総務の引き出し(SDGs)

記録という「資産」がSDGsの実践を強化する

小樽商科大学大学院 商学研究科 准教授 泉 貴嗣
最終更新日:
2023年01月27日
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企業がSDGsの実現に向けてアクションを起こしていても、それをステークホルダー(利害関係者)に知ってもらえなければ、企業価値の実現にはつながりません。SDGsの実現には、ゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」のように、多様なステークホルダーとのパートナーシップでの取り組みが重要とされています。そのため、ステークホルダーに自社の取り組みを知ってもらう状況をつくることは、SDGsの実践と同じくらい大切なことです。そこで今回は、SDGsにおける記録という資産形成の重要性について考えてみましょう。

地域社会とともに取り組む

企業は限りあるヒト、モノ、カネという経営資源を使って日々活動している以上、それを企業価値に結実すべく、顧客をはじめとするステークホルダーに評価してもらう必要があります。その評価の対象は自社の環境と社会に対する取り組み、社会性も含まれます。なぜなら、ビジネス環境の前提であるこの世界のサステナビリティが脅かされ、SDGsの実現が必要とされる時代では、サプライチェーン全体で環境問題と社会問題に取り組む必要があり、そのサプライチェーンの一翼を担う企業としては、当然自社の社会性が顧客から問われるからです。サステナブル調達は、その端的な例といえるでしょう。

また、「陰徳陽報」という言葉があるように、わが国では「良いことは人知れず行うべきもので、その行いがいずれ報われるものだ」という考え方があります。個人の行動指針として見れば奥ゆかしい考え方ですが、日々深刻化する環境問題と社会問題のことを考えれば、みんなが手を携えて取り組んだ方が、より大きな力を発揮することができます。1人で資源の節約に黙々と励むよりは自分が手本を示しつつ、みんなに資源の節約を呼び掛けて実践した方が環境問題に対してより効果がある、といえばわかりやすいのではないでしょうか。

この考え方は企業でも同じであり、地域社会の一員である以上、サプライチェーンで関係する顧客だけでなく、地域社会のみなさんと手を携えて環境問題と社会問題に取り組む、つまりSDGsに取り組んだ方が自社と地域のサステナビリティにつながります。

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著者プロフィール

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小樽商科大学大学院 商学研究科 准教授
泉 貴嗣

専門はサステナビリティ経営、ビジネス倫理。自治体の中小企業政策や中小企業のサステナビリティ経営の支援、上場企業の常勤監査役などを経て現職。著書に『やるべきことがすぐわかる! SDGs実践入門〜中小企業経営者&担当者が知っておくべき85の原則』(技術評論社)など。

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