「義務」で安全衛生管理体制を整えても意味がない 中小企業の価値を高める労務の取り組みとは?

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企業のM&A(合併・買収)や上場を進める上で、避けて通れないのが「労務デューデリジェンス(労務DD)」です。これは、対象企業の労働条件や福利厚生、過去の労務トラブル、就業規則や協定の整備状況などを詳細に調査し、労務リスクを洗い出すプロセスです。
労務DDが不十分なまま取引が進めば、M&A後に未払い残業代の請求が発生したり、労働問題が表面化して訴訟に発展するなど、想定外のコストを抱えることになりかねません。上場を目指す場合も、健康診断の未実施、有給休暇の未取得、長時間労働の常態化といった点が審査対象となり、指摘を受けると計画自体が頓挫することもあります。つまり、「労務を整えているかどうか」が、企業の価値や信頼性に直結する時代になったのです。
中小企業の労務の取り組みは「信頼」と「選ばれる理由」になる
こうした動きは、大企業や上場企業だけの話ではありません。むしろ、中小企業こそ「労務を整えているかどうか」で、他社との違いを明確に打ち出せる時代になっています。
たとえば、同業他社が人材不足に悩んでいる中で、労働時間管理や有給休暇取得がしっかりしている会社は、「この会社なら安心して働ける」と求職者から選ばれやすくなります。また、地域の金融機関や取引先に対しても、「健康経営に取り組んでいる」「社内ルールが整っている」という情報は、企業としての信頼性を高める要素として評価されます。上場を目指す企業だけでなく、地場で長く信頼を積み重ねていく中小企業にとって、労務は「信用をつくる資産」なのです。
労務の整備は「投資」であり、「文化」になる
健康診断の受診促進や有給休暇の取得、残業時間の適正管理といった取り組みは、一見すると「内向き」の施策に見えるかもしれません。しかし実際は、これらの積み重ねが従業員の活力や定着率、ひいては企業全体の生産性向上に直結する「投資」となります。
こうした社内の仕組みを「見える化」し、対外的に発信する手段の一つが、健康経営優良法人認定などの制度です。「人を大切にする会社」という姿勢を示すことが、採用力やブランド力、そして金融・行政との関係づくりにもプラスに働きます。制度は手段ですが、日々の積み重ねが「文化」として定着したとき、組織は一段と強くなります。
「義務だから」ではなく、「文化として根付かせる」。安全衛生管理体制の本当の価値とは
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