会社・上司は何もしてくれない……客からの暴言よりショック カスハラから従業員の心身を守るには

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飲食業や小売業など、接客の最前線に立つ従業員は、理不尽なクレームといったカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)にさらされる機会があります。人員不足で苦心する現場の貴重な従業員が健康に働けるよう企業として何ができるのか、メンタルヘルスの視点から解説します。
悪質なカスハラは犯罪に
みなさんは、自社におけるカスハラの実態をどの程度把握しているでしょうか。多かれ少なかれ、理不尽なクレームや横暴な態度を取られることはあろうかと思いますが、中には犯罪に分類されるようなものも存在します。時折ニュースにもなる、顧客による店舗スタッフへの土下座の強要が典型例で、これは強要罪等に該当するといわれています。また、侮辱や暴言は侮辱罪等、居座りは不退去罪等に問われる可能性もあります。
このように度を越したカスハラが、実際に犯罪として刑法等で裁かれた事例も数多く報告されています。カスハラ対策は、犯罪から従業員を守ることにもつながるのです。いわゆるパワハラ防止法にひも付くパワハラ指針にも、望ましい対応としてカスハラ予防を位置付けています。また、東京都、三重県桑名市、北海道などの自治体もカスハラ防止に関する条例を制定し、東京都では「講ずべき措置」としてカスハラ対策を企業に義務付けています。
カスハラとは
まずは、カスハラの定義を整理しましょう。厚労省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、カスハラについて「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」としています。たとえば、なんらミスをしていないのに「表情が気に食わない」という理由で謝罪を要求することは妥当性を欠きますし、従業員がミスをした場合、怒鳴り声で土下座を要求してくることは、「謝罪」という行為を実現させるための手段・態様が悪質です。そのような言動を受けて、従業員が恐怖におびえ仕事が手につかなくなれば、就業環境が害されたとみなされるでしょう。
つまり、カスハラの要件は次の3つがそろうこととなります。
(1)要求の内容が妥当性を欠く場合
(2)要求を実現するための手段や態様が社会通念上不相当である場合
(3)それによって労働者の就業環境が害される場合
さらに、要求の内容の妥当性にかかわらず、以下のような行為は「社会通念上不相当」とされ、法的に問題となる場合があります。
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