総務の引き出し(労働法)

営業社員に「募集資材のコピー代を払わせる」は有効? 業務関連費を労働者に負担させる際の注意点

弁護士 安西 愈
最終更新日:
2023年11月15日
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労働者に企業の業務関連費用を負担させることができるのだろうか?  今回は業務関連費用の取り扱いについて判例を基に考える。

企業の業務遂行に関する費用を労働者に負担させられるか

企業は労働者の労働力の利用によって企業活動を営んでおり、それによって利益を上げているのであるから、その必要経費は当然企業が負担すべきで、営業社員が募集営業に用いる物品等の費用や募集資材のコピー用紙代、トナー代といった費用についても企業が負担し、労働者が負担する理由はないといった考え方もある。このような点を巡って、訴訟となった事件がある。それについて裁判所は、次のように判決をした。

「原告は、労働契約上、労働者が生み出す成果を使用者に帰属させつつ、その対価として労働者に賃金請求権を肯定する一般雇用原則が存在することを根拠に、使用者の指揮命令下における事業遂行のために生じた費用は使用者が負担すべきであると主張する。しかしながら、上記原則をもって使用者と労働者の個別合意により事業遂行上の費用の一部を労働者の負担とすることが直ちに排斥されるとまではいえず、むしろ労働基準法第89条第5号のように、就業規則によって労働者に費用負担をさせる場合があることを定めた条項が存在することからすれば、使用者と労働者との間の合意によりこれを定めることも許容されているというべきである」

令5.1.26 京都地裁判決 住友生命保険(費用負担)事件 労判1282号19頁

また、「原告は、報償責任原則及び危険責任原則からすれば、特段の事情がない限り、業務遂行費用は使用者が負担すべきであると主張する。しかしながら、上記と同様に、これらの原則をもって使用者と労働者の個別合意により事業遂行上の費用の一部を労働者の負担とすることが直ちに排斥されるとまではいえないと解される」と判決を下し、業務関連費用の労使合意による負担を肯定している。

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著者プロフィール

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弁護士
安西 愈

労基署、労働省勤務を経て、1971年より弁護士(第一東京弁護士会)。第一東京弁護士会副会長、最高裁司法研修所教官、日弁連研修委員長、東京最賃審議会会長等歴任。著書に、『採用から退職までの法律知識』(第14版)ほか多数。

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