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2002年創業、「世界中の誰もが、自然に健康になれる社会を創る」をミッションに、IT×専門家ネットワークで、「専門家がもっと身近にいて健康をサポートするシステムの構築」を目指すヘルステック企業、株式会社リンクアンドコミュニケーション。現在の主力サービスは、写真を撮るだけで食事のカロリーや栄養などを分析できるAI健康アプリ「カロママプラス」。導入企業は6,000社を超え、健康経営推進の一翼を担っている。トップの渡辺敏成さんにお話をうかがった。
文◎石田 ゆう子
写真◎田口 哲也
編集部 起業を志した大学時代のお話から聞かせてください。
渡辺 当時、私が在籍していた一橋大学商学部経営学科は、いろいろなビジネスの知見を持った先生たちが招へいされて、ビジネススクール的な授業を始めていた頃でした。そんな中、ゼミの担当であった金子教授から、「ビジネスをするなら起業して経営者となるのがいちばんおもしろい」とうかがって、私も起業したいな、と。ただ、当時の日本は、ベンチャー企業へのサポート体制が、今ほど十分ではなかったので、まずは就職して経験を積もうと味の素株式会社に入社しました。食品メーカーであれば、商品開発、生産、販売、マーケティングも、ビジネスの全てを見ることができる。また、味の素は多角化をしていたので、ベンチャー的な事業経験もできるだろうと考えてのことでした。
編集部 ところが、配属先はSEだったんですね。
渡辺 そうなんですよ。でも、結果的にはよかった。基幹システムの運用から、会計システムのプログラミング、マーケティング意思決定支援システムの企画などに携わり、経営の全体像を知ることができましたから。その後、大阪で営業を務め、本社で冷凍食品の商品開発、マーケティングを担当し、プロマネとして一通り実績を残したところで、いよいよ起業しよう、と。仕事をしながら、どの分野で起業するか、自分に経営ができるのかなど、ベンチャーキャピタルの先輩に相談したり、ご紹介いただいた多くの起業家の方々に話を聞かせてもらいながら準備を進めていきました。
健康、医療分野の課題を「仕組み」で改善すべく起業を決意
編集部 起業する分野はどう決めたのですか?
渡辺 消費者の満足度が低い業界に商機があるだろうと探している中で、医療、健康、ヘルスケア領域のエンドユーザーが、あまり満足していないことがわかってきました。
患者や未病の人は、病気への不安があるが、専門家ではないので情報がない。それで医療に対していろいろなサービスを求めるけれども、求めるだけのものが返ってきていないとの不満を抱いていました。一方で、医療を提供している医者や看護師は、非常に一生懸命仕事に取り組み、ホスピタリティー意識も高い。このギャップは、医療全体の仕組みに影響するところが大きかった。ならば、そこを解決する仕組みを提供できれば満足度は改善できる。これは非常にチャレンジしがいのある分野だと思いました。
ただ、医療のことは全く知らなかったので、株式会社ケアネットという医療ベンチャーに、「起業したいので3年間だけお世話になりたい」との話をして、了承を得た上で入社させていただきました。ケアネットは、医療の課題を仕組みで解決していくという会社で、私は、衛星放送の医療事業者向けの会員制チャンネルという新規事業の責任者を任されました。
番組制作には、年間5、6億円のコストがかかります。会員制チャンネルなので、会費と製薬会社などのスポンサーからの広告料が収入源。視聴料収入だけでいうと、会員1万人でペイする計算でした。医者自体、全国に25万人しかいないので、会員の6割を医者で、残りを看護師や薬剤師で構成すればいいのではないか。そんなふうにターゲットや番組を考えて、1万人の会員を獲得。収益化を実現できたことは、起業に向けての自信にもなりました。ちなみに、全国の医者25万人のうち10万人が開業医で、この開業医こそ、なかなか自分で勉強する時間が取れないため、知識や情報に対するニーズがあることもわかりました。
編集部 ここで開業医との接点があったことが、起業の際のビジネスにもつながった、と。
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