ポイントは「自覚」と「待つ姿勢」 ―― 人材育成において重要なことはビジネスも教育現場も同じ
私事で恐縮ですが、筆者は30年にわたる企業勤務を経て、2022年より大学教員としての生活を始めました。ビジネスの世界で仕事を進めることと、教育・研究に専念することの違いに戸惑いつつも、変化に対応しようと試みてきた1年間だったといえます。その経験の中で、特に「人を育てる」ということの意義や方法について、ビジネスと教育の場での違いを痛感するとともに、その大切なポイントに気付けたように感じますので、今回はそれについて述べたいと思います。
ビジネスと教育の場における人材育成の違い
ビジネスと教育の世界での差異の1つ目は「目的の明確さ」です。ビジネスの世界では、個々の人材の育成についてある程度の方向性と短期的な目的は基本的に明確になっています。まず多くの場合は、現在担当している職務について、それに生かすべき知識やスキルを習得して能力を高め、高次の仕事にレベルアップしていくことを目指しているでしょう。その先の将来的なキャリアについては、なかなか明確になりにくいですが、本人も会社も漠然とした方向性を、たとえばマネジメント力を上げ管理職を目指す、専門性を深めていく、といったようなレベルでは考えていると思います。
それに対して、教育の場における学生は、まだまだ未成熟で自己理解も不足しており、自分が進む方向性を見いだせていない場合がほとんどです。もちろん、将来の職業を決め、それに向けて勉強などにまい進している学生も多くいます。ただ大学における教育は、単に希望の職業につけることだけが目的ではなく、ディプロマ・ポリシーに掲げるさまざまな知識・能力の修得や、社会に出るにあたっての人間的な成長も求められます。また、短期的には単位の取得が大切ですが、単位取得という結果だけでははかれるものではなく、どう学ぶのか? 学びを通じて何を得たのか? という点が大切であり、それについては個人差も大きい現実があります。
たとえば、筆者は経営学の担当であり、経営学概論などの授業も担当しますが、そこに参加する学生の目的や動機はさまざまです。民間企業就職を考えており企業の具体的なことを知りたい、教員や公務員を目指しているので社会理解を深めたい、ただ単に単位がほしい……。そういった状況の学生について、個々の授業でも明確な目的を単純には設定しにくいと感じています。
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