総務の引き出し(労働法)

変形労働時間制における年休の取り扱い 1日11時間の労働日に取得をしたら実労働時間は何時間?

弁護士 安西 愈
最終更新日:
2025年07月03日
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変形労働時間制とは、従来から法律上の労働時間制度として認められてきた一定期間の労働時間の平均をもって「1週間当たり40時間を超えない」という定めによる「平均労働時間制」のことである。ただし、フレックスタイム制と異なり、日々の始業・終業時刻を事前に特定し、勤務表に沿って定めた一定期間の勤務時間に従って勤務する。つまり、勤務表で1日8時間を超えて労働する日を定めれば、ほかの日の労働時間を短縮し、平均して法定労働時間の中で就労するという、業務の繁閑に対応する長・短時間のある勤務制度である。

変形労働時間制の実施要件と種類

当該事業場の過半数で組織する労働組合、それがない場合には、過半数代表者との書面協定により、または、就業規則その他これに準ずるものにより一定期間の勤務表を定めることが要件である。

変形労働時間制は3種類が認められており、その1つ目が1か月単位の変形労働時間制であり、1か月を平均し1週間当たり40時間を超えない範囲で、就業規則で各日の労働時間を定める労働時間制である。

2つ目は、1年単位の変形労働時間制で、

労使協定において、

    1. 対象期間を1か月を超え1年以内の期間とし、
    2. 対象期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において、
    3. 1日10時間、1週52時間を限度とし、
    4. 対象期間における労働日および当該労働日ごとの労働時間、
    5. および労使協定期間を定めること

を要件として、変形労働時間制が認められるものである。

3つ目は、30人未満の小規模サービス業の特例的非定型変形労働時間制である。

変形労働時間制は、長・短の労働時間制が恣意しい的に行われないようにきちんと勤務表を定めて実施することが要件だが、「就業規則においてできる限り具体的に特定すべきものであるが、業務の実態から月ごとに勤務割を作成する必要がある場合には、就業規則において各直勤務の始業終業時刻、各直勤務の組み合わせの考え方、勤務割の作成手続及びその周知方法等を定めておき、それにしたがって各日ごとの勤務割は、変形期間の開始前までに具体的に特定することで足りる」(昭63.3.14 基発150号)とされている。

1日6時間の日も11時間の日も年休は「1日」

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プロフィール

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弁護士
安西 愈

労基署、労働省勤務を経て、1971年より弁護士(第一東京弁護士会)。第一東京弁護士会副会長、最高裁司法研修所教官、日弁連研修委員長、東京最賃審議会会長等歴任。著書に、『採用から退職までの法律知識』(第14版)ほか多数。

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