総務の引き出し(メンタルヘルス)

目指すゴールは「発生件数ゼロ」ではない! コンプラ教育にとどまらない、効果的なパワハラ対策

さんぎょうい株式会社 メンタルヘルス・ソリューション事業室 室長 佐倉 健史
最終更新日:
2023年08月25日
202308d_00

多くの企業において職場のメンタルヘルス対策を長年支援してきた筆者が押さえるべきポイントについて解説していく本連載。今回は、実効性をキーワードにパワハラ対策の話題をお届けします。

パワハラも防止措置の法制化が相談増加の一因

2019年に労働施策総合推進法が改正され、2020年6月1日から(中小企業の雇用管理上の措置義務は2022年4月から)職場におけるパワーハラスメント(以下、パワハラ)について事業主に防止措置を講じることが義務付けられるようになりました。また、それに先行して男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に基づいてセクハラ、マタハラ・パタハラ、ケアハラの対策も義務付けられており、現時点で全ての企業がパワハラを含むこれらハラスメントについて法に基づく対応を求められているという状況です。

行政に寄せられた、民事上の個別労働紛争の相談件数と労働施策総合推進法に基づく相談件数のうち、いじめ・パワハラに関する件数は増加しており、2022年は合わせて12万件以上に及びます。パワハラ防止措置が法制化されたことも相談の増加の一つの要因と考えられます。これまでよりも労働者がパワハラをはじめとした問題について社内外に声を上げることが今後も増えていくと筆者は考えています。

読者のみなさんの職場ではどのように対策がされているでしょうか。企業としての責務、講ずべき措置、望ましい取り組みについての詳しい情報は、厚生労働省の「あかるい職場応援団」のパンフレット(左上画像)にて説明されています。それ以外にも、ハラスメントの法制度について、総務担当者が踏まえておくべき事柄がわかりやすくまとめられています。

ハラスメント対策のゴールはどこなのか?

ハラスメント対策のゴールは、社内のハラスメントがゼロであることでしょうか? もちろん、ゼロは目指したいですが、現実的ではありません。なぜなら、条件さえ整えば人間は常にハラスメントを起こす可能性を持つ存在だからです。 ハラスメントの相談窓口における機能にどこまで幅を持たせるかは企業によりますが、早期に問題をキャッチし、悪化予防にも対応できるよう窓口の相談体制を整備することが望ましいです。

具体的なイメージとしては、「ハラスメントをしそうになって自分でも気になっているんだけどどうしたらいいだろうか」「今日、ある部下をメンバーの前で、つい大声でしっせきしてしまった。パワハラに該当するかもしれない。その部下に謝るなどした方がいいのだろうけど、どのようにすればいいかわからない」といった相談ができる場所であると社員に認識してもらい、それら相談にしんに向き合い一緒に考え、必要に応じて各分野の専門家の知恵を借りられるような窓口担当者の育成と体制をつくるのが理想的です。

続きは「月刊総務プレミアム」をご契約の会員様のみお読みいただけます。

  • ・付加価値の高い有料記事が読み放題
  • ・当メディア主催の総務実務の勉強会や交流会などのイベントにご優待
  • ・「月刊総務デジタルマガジン」で本誌「月刊総務」も読み放題
  • ・本誌「月刊総務」も毎月1冊、ご登録いただいたご住所にお届け
  • ・ノウハウ習得・スキルアップが可能なeラーニングコンテンツも割引価格でご利用可能に

※掲載されている情報は記事公開時点のものです。最新の情報と異なる場合があります。

著者プロフィール

佐倉プロフィール写真

さんぎょうい株式会社 メンタルヘルス・ソリューション事業室 室長
佐倉 健史

臨床心理士・公認心理師・キャリアコンサルタント・メンタルヘルス法務主任者。精神科クリニック併設型外部EAP機関にて13年在籍後、現職。メンタルヘルス施策の立案、体制構築、ストレスチェックの結果活用のコンサルティング、社内でのカウンセリング、社内教育研修の企画・講師などを通し、多くの企業のメンタルヘルス課題解決の支援経験を持つ。

総務の引き出し(メンタルヘルス)」の記事

2024年11月20日
「メンタルクリニックならじっくり話を聞いてくれる」は誤解! 失敗しないクリニック活用法
2024年10月18日
増え続ける「精神障がいによる労災認定」 企業が知っておくべきリスクと予防法
2024年09月19日
上司が「ブレーキ」になることで再休業を防ぐ 事例から学ぶ職場復帰後の対応ポイント
2024年08月29日
職場復帰支援の成功は「3つの準備」で決まる! 事例から学ぶ休業中の対応ポイント
2024年07月23日
生産性向上に大きくかかわる「ワークエンゲージメント」 高めるカギは経営層と従業員のズレの解消
2024年06月19日
職場でトラブルを起こす従業員、もしかして発達障がい? 「支援疲れ」にならないための向き合い方
2024年05月22日
メンタルヘルス不調になる前の備えこそ重要 従業員へのセルフケア教育を成功させる3つのポイント
2024年04月22日
社員の問題行動、原因は性格? それともメンタルヘルス不調? その判断方法と必要な対応
2024年03月29日
キャリアへの不安が無自覚なストレスに 従業員へのキャリア支援がメンタルヘルス対策にもなる理由
2024年02月28日
従業員のメンタルヘルス問題は訴訟に発展することも 法的リスクを避けるための3大原則とは
2024年01月30日
いつ、何を相談したらいいの? ……なんてためらっていたら損! 産業医・保健師の上手な活用方法
2023年12月26日
脱・やりっ放し! 義務化から9年目、ストレスチェックの結果を職場環境の改善につなげるコツ
2023年11月28日
雇用して生産性向上、離職率低減が実現した例も ―― 精神障がい者を定着、戦力化させるノウハウ
2023年10月25日
事故、閉鎖、吸収合併 …… 組織の危機的状況でストレスを抱えた従業員に総務はどう対応すべき?
2023年09月27日
メンタルヘルス不調者への対応にしんどさを感じたら 総務担当者の「感情労働」セルフケアのススメ
2023年08月25日
目指すゴールは「発生件数ゼロ」ではない! コンプラ教育にとどまらない、効果的なパワハラ対策
2023年07月24日
再発予防は初日の受け入れ姿勢から始まる うつ病等による休業からの職場復帰、成功と失敗の分岐点
2023年06月21日
メンタル疾患による休業からの復帰「在宅勤務なら……」は認めるべき? 職場復帰支援成功のコツ
2023年05月19日
効果は「総務」への相談件数でわかる! メンタル不調者を減らす「ラインケア教育」の極意
2023年04月20日
厚労省の指針から見る 総務部門が押さえておくべきメンタルヘルス対策立案の基礎

関連記事

  • 【AI×交通安全運動】111社が共同で事故リスク削減に取り組んだ2か月間……その結果は? PR
  • オフィスの課題解決はデータ収集から 社員の位置情報を自動で管理しフリーアドレスを効率化 PR
  • 大切なのは「自社ならでは」のオフィスづくり 社員の「心」を解析すると幸せな働き方が見えてくる PR

特別企画、サービス