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最近では最も安全であるはずの銀行の貸金庫からその業務の担当の従業員自身が盗取したり、部下を指導すべき上司が、人権を害するようなパワーハラスメントを行うなど、懲戒に該当するような不適切な行為が多く、企業としても適切な懲戒処分をもって会社や業務の秩序を適正化する必要に迫られている。今回は懲戒処分について検討する。
懲戒処分は直接の企業秩序違反に限定して科せられるものではない
懲戒処分とは「企業秩序の違反に対し、使用者によって科せられる一種の制裁罰」(昭38.6.21 最高裁(二小)判決)とされている。
それは、「そもそも、企業秩序は、企業の在立と事業の円滑な運営の維持のために必要不可欠なものであり、企業は、この企業秩序を維持確保するため、これに必要な諸事項を規則をもって一般的に定め、あるいは具体的に労働者に指示、命令することができ、また、企業秩序に違反する行為があった場合には、その違反行為の内容、態様、程度等を明らかにして、乱された企業秩序回復に必要な業務上の指示、命令を発し、又は違反者に対し制裁として懲戒処分を行うため、事実関係の調査をすることができることは当然のことといわなければならない」(昭52.12.13 最高裁(三小)判決)からである。
しかしながら、直接の企業秩序違反のみに限定されるものではなく、「社会一般から不名誉な行為として非難されるような従業員の行為により会社の名誉、信用、その他の社会的評価を著しく毀損したと客観的に認められる場合に、制裁として、当該企業から排除しうる」ことも認められている(昭49.3.15 最高裁(二小)判決、ほか)。
懲戒処分の法的根拠は「契約説」と「固有権説」のいずれかもしくは両方
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