの対処にも十分に役立てることができる優れた国際標準です。

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SDGs先進国を目指す:政府のSDGsアクションプラン2018 

 政府はSDGsアワードの発表とともに「SDGsアクションプラン2018」を発表しました。その中でSDGs先進国を目指し世界に発信していくことを掲げました。

 主要実行項目の中に、「環境・社会・ガバナンス(ESG)投資の推進等」という項目も盛り込まれました。

 伊藤園では以上の考えを応用してSDGs体系を作っていますのでそれに即して伊藤園の取り組みも紹介し、私のプレゼンとしました(約9分半でした)。

 

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笹谷オリジナルコラム:

笹谷秀光の「協創力が稼ぐ時代」<第3回>
新年に日仏比較から学ぶ

2018-01-04 10:00

フランス、世界文化遺産モン・サン・ミッシェルに学ぶ

 新年にあたり、初心に帰ろうと思います。私のグローバルとの最初の接点はフランスです。31年間勤務した農林水産省に入ってすぐに、フランスに留学に行きました。非常に印象に残ったのがモン・サン・ミッシェルです。昨年久しぶりに再訪した時に持続可能性について考えさせられました。

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モン・サン・ミッシェル

 

 モン・サン・ミッシェルはパリから西に3時間ほどのノルマンディー地方にある世界文化遺産です。干潟に囲まれた島の中の修道院に巡礼の地として昔から多くの人が訪れ、今は観光客を含め年間300万人が来ます。

 修道院に行くには急峻な坂を上っていかなければならないのですが、島に入ってすぐの入口に「ラ・メール・プラール」というオムレツ屋があります。巡礼者に何を食べてもらったら胃に優しいだろうか考えた結果、オムレツにいきついたそうです。

 この店は、日本でいえば手打ちそばのように、調理作業を見せて美味しそうだと感じさせるスタイルで、値段は非常に高いです。値段が高いというのがポイントです。こういうものを安売りしているようではダメなのです。今では観光客にも人気で、このオムレツビジネスは、モン・サン・ミッシェルの名声とともに広がり、支店ができたり、いろいろな土産店などの事業展開もされています。

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「ラ・メール・プラール」のオムレツ

 

 島内の石造りの建物は改造されてWi-Fi完備の快適なホテルや「民宿」があります。

 そして夜になると、写真のように、すばらしいライトアップです。ここまで使い切るかというぐらい世界遺産を使っています。

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 周りの干潟にはいろいろな鳥がいて、海の満ち引きによる生物多様性を感じることができます。昔は車の乗り入れもできた記憶があります。

 かつては対岸との間に地続きの道路があり干満に関係なく島へと渡れました。しかし、急速な陸地化が進行して干潟が荒れてしまった。そこで、かつての姿を取り戻すべく多大な予算の国家事業で、2009年には地続きの道路が取り壊され、2014年に新たな橋が完成したといいます。

 今は車の乗り入れをやめて、環境配慮の電気シャトルバスで島内に入ります。水鳥なども戻り、生物多様性を学ぶツアーもあります。1994年10月にはラムサール条約登録地になっています。

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電気シャトルバス

 

 このように世界遺産をうまく使いながら守っていく。保全と利用、伝統と最新技術、人と自然、観光と暮らしの調和です。このノウハウを学ぶには、1週間ほど滞在していろいろなものを見るべきだと思いました。今回は1泊だけの滞在でしたが、朝昼晩と素晴らしく学ぶことが多かったです。

 

日本の白川郷とフランス

 それでは、日本はどうかといいますと、フランスと縁の深い、日本の代表的な文化遺産があります。合掌造りで知られる白川郷を見てきました。白川村の人口は1,600人強で、観光客は外国人の伸びが大きく年間180万人を超えています。

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白川郷の冬景色

 

 白川村のある岐阜県はフランスのアルザス地方とつながりが深いです。2014年に「日本---アルザス友好150周年」事業の一環として、多くの経済協定が調印されました。

 その一つが、2014年11月締結の白川村とアルザス地方のリクヴィール村の友好関係推進宣言書の調印です。これはアルザスと岐阜県との次のようなつながりの一環なのです。

・岐阜県---オーラン県 経済・観光に関する協力覚書
・高山市---コルマール市 経済・観光協力協定書
・飛騨地酒ツーリズム協議会---アルザスワイン街道 友好提携宣言

 このように、岐阜県、高山市、白川村という重層構造の関係構築です。

 余談ですが、筆者にとってアルザス、特にコルマールは忘れられない思い出があります。40年以上にもわたりミシュラン3つ星に輝き続け、世界中の美食家たちを魅了してきた伝統あるレストラン、「オーベルジュ・ド・リル」(L’Auberge de L’ill)があるところです。アルザスのコルマールのそば、小さな村イルハーゼンに佇む旅籠屋(オーベルジュ)です。

 ミシュランの星の数はそれぞれ、「わざわざ旅行する価値がある(★★★)」「寄り道する価値がある(★★)」「興味深い(★)」を意味します。筆者もフランス留学中の30年以上前にこの3つ星レストランに「わざわざ」行きました。

 

北陸・飛騨・信州3つ星街道の旅

 ミシュランといえば、ここには「北陸・飛騨・信州3つ星街道の旅」(3つ星街道観光協議会が事務局)というものがあります。「緑」のミシュラン、観光のミシュランです。いろいろと調べますと、日本人がイメージする素晴らしいところとは少し違うところに3つ星がついていたりします。

 「緑のミシュラン」は意外と知られていないようです。レストランではなく、訪れるべき観光地(建築物、自然等を含む)の旅行ガイドで、「赤のミシュラン」と同様に、3つ星、2つ星、1つ星を付けています。

 「3つ星街道の旅」は、3つ星を獲得した金沢の兼六園、飛騨高山や信州の国宝松本城などに、世界遺産である白川郷を組み合わせて周遊させるというものです。

  サイトはこちら  http://www.mitsuboshi-kaidou.jp/

 このようにつながりを持ってストーリーを作るので、皆がワクワクして旅に出ます。点ではダメなのです。これらを上手く組み合わせて「協創」しているところに素晴らしさがあります。

 実際に見に行くと、いろいろと勉強になります。まず、「すったて鍋」というものを見つけました。これは豆乳鍋のような地元鍋で、飛騨牛が入っていて結構美味しかったです。地元の鍋を掘り起こす「ニッポン全国鍋大会」で優勝しています。

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すったて鍋

 

保全と利用

 では、これが先ほどのモン・サン・ミッシェルのオムレツに育つにはどうすればよいのか。持続可能な形で次世代に繋いでいくには、しみじみと繋いでいてもダメで、ビジネスとしてスケールしないといけません。

 ことがらにはSustainabilityとScalingの二つの「S」が必要です。

 1,600人の村に毎年180万人が訪れて、地元にいくらお金を落としているか。これが意外に小さいそうです。私はモン・サン・ミッシェルには相当なお金が落ちていると思います。この違いをどのように乗り越えるかが、観光への利用ではポイントとなります。

 もちろん保全と利用のバランスが必須です。また、食べ物だけでなく、お土産なども白川郷で中国産のお土産はいただけません。地元のいいものをどのように掘り起こし、地域活性化につなげていくかです。

 また、観光客の学びや発信のためにもWi-Fi環境などICTの活用による環境整備は重要です。白川村はKDDIと「白川村地域活性化を目的とした連携に関する協定」を結んでネット環境の整備を進めています。KDDIとしての共有価値の創造(CSV)に育ちそうです。

  http://shirakawa-go.org/yakuba_info/8580/

 

白川郷に見る日本の強みとは

白川郷で1枚の写真に強く惹かれました。

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「結」写真:白川村提供

 

 白川郷の合掌造は百数十戸しか残されていないのですが、何年かに1回葺き替え作業が必要です。一人ではとても無理で、昔から皆で葺き替え作業を行ってきました。

 茅を持って来る人、載せる人、差し込む人、調整する人がいて、これを「結(ゆい)」の仕組みと言います。これがずっと白川郷を守ってきました。

 私はこれで日本は大丈夫だと確信しました。この「結」という歴史と伝統は日本人社会のいろいろなところに同じような形で生きています。「結」がある国は今後活性化すると思います。

 大晦日のNHK「行く年くる年」にも最初に出てきた白川郷の明善寺にもお参りしました。「さるぼぼ」が飛騨地方のお守りです。飛騨弁で赤ちゃんのことを「ぼぼ」と言い、「さるぼぼ」は「猿の赤ん坊」といった意味で、家内安全・子宝・安産・家庭円満・良縁・成功・厄除け等のお守りです。「結」の中で生まれたお守りでしょう。

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明善寺にて「さるぼぼ」を手に

 

 結はSDGs(持続可能な開発目標)で言えば目標17番の「パートナーシップ」です。結の仕組みがないところにパートナーシップと言っても、パートナーシップの説明からスタートしなければなりません。

 モン・サン・ミッシェルに「結」があるかどうか分かりませんが、私はフランスと日本は相当似ていると思います。日本人には結があるので、あとはその良さに気づき、どう行動を起こすかです。

 

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笹谷オリジナルコラム:

笹谷秀光の「協創力が稼ぐ時代」<第2回>
サステナビリティ新時代と「協創力」(2)

2017-12-25 11:00

世界標準で見る:サステナビリティという価値観

 社会・環境の変化が激しい中で、企業はどう戦略を描けばいいでしょうか。

 私の専門ですが、「CSR」に関連します。Corporate Social Responsibility、「企業の社会的責任」と訳されていますが、responsibilityとは「 response+ability」、反応する能力、つまり、社会対応力のことです。2010年に決まった国際標準ISO26000(2010年発行)では、CSRを本業活用で実施するという明確な方向性が打ち出されています。今は「本業CSR」の時代です。

 最近は、さらに、米国ハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーター教授らが「共有価値の創造」という考えを提唱しました(2011年)。Creating Shared Valueで、「CSV」と略されています。

 これは社会課題も解決し、経済価値も生んでいく、この同時実現しようという魅力的な考えです。

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2016年12月、ポータークラブ(一橋大学)にて

 

サステナビリティの世界共通言語: SDGs

 さらに、ご存知と思いますが2015年に国連で決められた「持続可能な開発目標(SDGs)」がまさに最新の世界共通のサステナビリティの共通言語となります。企業価値を向上させるうえで必須の要素となりました。

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 これからの企業戦略は、
第一に、社会対応性を高める(ISO26000を活用した国際標準のCSR)、
第二に、「持続可能な開発目標(SDGs)」を2030年目標として取り込み、世界標準の目標体系に即応する、
第三に、共有価値創造CSVのアプローチを経営戦略として活用する、
第四に、その結果を発信する(GRI/IIRCなどの国際的報告ガイダンスを使用)、
・・・この4点が重要です。

 世界的なルール・メイキングも変わってきています。国家を縛る義務的なものは合意が難しく、むしろガイダンス的なものを決めて、デファクトスタンダード化していく流れです。日本はいち早くルール適応から、ルールを使いこなす、さらにはルール形成に参加する方向に行くべきです。

 例えば、英国は五輪レガシーとして「持続可能なイベント運営のためのマネジメントシステム規格」ISO20121を残しました。そして自らの五輪をその第一号にしたのです。2012年ロンドン五輪・パラリンピックは「持続可能性」を目指す大会として高い評価を得ました。

 自分でルールを作り、自分に適用し、レガシーとする。欧州はルール・メイキングがうまいのです。

 

ESGのうねり:2017年はESG「実装元年」

 持続可能性について、2017年が重要な節目の年となりました。

「ESG」が今後おさえておくべき重要な言葉です。環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字で、もともと投資家が投資先を選定する基準として重視すべき非財務情報を指す用語です。

 この3要素すべての側面で2015年には内外で重要な動きがありました。「E」ではパリ協定、「E」と「S」でSDGs、「G」ではコーポレートガバナンスコードです。

 そして、2017年7月には、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESGのインデックスを発表し、世界最大の保有資産約150兆円のうち国内株式30兆円の1兆円分をESG投資に振り向けると発表しました。

 いよいよ、投資家も本格的にESGに向けて動く「実装段階」に入り、「サステナビリティ新時代」の幕開けです。経営情報を世界的な指針を活用して発信できるかどうかが企業戦略の要諦となっていることも、今後深堀りしていきます。

 

企業の力を生かしてサステナブルな社会を創る
「発信型三方よし」を経営戦略に

 こうして、社会課題が複雑化している現下の経済社会の中で、企業と関係者が連携、協働して新たな価値を生み出す「協創力」がますます重要になりました。

 五輪・パラリンピックはもちろん、企業のCSR/CSV/SDGsの応用局面です。

 このように「横文字」のオンパレードです。

 しかし、考えてみると、日本には近江商人の「三方よし」(自分よし、相手よし、世間よし)という、考え方がルーツとしてあり、これが上記の横文字、特にCSVに近い概念として活用できます。ただ一点、大きな違いは、日本には「陰徳善事」という「人知れず社会に貢献しても、わかる人にはわかる」という心得があります。日本人らしい美徳ですが、グローバル時代には通用しません。

 そこで「三方よし」に「発信性」を加えるべきです。企業が的確に活動を発信して「明日のことを考えてやっている企業なら応援したい」といってもらえるよう、企業価値を上げるのです。

 このような「発信型三方よし」を理論化して、私は「協創力が稼ぐ時代」における新たな経営戦略として提唱しています。

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いいね!なるほど!またね!さすが!

 わかりやすく言えば、こういう活動には、まず「いいね」という共感が必要です。でも、なぜその活動を行っているのかを丁寧に説明すると「なるほど」と腑に落ちます。そんなにいいことなら「またね」となる。この「いいね、なるほど、またね」というサイクルを作っていけるかどうか。

 これは若い人たちの方が得意かもしれません。「いいね」マークなど私の若いころは無かったですから。「いいね!」は共感、「なるほど!」は理解、「またね!」は継続です。

 そうして、評価がついてきて「さすが!」となると万全ですね。

 この4つのサイクルの形成を目指すのです。

 このためには、企業は活動内容を的確に発信することが重要です。

 発信にもコツがあります。まず、物語性、ストーリーテリングの時代です。ストーリーになると「なるほど」感がでます。加えて、わかりやすさです。そして、それを戦略的に打ち出していく。

 これは、関係者の皆様、つまり「パブリック」にわかりやすく活動を伝える力ということもできます。単なる広報ではない「パブリックリレーションズ」が重要です。

 

クールジャパン、インバウンド、レガシーの「プラットフォーム」

 当面の五輪に向けてのキーワードはクールジャパン・インバウンド・レガシーの3つでしょう。この3点が相互に絡んでいることが重要です。

 五輪は世界に向けた企業の「発信型三方よし」の実践局面です。

 これだけ課題が複雑化してくると、一つのセクターだけで解決できることには限界があります。政策等で「協創」を促す活動の共通基盤が重要で、私は「プラットフォーム」といっています。企業はどう参加してビジネスにつなげていくか。役所対民間ではなく、関係者が相互に補完し合いながら、知恵を出していく必要があります。

「産官学」に「金労言」を加えた、関係者の総力結集です。「産官学金労言」と言われています。

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私がこのウェブ版で提起したいポイントは3つです。

第一に、みんなで活動する共通基盤、「プラットフォーム」に参加して協働する ------「協」。
第二に、WIN-WIN関係を作る、企業にもいい、社会にもいいという関係を構築する ------「創」。
第三に、これを学び、発信力をつける ------「力」です。

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