自社だけで取り組むのは難しい…… SDGs推進を成功させるための上手な専門家との付き合い方
企業はその目的を実現するために、さまざまなステークホルダーとの関係を築いています。そして、彼らから有形無形の経営資源を調達することで、ビジネスをより効率的に進めることができるようになります。特に、さまざまなアドバイスを与えてくれる専門家の存在は、自社のビジネスの方向性や組織の在り方を決定する上で、大きな影響力を持つでしょう。それはSDGsとビジネスの両立についても同じです。そこで、今回は自社のSDGs推進における専門家との付き合い方について考えてみましょう。
自社のSDGs推進には専門家のサポートが必要
SDGsとビジネスの両立は多くの企業にとって、今まで以上に「初めてずくめ」のことになります。いわゆるSDGsとESGの観点から重要な経営課題を特定し、組織的に取り組み、それをステークホルダーに発信するという経験がある企業は、とりわけ中小企業において、圧倒的に少数です。コンプライアンスや環境問題への対策だけでなく、ハラスメント予防などの社内の人権問題への対応、顧客のサステナブル調達に関する要求への対応、採用や地域社会との共生を念頭に置いた、自社のサステナビリティ情報の開示・発信など、経営陣も従業員も、今まで考えたこともなければ、やったこともない事柄を重要な経営課題として認識することは難しいでしょう。ましてやそれを経営戦略の中に位置付け、具体的に業務化することを自分たちだけでやり切る厳しさは、想像に難くありません。
さらに、できたとしても、果たしてそれが適正なものなのか? 顧客や社会のニーズに応えられるスピードなのか? というリスクや不安が常に付きまとうことが予想されます。だからこそ、自社がSDGsとビジネス、つまり時代に応じた成長可能性の追求と事業リスクの低減、の両立のために、専門家のサポートを受けることが望ましいと考えるのは自然なことです。
明確な「ポリシー」が必要となる2つの理由
ここでいう「専門家」とは、弁護士や税理士、社会保険労務士などのいわゆる「士業」と呼ばれる方々だけでなく、経営コンサルタントや金融機関なども含みます。そして、やるべきことが。法的規制が及ぶテーマだけでなく広範囲にわたれば、それに伴いかかわる専門家の種類が増えます。だからこそ、企業は専門家を起用するに際してしっかりとした「ポリシー」を持って接することが重要になります。
なぜ、専門家と付き合うのにポリシーが必要なのでしょうか? それには大きく2つ理由があります。1つ目は、自社が、それぞれのテーマの「部分最適」ではなく、自分たちの体力や状況に合わせつつ、SDGsとビジネスの両立のための「全体最適」を実現するために、「何のために」「何を」「どこまで」やりたいのか、ということをしっかり伝え、それに資するアドバイスや提案を受けるためです。これは以前にお伝えしたコンセプトの重要性にも通じる話です。
2つ目は、専門家は十分な能力を有していても、その能力の発揮の仕方は依頼者との関係性に大きく左右されるからです。SDGsとビジネスの両立に向けて社内の体制を整備しようとすると、ときとして自社の重大な「負の部分」を直視し、その改善をしなければならないことがあります。男女間の不合理な賃金格差や慣行化しているサービス残業などがその典型例として挙げられるでしょう。こういった部分は必ず解消しなければ両立のスタートに立つことすらできませんが、経営陣が負の部分を直視することを忌避すれば、専門家はそれ以上先に進むことができません。また、専門家の倫理観が低ければ、負の部分を「潜脱」する方法をアドバイスすることで、こうした部分を助長、温存することも起き得ます。これでは、専門家をわざわざ起用して自社の事業リスクを高めるようなものです。だからこそ、経営陣が覚悟を持ち、専門家に対して負の部分の指摘と改善のサポートをしてほしいと、はっきりと伝える必要があるのです。これができてこそ、専門家も安心してその能力が発揮できるようになるでしょう。
「有力なサポーター」となってくれる専門家を見つけよう
ただし、必ずしも専門家がSDGsとビジネスの両立の重要性を理解している、あるいはその方法論を持っているとは限りません。社会問題や環境問題をビジネスに取り込むという経験があまりない専門家や、ビジネス観が古い専門家も少なからずおり、自社がSDGsを推進することについて、むしろ消極的な姿勢をとる場合があります。
そのため、企業が適切なサポートを得るためには、確かな専門家を探す必要があります。それには彼らとSDGsに関する意見交換を行い、見識とクライアントにおもねらない高い倫理観を持っているかを「評価」することが大事です。現在、顧問として専門家を起用している企業は多くありますが、「先代経営者からの付き合い」などとして惰性で付き合ってはいないでしょうか。これからも彼らが自社のSDGsとビジネスを両立するための有力なサポーターとなり得るのか、一度自社でしっかりと考えてみる必要があるでしょう。
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