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業務災害(業務上の事由による負傷、疾病、障がい、死亡)には業務上の負荷により脳・心臓疾患を発症したり、精神疾患を発症したりした場合も含まれることから、業務災害(労災事故)は全ての企業において起こり得る。そして、業務災害について企業に安全配慮義務違反が認められる場合には、被災労働者に対する損害賠償責任を負う。他方で、業務災害について労働者にも過失(落ち度)が認められる場合や、労働者に元々あった素因が業務災害の一因になっている場合もある。また、業務災害が発生した場合には、労働者災害補償保険法により各種労災保険給付が行われる。そこで、本稿では、業務災害(労災事故)で労働者にも過失や素因があり、かつ、すでに労災保険給付を受けている場合における、当該労災保険給付の充当方法について解説する。
業務災害(労災事故)と安全配慮義務
労働者を雇用する企業は、「労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」義務(安全配慮義務)を負っている(労働契約法第5条)。さらに、労働契約法第5条の基になった判例法理は、安全配慮義務の根拠について、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として信義則上負う義務としているので、直接の雇用関係にはない下請け労働者に対する元請け会社、派遣労働者に対する派遣会社なども安全配慮義務を負うものとされている。
以上から、業務災害(労災事故)が企業の安全配慮義務違反に基づく場合には、企業は債務不履行または不法行為に基づく損害賠償責任を負うことになる。
業務災害(労災事故)と労災保険制度
労働者災害補償保険(労災保険)制度は、業務災害(業務上の事由による負傷、疾病、障がい、死亡)が発生した場合、被災した労働者やその遺族等に対し、給付がなされる。労災保険給付の種類は図表の通りである(なお、労災保険給付には複数業務要因災害および通勤災害に基づく給付もあるが、本稿では除く)。
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