総務の引き出し(メンタルヘルス)

効果は「総務」への相談件数でわかる! メンタル不調者を減らす「ラインケア教育」の極意

さんぎょうい株式会社 メンタルヘルス・ソリューション事業室 室長 佐倉 健史
最終更新日:
2023年05月19日
202305b_00

今後ますます必要となる職場のメンタルヘルス対策。本連載では、多くの企業において職場のメンタルヘルス対策を長年支援してきた筆者が12回にわたって押さえるべきポイントを解説していく予定です。今回は、メンタルヘルス対策の中でも主要な役割を担う管理職の教育としてのラインケア研修について、その極意をお伝えします。

メンタルヘルス不調のよくある風景

「また突然うつで休職か……」という、総務担当者の苦悩に満ちた嘆き。ある日突然、ノーマークだった社員から長期療養の診断書が提出されるという傾向は、多くの会社に見られることです。せめてもっと早く相談してくれたら何かできたかもしれないのにと、悔しい思いをしている総務担当者もいらっしゃることでしょう。メンタルヘルス不調の早期発見・早期対応をテーマにしたラインケア教育はこうした場面で一定の効果を上げます。また、一度に多くの管理職に教育ができる集合型の研修は効率が良い方法です。

教育研修の目的とゴール設定の必要性

先に挙げたような突然の休職を、現場で早期発見・早期対応してもらうことにより、もっと手前で防ぎたい。これはラインケア研修の主要な目的になります。このように、課題に対して適した解決法としてメンタルヘルス対策を機能させるために、まずは課題をよく整理しましょう。

課題の例

  1. (1)ストレスチェックの結果が悪い
    • 高ストレス者割合が会社全体で20%を超える高さである
    • ストレス反応の結果が全体的に全国平均よりも悪い
    • 総合健康リスクが会社全体で120を超えている
  2. (2)メンタルヘルス不調による長期欠勤者が複数の部署から出ている
  3. (3)メンタルヘルス不調が原因と思われる離職者が複数の部署から出ている

これらのような課題がある場合に早期発見・早期対応を目的としたラインケア研修は効果を上げやすいです。

一方で、特定の部署や役職のみで繰り返し不調者や退職者が出るような場合、その部署や役職に特有の課題があるため全社画一的な研修はそれほど効果を上げない場合があります。そのような場合は、当該部署のメンバーのヒアリングや管理職による現状分析を踏まえて、管理職が組織を改善できるように会社として管理職を支援するといった対策が功を奏することがあります。課題に対して研修という方法が適切かどうか、まずはご検討ください。

どのような課題を解決するためにどのような目的で教育研修を実施するかが定まったら、次はゴール設定です。早期発見・早期対応でいえば、次のような3種類のゴール設定が考えられます。

  1. (1) 管理職が部下の不調やそのサインに気付き、対応について管理職から総務に相談できるようになること
  2. (2) 部下の不調やそのサインに気付いたら声をかけて傾聴を意識した面談を行い、不調の背景や健康状態を確認した上で総務に橋渡しできるようになること
  3. (3) (2)のような面談に加えて産業医面談や医療機関受診の勧奨を管理職から行い、その調整役として総務に橋渡ししたり、現状を総務と共有したりできるようになること

ゴール設定をどこに置くかによって、教育研修の講師を誰が務めるのか、研修の構成や内容をどうするのか、必要な時間をどれくらいに設定するのか、対面やオンラインの形式(ミーティング、ウェビナー等ライブ配信、オンデマンド配信)をどうするのかなどが決まってきます。

ゴール設定に応じた企画の例

  1. ゴール設定:(1)管理職にはとにかく気付いて総務に相談してほしい
    講師:総務担当者
    形式:オンライン(ミーティング)30~60分程度
    内容:自社の現状・管理職に求められる役割・不調のサイン・総務担当者の役割
  2. ゴール設定:(2)面談までしっかりしてほしい
    講師:外部の専門家
    形式:動画配信30分程度
    内容:管理職に求められる役割・不調のサイン・傾聴の方法とコツ・総務担当者の役割
  3. ゴール設定:(3)自分で専門家への相談を促してほしい
    講師:外部の専門家
    形式:対面120~180分程度
    内容:管理職に求められる役割・不調のサイン・傾聴の方法とコツ・専門職への橋渡し法・総務担当者の役割・グループディスカッション・ロールプレイング

経営層からのメッセージがモチベーションとなる

企業として本気でメンタルヘルス不調者を減らしたい、精神的な健康度を上げてモチベーションや生産性向上を狙いたいということであれば、経営層から管理職に対して、会社の方針としてメンタルヘルス対策に力を入れていること、その一環としての重要な研修として開催することについてメッセージを発信してもらうことが有効です。

経営層の協力が得られないまでも、ラインケア研修の開催時はできるだけ上位職からその必要性や位置付け、管理職への期待について一言話していただくなり、メッセージを寄せていただくなりすると参加者のモチベーションも上がりやすいです。加えて、自社の長期欠勤者数や高ストレス者率の推移を示すと参加者はより身近に感じられるでしょう。

続きは「月刊総務プレミアム」をご契約の会員様のみお読みいただけます。

  • ・付加価値の高い有料記事が読み放題
  • ・当メディア主催の総務実務の勉強会や交流会などのイベントにご優待
  • ・「月刊総務デジタルマガジン」で本誌「月刊総務」も読み放題
  • ・本誌「月刊総務」も毎月1冊、ご登録いただいたご住所にお届け
  • ・ノウハウ習得・スキルアップが可能なeラーニングコンテンツも割引価格でご利用可能に

※掲載されている情報は記事公開時点のものです。最新の情報と異なる場合があります。

著者プロフィール

佐倉プロフィール写真

さんぎょうい株式会社 メンタルヘルス・ソリューション事業室 室長
佐倉 健史

臨床心理士・公認心理師・キャリアコンサルタント・メンタルヘルス法務主任者。精神科クリニック併設型外部EAP機関にて13年在籍後、現職。メンタルヘルス施策の立案、体制構築、ストレスチェックの結果活用のコンサルティング、社内でのカウンセリング、社内教育研修の企画・講師などを通し、多くの企業のメンタルヘルス課題解決の支援経験を持つ。

総務の引き出し(メンタルヘルス)」の記事

2024年03月29日
キャリアへの不安が無自覚なストレスに 従業員へのキャリア支援がメンタルヘルス対策にもなる理由
2024年02月28日
従業員のメンタルヘルス問題は訴訟に発展することも 法的リスクを避けるための3大原則とは
2024年01月30日
いつ、何を相談したらいいの? ……なんてためらっていたら損! 産業医・保健師の上手な活用方法
2023年12月26日
脱・やりっ放し! 義務化から9年目、ストレスチェックの結果を職場環境の改善につなげるコツ
2023年11月28日
雇用して生産性向上、離職率低減が実現した例も ―― 精神障がい者を定着、戦力化させるノウハウ
2023年10月25日
事故、閉鎖、吸収合併 …… 組織の危機的状況でストレスを抱えた従業員に総務はどう対応すべき?
2023年09月27日
メンタルヘルス不調者への対応にしんどさを感じたら 総務担当者の「感情労働」セルフケアのススメ
2023年08月25日
目指すゴールは「発生件数ゼロ」ではない! コンプラ教育にとどまらない、効果的なパワハラ対策
2023年07月24日
再発予防は初日の受け入れ姿勢から始まる うつ病等による休業からの職場復帰、成功と失敗の分岐点
2023年06月21日
メンタル疾患による休業からの復帰「在宅勤務なら……」は認めるべき? 職場復帰支援成功のコツ
2023年05月19日
効果は「総務」への相談件数でわかる! メンタル不調者を減らす「ラインケア教育」の極意
2023年04月20日
厚労省の指針から見る 総務部門が押さえておくべきメンタルヘルス対策立案の基礎

関連記事

  • 「働きがいのある会社」トップ企業のハイブリッドワークの形 戦略総務を実現できるデバイスとは? PR
  • コスト削減だけじゃない! 働き方が変わり、コミュニケーションも生まれる「照明」のすごい効果 PR
  • 災害への備えは平時から。企業の防災担当者を強力にサポートする東京都のサービスとは PR

特別企画、サービス