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私傷病休職に関しては、私傷病期間満了時における復職の可否、あるいは復職を認めないことによる自動退職・解雇に関する紛争が多く、この点に関する裁判例や論稿も多い。また、私傷病休職の開始に関する紛争も少なくない。しかしながら、私傷病休職期間中の使用者と労働者との法律関係については上記2つの場面に比べて紛争になることが少ない。しかしながら、今回取り上げる私傷病休職と育児・介護休業との関係など、判断に迷うものも少なくない。そこで、本稿では、私傷病休職期間中の使用者と労働者との法律関係について整理する。
私傷病休職期間にかかわる法律
私傷病休職期間中の労働者は、労務提供義務を免除されている。しかし、労務提供に直接関係しない義務については、休職期間中も影響を受けることはない。たとえば、労働者が使用者に対して負う付随義務の一種である秘密保持義務や競業避止義務は、休職前と変わらず存続している。また、就業規則における服務規律も、就労関係に関するものを除き、適用される(たとえば、調査協力義務や信用保持義務など。休職者に対する懲戒処分の調査については後述する)。
また、労務提供義務に関する権利(賃金請求権等)以外の権利については、休職に入る前と同様の権利を有しており、保護が与えられる(たとえば、使用者の労働基準法違反行為を労基署長に申告したことを理由とする不利益取り扱いの禁止など)。社宅や福利厚生施設の利用関係も、合理的な理由に基づく就業規則などにおける別段の定めがない限り、特段影響を受けないものと解されている。
一方、私傷病休職期間中の労働者に対して、賃金を支給するか否か、支給するとしてその額をどの程度とするかなどは、各企業が自由に定めることができる。なお、業務外の負傷または傷病による療養のため労務に服することができない場合、休業4日目から1年6か月を限度に、標準報酬日額の3分の2の傷病手当金が支給されるが(健康保険法第99条第1項)、労務行政研究所の2024年度調査によれば、企業が傷病手当金以外の賃金保障をしている割合は、欠勤期間中が約48%、休職期間中が約40%となっている。また、休職期間中を勤続年数に算入するか否かも就業規則や労働協約による定めによる。
休職者は外出が許されないのか?
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