災害時、BCPのスタートは「従業員の安否確認」から 企業が備えるべき命を守るITツール

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日本は世界有数の災害多発国です。地震、台風、大雨、豪雪、そして感染症まで、想定外の災害を「想定内」として考え、備えなくてはならない時代となりました。このような環境下で、企業は事業の継続だけでなく、社員の安全確保という重大な責任を担っています。
とりわけ重要なのが「災害発生直後の初動対応」です。BCP(事業継続計画)では、まず「人が無事かどうか」を確認することが、全てのスタートラインになります。誰が出社できるのか、どこで孤立しているのか、緊急対応の要員をどこに配置するのか——。これらの判断を下すためには、社員の状況を即座に把握する手段が必要です。
勤務時間中に災害が発生した場合、企業は社員の安全を確保する義務を負います。建物の損傷状況、帰宅判断、避難誘導、医療手配といった行動も、安否状況の把握なくしては適切な判断ができません。安否確認システムは、まさに「社員の命を守るITツール」として、今こそ再評価されるべきなのです。
安否確認システムの役割
かつての安否確認は、電話連絡網や一斉メール配信といった「人手」に依存していました。しかし、災害発生時は通信障害や交通混乱が常に付きまとうため、これらの手段では正確性・迅速性に限界があります。そこで登場したのが「安否確認システム」です。
安否確認システムは、災害発生時に自動的に社員へ連絡を行い、ワンクリックで回答を収集し、リアルタイムで集計・可視化するITサービスです。確認対象者の状態を一覧で把握し、未回答者に自動で再通知を行う機能も一般的です。このようなシステムは、企業が災害時に即座に「人の状況」を把握し、事業継続の判断材料を得るために不可欠なインフラとなっています。
東京商工会議所の「会員企業の防災対策に関するアンケート2024年調査結果」によれば、企業全体の安否確認システムの導入率は約34.4%にとどまっていますが、従業員規模が大きくなるにつれて導入率は上昇する傾向にあります。
また、2025年に帝国データバンクが実施した「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」においては、重視対策として「従業員の安否確認手段の整備」が68.3%と高い割合を示しています。現在では、ソーシャルネットワークサービスなど、ほかにも安否確認の手段は多くありますが、自動的に安否確認ができることに特化したシステムを導入するメリットは多くあります。
災害が「勤務時間中」に発生した場合、企業には従業員の連絡先を把握するだけでなく、現場での迅速な判断と的確な行動が求められます。たとえば大規模地震が発生し、オフィスビルに多数の社員が在席していたとします。エレベーターの停止、建物の破損、交通のマヒなどが起こる中、まず気になるのは社員の安否です。このような状況で安否確認システムがあれば、迅速に各自の無事、位置、状況が把握でき、「避難させるべきか」「建物にとどめるべきか」「医療手配が必要か」といった次の一手を即座に検討できます。
また、在宅勤務中や出張中の社員の安全も忘れてはなりません。スマートフォン対応の安否確認システムであれば、オフィス外にいる社員やその家族の状況も把握できるため、より広範な安全対応が可能になります。
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