「ダイバーシティ経営」実は中小企業にこそ大きな効果 成功につなげる7つのアクションとは
1ヶ月のアクセスランキング
日本において多様性が問われ始めたのは2000年頃。そこから四半世紀、あなたの会社はダイバーシティ経営に注力した、あるいは浸透したといえるほど、成果を上げられたでしょうか? ダイバーシティの重要性自体は多くの方が知るところでしょう。人口オーナス期(※)を迎え、労働者の生産年齢人口は1995年をピークに低下。もはや労働者2人で1人の高齢者を支える時代となりました。全国の商工会議所における2023年の調査では、6割以上の中小企業が「深刻な人手不足で、事業継続リスクがある」と回答。調査開始以降、最大の数値を記録しています。
※人口構成の変化が経済にとってマイナスに作用する状態。働く人よりも支えられる人が多くなる状況
人が足りない時代、今いる人材の力をどう最大化させるか、またこれまで雇用してこなかった人材にどう目を向けるかは、企業の生死すら分ける命題です。多様な労働者一人ひとりの働きやすさ・働きがいを本当に担保できているか。労働者に選ばれる会社となり、少ないリソースで生産性をいかに向上させていくか。SDGsで掲げられる17の目標の中に「多様性(ダイバーシティ)」というキーワードは直接的にはありません。しかし、従来のビジネスモデルが大きく変化する昨今、いかに柔軟に対応し、ダイバーシティ経営にかじを切るか企業の真価が今問われています。そこで本連載では、ダイバーシティ経営の浸透のために企業、そして総務担当者ができることを解説していきます。今回はダイバーシティ経営の成功例や実現までの手順を紹介します。
ダイバーシティ経営、進んでいますか?
従業員数の多い企業では、すでにいくつかの施策を講じているでしょう。「女性管理職の割合を〇%に」「多様な国籍の人材を〇人採用する」「LGBTQの研修実施」「育休取得率を上げる」「リモートワークの実施」など、数字上の目標を設定・達成していると思います。しかしそれが成果につながったという実感はありますか?
PwCコンサルティング合同会社が2015年に実施したグローバル調査では、ダイバーシティ経営の効果として91%の経営陣が人材の獲得、85%が業績向上を挙げています。重要なのはどんな施策を行ったかではなく、従業員が本当に「働きやすい」「働きがいがある」と感じているか。それぞれが多様な背景・価値観を発揮し充実した仕事ができていれば、利益につながるものです。自社においてダイバーシティ経営が実は形骸化していないか、見直してみましょう。経済産業省が2018年度より公開している「ダイバーシティ経営診断ツール」では、自社の人材マネジメントに関する状況を客観的にチェックできるので、おすすめです。
ここで、ダイバーシティ経営において注目される企業を2つご紹介します。
多様性を大きな力に変えたユニクロ
ユニクロなどを展開する株式会社ファーストリテイリングは、社員の6割近く、役員の2割ほどが日本以外の国籍。海外店舗数は1600を超えています(2024年2月時点)。
ユニクロのダイバーシティ経営を語る上で大きな転機といえるのは2020年のSDGsウォッシュでしょう。中国・ウイグル自治区の工場における強制労働について明言を避けたことで世界から大きな非難を受けたユニクロは、ダイバーシティ経営施策に大きくメスを入れました。現在は、「RISE(Refugee Inclusion Supporting and Empowerment)プログラム」のような積極的な難民支援や、各地域の人材を活かし地域ごとにローカライズを徹底した戦略で、この5年で300ほど海外店舗を増やしています。
商品開発においても「人はブランドに自分を合わせるのではない。服は人の個性や魅力を引き出すためのいわば『部品』である」という指針を掲げます。企業文化レベルでダイバーシティ経営を浸透させていく、ユニクロの決意が感じられます。ジェンダーや障がいといったテーマにも細やかに取り組み、夫婦と近しい権利を行使できる同性パートナーシップ制度なども整備。互いのアイデンティティを認め合い、多様な個性を生かし成長につなげています。
※掲載されている情報は記事公開時点のものです。最新の情報と異なる場合があります。