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2015年設立、設置型ベビーケアルーム「mamaro™(ママロ)」「mamaro lite」や、授乳室とおむつ交換台の検索アプリ「Baby map」などを手掛けるTrim株式会社。「mamaro」は、コンパクトで低コストな完全個室型のベビーケアルームで、2017年の発売からおよそ4年で導入実績約300台を突破。2021年に販売開始した新製品「mamaro 2」は長崎県ハウステンボスに6台導入されるなど、子育てインフラの一翼を担っている。代表取締役社長の長谷川裕介さんにお話をうかがった。
写真◎田口 哲也
文◎石田 ゆう子
編集部 まず起業された経緯を教えてください。
長谷川 コピーライターになりたくて、大学在学中から広告制作会社で修業という形で仕事をしていました。卒業後は、広告代理店に入社。コピーライター、クリエイティブディレクター、プランナーを経験し、およそ10年間勤めました。
その間に母をがんで亡くしたのですが、母の死後、家族で集まったとき、姉は、「あのとき、母と海外旅行に行ったね」「ご飯食べに行ったね」などと、親孝行の思い出を語るのに、自分は母のために何もできていなかったことに気付いた。もう自分は親孝行ができないんだと、ふいに焦りを感じました。母はよく「徳を積みなさい」というような人でしたから、自分は、人のためになる仕事ができているだろうか、と自問自答。
そんなときに出会ったのが、医療系ベンチャーの社長でした。その方も、父親を高校時代にがんで亡くされており、若くして思いを持って起業されていた。感化されましたね。「うちで新規事業をやってほしい」とお誘いいただいて入社。現在も手掛けている授乳室とおむつ交換台の検索アプリ「Baby map」の前身となるアプリを事業化しました。
ところが、会社が上場を目指す中で、まだ利益を出せる段階になかったこのアプリは続けることが困難になってしまった。しかし、これをなくしたら、世のお母さんたちが困ってしまう。私は社長に直談判をし、アプリ事業を買い取らせていただく形で起業しました。
お母さんたちの「善意のバトン」を守るために起業
編集部 それほど、このアプリに価値を感じているんですね。
長谷川 ユーザーの方が、本当にいろいろな情報を投稿してくださるんですよ。授乳室の有無だけではなく、「ここは改装中」「ここは設備がいい」などなど。インセンティブを払うわけでもないのになぜだろうとヒアリングしたところ、「私も困った経験をした。次のお母さんが困らないようにしたい」とおっしゃる。これは善意のバトンだ。なくしてはいけない。母にできなかった親孝行の代わりに、この事業を継続したいと思いました。
編集部 そこから、ベビーケアルームというハードの領域を手掛けることになった理由は?
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