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今回は、フリーランスに対する安全衛生対策の推進を中心に、労働安全衛生法(以下、「安衛法」という)改正を取り上げる。2025年5月14日に安衛法が改正公布されたが、その改正項目は多岐にわたる上、一部の企業のみに影響のある改正も少なくない。そこで、本稿では、企業の労務に影響の大きいものや多くの企業に影響が出る改正を中心に解説する。
フリーランス等に対する安全衛生対策の推進
1. 改正の概要
これまでの安衛法の対象は労働者に限られ、一人親方等の個人事業者は労働者と同じ場所で働いていても適用対象外とされてきた。しかし、建設アスベスト(大阪)訴訟の最高裁判決(2021年5月17日判決)において、安衛法の一部の規定について、労働者だけでなく、同じ場所で働く労働者以外の者も保護する趣旨であるとの判断がなされた。これを受け、国は、労働者と同じ場所で就業する個人事業者等の災害の防止をはかるため、有害な作業に関する安衛法第22条に基づく省令改正(2023年4月施行)や危険箇所等での作業に関する同法第20条等に基づく省令改正(2025年4月施行)を行い、事業者が個人事業者等に対して講ずべき保護措置を義務化したほか、「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」(2024年5月)を策定してきたが、今回の安衛法改正により、既存の労働災害の防止対策に個人事業者等を盛り込んだ。
2. 既存の労働災害防止対策への個人事業者等の取り込み
今回の改正により、既存の労働災害防止対策の保護対象や義務の主体として、個人事業者(事業を行う者で、労働者を使用しないもの)が追加された。また、中小企業の事業主や役員についても、労働者や個人事業者と類似の作業を行う実態にあることを踏まえ、保護対象や義務の主体として位置付けた。
また、建設現場などで多い、複数の事業者が同一の場所で作業を行う事業場(混在作業)による労働災害防止をはかる際には、混在作業に従事する作業者の属性にかかわらず、措置の対象とする必要があるとし、労働者や事業を行う者(個人事業者や法人の代表者、役員)など、当該作業に従事する全ての作業者をまとめて「作業従事者」と定義し、保護対象や義務の主体として位置付けた(以下、個人事業者および中小企業の事業主や役員をあわせて「個人事業者等」という)(2026年4月1日施行)。
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