総務の引き出し(SDGs)

総務の小さな一歩が意識を変える 廃棄ゼロから資源循環を目指す「サーキュラーエコノミー」とは

一般社団法人サステナブル経営推進機構(通称「SuMPO(さんぽ)」) 代表理事/専務理事 壁谷 武久
最終更新日:
2025年07月24日
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かつて、企業にとって「廃棄物」は、なるべく減らすべきコストの一つに過ぎませんでした。しかしながら、気候変動、資源制約、生物多様性の喪失といった複合的な環境課題が深刻化する中、「廃棄」という概念そのものが見直されつつあります。廃棄物を出さない製品設計、資源の最大活用、そして循環による経済価値の再創出。今、企業の資源戦略において「サーキュラーエコノミー(循環経済)」の考え方が急速に存在感を高めています。 今回は、サーキュラーエコノミーの基本概念から、欧州における先進的な規制動向、日本国内の政策動向、そして企業における具体的なアクションに至るまで、総務部門の視点も交えて紹介します。

サーキュラーエコノミーとは?

サーキュラーエコノミーとは、製品やサービスの設計・使用・廃棄に至る全体のライフサイクルを見直し、廃棄物や環境負荷を最小限に抑えながら、資源の価値を可能な限り長く維持・循環させていく経済モデルです。

その代表的な定義として、エレン・マッカーサー財団が掲げる「サーキュラーエコノミ-3原則」(図表1)があります。

図表1 サーキュラーエコノミー3原則

これらの原則は、単なるリサイクルの推進ではなく、設計段階から「廃棄ゼロ」を目指すものであり、企業の戦略やビジネスモデルそのものを変革する力を持っています。

また、実務的には以下の5つのビジネスモデルによってサーキュラーエコノミーは支えられています(図表2)。

図表2 サーキュラーエコノミー5つのビジネスモデル

(1)サーキュラー型のサプライチェーン 再生可能エネルギー、バイオ素材または潜在的に完全にリサイクル可能な素材の導入
(2)シェアリング・プラットフォーム 使用・アクセス、所有の共同モデルを通じた使用率の向上
(3)PaaS(Product as a Service)サービスとしての製品 資源生産性を高めるために、生産者が製品を保存したまま製品の利用を提供
(4)製品寿命の延長 修理・加工・アップグレード、再販による製品寿命の延長
(5)回収とリサイクル 使用可能な資源またはエネルギーを、廃棄物または副産物から回収
出所:EU WebサイトおよびEcochain Webサイトを基にSuMPO作成

このように、サーキュラーエコノミーは単なる「環境配慮型の経営」にとどまらず、企業の競争力やブランド価値を形成する源泉として注目されています。

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プロフィール

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一般社団法人サステナブル経営推進機構(通称「SuMPO(さんぽ)」) 代表理事/専務理事
壁谷 武久

経済産業省を経て、2007年4月、一般社団法人産業環境管理協会に転籍。2019年6月、一般社団法人サステナブル経営推進機構を設立、同10月に同機構に移籍し現在に至る。2023年10月、株式会社LCAエキスパートセンターを設立、代表取締役社長に就任。現在は、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)戦略の実現に取り組んでおり、企業経営や地域経営における未来戦略作りにチャレンジ中。

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