『月刊総務』調査

約9割が自社の企業文化のアップデートを必要と認識。最大の課題は「経営層と従業員の意識の乖離」

最終更新日:
2025年05月13日

『月刊総務』は、全国の企業を対象に「企業文化に関するアンケート調査」を実施し、136人から回答を得ました。

  1. 調査結果 概要

9割以上が企業文化のアップデートは重要だと回答

企業文化のアップデートの重要性について尋ねたところ、「とても重要」と「やや重要」が合わせて94.8%で、9割以上がアップデートの意義を認識していることが明らかとなった(n=136)。

約9割が自社の企業文化をアップデートする必要性を実感

自社の企業文化のアップデートの必要性について尋ねたところ、「とても必要」と「やや必要」が合わせて88.9%で、約9割がアップデートの必要性を感じていることがわかった(n=136)。

<必要だと思う理由/一部抜粋>

  • 必要以上に伝統を重視しすぎることで、現代社会から置いていかれる懸念があるから。
  • 若い人にも魅力ある企業であると認識してもらう必要があるから。
  • 環境に合わせて変化・進化できない企業は衰退すると思うから。
  • 変化の激しい時代では、社員が迷うことが多くなるので、常に社内に求心力を働かせる必要があるから
  • 軸となる部分を大きく変える必要はないが、社会の変化や時代の流れに合わせてより腹落ちする内容にするための見直しは必要であり、それが社員の意欲にもつながると感じるから

<会社の文化でよいと思うところ/一部抜粋>

  • 経営層と従業員とのコミュニケーションは円滑にかつ遅滞なく行われて、情報共有ができているところ。
  • 従業員に何かあった際、親身になってくれるところ。
  • 社員のスキルアップやキャリア成長を支援するためのトレーニングや研修プログラムが充実していて、自己啓発を奨励し、学び続ける文化が根付いているところ。
  • 頑張りがきちんと評価されるところ。

<会社の文化で悪いと思うところ/一部抜粋>

  • 残業することが一義的に善とされているところ。
  • 理念に基づいた経営・事業計画立案・業務遂行がされていないところ。
  • 各役職における権限と責任があいまいで、権限移譲のしくみも進んでいないため、的確な意志決定をする管理職が少ない。
  • 実力はないが上に気に入られる人が昇進して、本当に努力している縁の下の力持ちが評価されない。
  • ビジネスチャットツールやWEB会議システム、AI等の新しいITツールに対して、抵抗感を示す者が多いこと。

創業10年以上の企業の4割近くが、ミッション・ビジョン・バリューを見直したことがない

創業10年以上の企業に対して、ミッション・ビジョン・バリューの見直しを行なったか尋ねたところ、38.3%が見直したことがないと回答した(n=120/創業10年以上の企業)

ミッション・バリューの浸透施策は「企業理念・ビジョンの見直し」が最多。約3割は何も実施したことがない

ミッション・ビジョン・バリューの浸透施策について尋ねたところ、「企業理念・ビジョンの見直し」38.2%が最多、次いで「社内イベント・ミーティングの強化」31.6%、「価値観や行動指針の策定」30.1%となった。一方で、「実施したことはない」との回答も27.9%あり、実施の有無にばらつきが見られた(n=136)。

企業文化の影響は「エンゲージメント向上」が最多

企業文化が組織運営に与える影響について尋ねたところ、「従業員のエンゲージメント向上」が75.0%で最多、次いで「会社のブランド力の強化」53.7%、「離職率の低下」41.2%が続いた(n=136)。

企業文化アップデートにおける総務の役割は「社内コミュニケーションの促進」が最多

企業文化のアップデートにおいて総務部門が果たすべき役割について尋ねたところ、「社内コミュニケーションの促進」が71.3%で最多、次いで「人材育成の支援」43.4%、「企業理念の浸透」39.7%が続いた(n=136)。

企業文化アップデートのために取り組んでいる施策は「社内表彰制度」が最多、3割近くは未実施

企業文化アップデートのために現在実施している施策について尋ねたところ、「社内表彰制度」が41.2%で最多、「社内報の発行」34.6%、「従業員満足度調査の実施」27.9%が続いた。「取り組みをしていない」と回答した人は27.2%だった(n=136)。

効果実感が高いのは「定期的な全社ミーティング」

実施している施策の効果について尋ねたところ、「定期的な全社ミーティング」が最も効果を実感していることがわかった。

企業文化アップデートの課題は「経営層と従業員の意識の乖離」

企業文化アップデートにおける課題について尋ねたところ、「経営層と従業員の意識のかい」が68.4%で最多、次いで「部門間の連携不足」52.9%、「施策の効果測定の難しさ」39.7%が続いた(n=136)。

評価指標として最も多いのは「従業員満足度」。36.0% は評価指標なし

企業文化に関する評価指標について尋ねたところ、「従業員満足度」が38.2%で最多、「離職率」31.6%、「業績指標」21.3%が続いた。一方で、「指標はない」と回答した人も36.0%おり、評価軸の不在が課題であることも伺える(n=136)。

総務に求められるスキルは「コミュニケーション能力」「変革推進力」「分析力」

企業文化のアップデートを成功させるために総務部門に必要なスキルについて尋ねたところ、「コミュニケーション能力」が64.0%で最多、次いで「変革推進力」58.8%、「分析力」51.5%と続いた(n=136)。

企業文化醸成のためのツールは「社内報」「従業員満足度調査ツール」など

企業文化醸成に用いている手法・ツールについて尋ねたところ、「社内報」が33.8%、「従業員満足度調査ツール」が31.6%で上位を占めた。一方、「使用しているものはない」との回答も28.7%に上っており、活用に温度差が見られた(n=136)。

  • 社内報:33.8%
  • 従業員満足度調査ツール:31.6%
  • 社内SNS:22.8%
  • オンライン会議システム:17.6%
  • eラーニングプラットフォーム:16.9%
  • カルチャーブック:12.5%
  • ピアボーナス:5.9%
  • その他:2.2%
  • 使用しているものはない:28.7%

総評

今回の調査では、約9割の企業が「自社の企業文化のアップデートが必要」と回答し、その重要性が多くの企業に広く認識されていることが明らかとなった。背景には、価値観や働き方の多様化に加え、「このままでは時代に取り残される」「若手人材に選ばれなくなる」といった危機感も見られた。しかし一方で、浸透施策の実施状況にはばらつきがあり、「何も実施していない」「評価指標がない」といった課題も依然として存在する。

特に注目すべきは、企業文化のアップデートが「エンゲージメント向上」や「離職率低下」などの経営成果と密接に結びついていると多くの企業が捉えている点だ。これは、企業文化が単なる“雰囲気”ではなく、戦略的な資産として捉えられ始めている兆しともいえるだろう。しかしながら、「経営層と従業員の意識の乖離」や「部門間の連携不足」など、構造的な課題がアップデートの阻害要因となっており、継続的な対話と可視化を通じた文化形成が今後の鍵となる。

総務部門は、組織横断的な存在として企業文化の“担い手”となることが求められる。現場の温度感を把握しながら、社内報や満足度調査といった従来型の手法にとどまらず、デジタルツールの活用やリアルなコミュニケーションの場を通じて、文化の浸透を図る工夫が必要だ。従業員一人ひとりが、自らが企業文化の一部であると実感できる仕掛けづくりが、これからの総務に期待される。


【調査概要】
調査機関:自社調査
調査対象:『月刊総務』読者、「月刊総務オンライン」メルマガ登録者ほか
調査方法: Webアンケート
調査期間:2025年3月11日〜2025年3月18日

■調査結果の引用時のお願い
本調査内容を転載・ご利用いただく場合は、出典元の表記をお願いします。
例:「『月刊総務』の調査によると」「『月刊総務』調べ」など

※掲載されている情報は記事公開時点のものです。最新の情報と異なる場合があります。

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