『月刊総務』調査

総務の仕事はAIに代替されると6割が実感。総務に求められる役割・スキルが変化すると9割が予測

月刊総務オンライン編集部
最終更新日:
2025年08月08日

『月刊総務』は、全国の総務担当者103人を対象に、「企業のDXと組織変革に関する調査」を実施した。

前回調査:会社全体のデジタル化が進んだと8割以上が回答。一方、8割の総務は収集データを活用できていない

  1. 調査結果 概要

75.7%がこの2〜3年で会社のDXが進んだと実感

この2〜3年で会社全体のDXは進んだと思うか尋ねたところ、「とても進んだ」11.7%、「やや進んだ」64.0%で、あわせて75.7%がDXの進展を実感していた(n=103)。

<進んだ内容/一部抜粋>

  • 禁止されていた生成AIの使用が推奨された。
  • 紙の申請がワークフローに置き換わった。
  • リモート前提で稟議や社内システムのDX化が進んだ。
  • 社内で紙の証憑を提出する必要がなくなった。

<進まなかった理由/一部抜粋>

  • 経営陣が必要性を感じていないから。
  • コストダウンが見込めなかったため。
  • 予算がないため。

<業務効率化にとどまらず、仕事そのものが変わったと思うこと/一部抜粋>

  • ルーチンワーク、承認取得やレポートが自動化された。
  • 営業やCSは担当者の経験や勘に頼って顧客対応をしていたが、顧客データが蓄積・分析されることで、よりパーソナライズされた対応が可能になった。その結果、「説明する人」から「顧客体験を設計・改善する人」へと進化した。
  • DXによって進捗や成果がツール上で可視化されるようになったことで、管理職の主な役割は「ファシリテーター」へと移行した。

会社のDX推進度、2023年調査とほぼ横ばいの評価

会社のDX推進度をどのように評価するか尋ねたところ、29.1%が推進されていると回答した。一方で、「取り組んでいるがやや足りていない」が35.0%、「全く足りていない」が21.4%と、課題感を抱える層も多く見られた。2023年調査と比較すると、全体としては推進中の企業が微増したものの、前回とほぼ横ばいの結果となった(2023年:n=145/2025年:n=103)。

64.1%の総務が、AIの急激な進化に危機感を持つ

AIに対して危機感や焦りがあるかを尋ねたところ、「とてもある」27.2%、「ややある」36.9%で、あわせて64.1%が何らかの焦りを抱いていることがわかった(n=103)。

<危機感がある理由/一部抜粋>

  • 上層部がAI活用に懐疑的でなかなか推進できないことで、取り残されていると感じているから。
  • 会社としてはAIを積極的に取り入れているが、総務として活用しきれていないため。
  • 総務部員の情報リテラシーが低いこと。
  • 正しい活用方法、リスク対策が話し合われておらず個人の裁量になっているから。
  • AIに頼りすぎることによる社員の力量の低下が懸念されるから。

約6割の総務が、AIによる業務代替の可能性を実感

AIに対して危機感や焦りがあると思うか尋ねたところ、「とても思う」と「やや思う」があわせて61.1%となった。「とても思う」との回答は、2023年調査から6.5ポイント増加し、現場のリアルな危機感が強まっていることが明らかとなった(2023年:n=93/2025年:n=103)。

AIの進化と普及で、88.3%が総務に求められる役割・スキルの変化を実感

AIの進化と普及により、総務に求められる役割やスキルは変わると思うか尋ねたところ、「とても変わる」33.0%、「やや変わる」55.3%と、あわせて88.3%が変化の必要性を感じていた(n=103)。

<変わると思う理由/一部抜粋>

  • 総務の業務のかなりの部分はルーティーン業務であり、AIで代替できるから。
  • 作業や提案はAIが実施・作成するため、その目的や定義を設定できるかどうか、どう活用するかの能力が問われるから。
  • AIでは対応しきれない、人間的な心配りやコミュニケーションなどがより必要になるから。

<変わらないと思う理由/一部抜粋>

  • 総務の業務はオンラインで済むことばかりでないので、結局人が必要になるから。

約8割の総務が、会社の古い体質に危機感あり

会社の体質が古いことに対する危機感を尋ねたところ、「とてもある」と「ややある」が合わせて79.6%で、約8割が問題意識を抱えていた(n=103)。

<危機感があること/一部抜粋>

  • 性別役割分担の意識が強いこと。
  • 昭和的な労働観が残っていること。
  • 明らかに不要な会議でもルールだからと実施しなければならないこと。
  • 経営層と現場に距離感があること。

企業体質の変革に向けた取り組み、「制度・ルールの見直し」が最多

総務として企業体質の変革に向けて行っている取り組みを尋ねたところ、「社内制度やルールの見直し」が63.1%で最多となり、「経営層と現場をつなぐ対話の場づくり」が32.0%、「働き方や価値観に関する研修・啓発活動」と「総務自らが率先して新しい施策に挑戦」が29.1%と続いた(n=103)。

<危機感があること/一部抜粋>

  • 若手への権限移譲。
  • ミッション・バリューを刷新するにあたって、全社員の考えを持ち寄り策定したこと。
  • タウンホールミーティング。

CXの認知度は3割強にとどまり、言葉自体を知らない層も同率で存在

「CX(コーポレート・トランスフォーメーション)」という言葉の認知を尋ねたところ、「よく理解している」6.8%、「なんとなく理解している」25.2%で、あわせて32.0%が一定の理解を示した一方、「言葉を聞いたことがない」も32.0%にのぼった(n=103)。

CXとは:企業が持続的に成長していくために、経営の仕組みや企業文化、働き方、組織構造などを抜本的に見直し、変革していく取り組みを指す。DXにとどまらず、企業全体の在り方を問い直し、社会の変化や多様な価値観に対応できる“しなやかな組織”へと進化することが求められている。

<CXのために実践していること/一部抜粋>

  • 企業内インターンシップ(他部門の仕事を1週間経験できる)。
  • 会社の公式Vtuberを活用した企業風土文化の変革の企業PR。
  • 外国籍スタッフの文化に応じた休暇取得制度の確立。
  • 役職の撤廃。

CX推進で優先的に変えるべき領域は「組織構造・役割の見直し」が最多

総務としてCXを進める上で優先的に変えるべきだと思う領域について尋ねたところ、「組織構造・役割の見直し」が58.3%で最多となり、「業務の自動化・効率化」が47.6%、「社内コミュニケーションの刷新」が46.6%と続いた(n=103)。

CXで目指すのは「柔軟で変化に強い組織」「自律的に動く組織」

CXの取り組みを通じて、会社としてどのような状態を目指しているかを尋ねたところ、「柔軟で変化に強い組織」が64.1%で最多となり、「自律的に動く組織」が51.5%、「社員が挑戦しやすい風土」が49.5%と続いた(n=103)。

CX推進で総務に求められる役割は「他部署との橋渡し役(ファシリテーター)」

CXの実現に向けて総務に求められる役割について尋ねたところ、「他部署との橋渡し役(ファシリテーター)」が56.3%で最多となり、「現場の実行力を担う中核部署」と「経営と社員の価値観をつなぐ役割」が39.8%、「働き方改革の実行責任者」が37.9%と続いた(n=103)。

CX推進で総務に必要とされるスキルは「組織間の調整力・巻き込み力」「プロジェクト推進力」「社内外との対話力・共感力」など

CXを推進するために必要なスキル・資質について尋ねたところ、「組織間の調整力・巻き込み力」が68.0%で最多となり、「プロジェクト推進力」が54.4%、「社内外との対話力・共感力」が52.4%と続いた(n=103)。

総評

今回の調査では、総務の役割変革への期待と危機感が交錯する現場のリアルが浮かび上がった。DXやCXの推進を求められる中、制度・体制の整備だけでなく、変革をけん引する「人」としての在り方が問われており、AIによる代替可能性に対する意識の高まりは、業務の再構築を迫られている現状を象徴している。

特に注目すべきは、総務が「他部署との橋渡し役」「経営と社員の価値観をつなぐ役割」として認識されている点だ。これは、単なる業務効率化を超え、組織文化や従業員体験の向上を担う存在としての位置づけに変化していることを意味する。必要とされるのは、変化に適応するのではなく、変化を起こす側に立つマインドとスキルの獲得となる。

今後は、AIとの協働を前提に「人だからこそ果たせる価値」を再定義し、調整・共感・対話といった能力を核に据えた戦略的な役割設計が鍵となる。総務自身が変革の実験場となることで、全社に波及するモデルケースを築いていくことが期待される。


【調査概要】
調査機関:自社調査
調査対象:『月刊総務』読者、「月刊総務オンライン」メルマガ登録者ほか
調査方法: Webアンケート
調査期間:2025年6月12日〜2025年6月19日

■調査結果の引用時のお願い
本調査内容を転載・ご利用いただく場合は、出典元の表記をお願いします。
例:「『月刊総務』の調査によると」「『月刊総務』調べ」など

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