部下の「いつもと違う」にどう気付く? メンタル不調を見逃さない1on1の進め方
近年、多くの企業で1on1が導入されています。上司と部下が定期的に面談し、業務の進捗や課題、キャリアについて話し合う。うまく機能すれば、部下の成長支援や組織のコミュニケーション改善につながる有効な取り組みです。
一方で、精神科医として働く人の不調に接していると、企業側から次のような声を聞くことがあります。
「1on1は毎月していました」
「上司は定期的に話を聞いていたはずです」
「でも、本人から不調の相談はありませんでした」
ここには、職場のメンタルヘルスを考える上で重要な論点があります。つまり、1on1を実施していることと、部下が安心して相談できる状態にあることは、必ずしも同じではないということです。面談の時間は確保されていても、内容が業務進捗の確認だけになっている。上司が話しすぎて、部下が本音を出せない。相談した内容が評価に影響するのではないかと感じている。こうした状況では、1on1は「対話の場」ではなく、「報告の場」になってしまいます。
では、1on1はメンタル不調の予防に役立たないのでしょうか。そうではありません。大切なのは、1on1を単なる人事施策としてではなく、職場のメンタルヘルス対策における「ラインによるケア」の実践の場として位置付けることです。
1on1は「面談制度」ではなく「気付く仕組み」
まず確認しておきたいのは、1on1はメンタル不調を完全に防ぐ魔法ではない、ということです。上司が部下を診断する場でも、悩みを全て解決する場でもありません。むしろ重要なのは、1on1を「部下の変化に気付くための継続的な接点」として活用することです。
厚生労働省は、職場のメンタルヘルス対策として、「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」という4つのケアを示しています。このうち、管理監督者が担うものが「ラインによるケア」です。ラインによるケアには、職場環境等の把握と改善、労働者からの相談対応、職場復帰における支援などが含まれます。
つまり、メンタルヘルス対策は産業医や専門職だけの仕事ではありません。日常的に部下と接し、業務量や職場の人間関係、仕事の進め方を把握している管理職にも、重要な役割があります。
1on1は、このラインによるケアを日常業務の中で実践するための有力な場といえます。
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