総務の引き出し(SDGs)

これからのSXに必要なのは「地域総務」 地域再生のハブとなる新しい役割とは

一般社団法人サステナブル経営推進機構(通称「SuMPO(さんぽ)」) 代表理事/専務理事 壁谷 武久
最終更新日:
2025年10月27日

日本の地域社会は、人口減少や少子高齢化、産業構造の変化により、かつてないほどの厳しい局面に直面しています。中心市街地には空き店舗が増え、農村部では耕作放棄地が拡大し、さらにはインフラの維持管理さえ困難になりつつある地域も少なくありません。一方で、脱炭素や資源循環の潮流が加速する中で、地域こそが「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」を実践する最前線となる可能性を秘めています。
今回は、地域経済再生をSXの視点から捉え直し、リジェネラティブ(再生的)なアプローチによる「ローカル・サーキュラーエコノミー」の構築について考えていきます。

ローカル・サーキュラーエコノミーの重要性

サーキュラーエコノミー(循環型経済)は、資源の投入と廃棄を最小限にし、価値を最大化する考え方です。しかし「地域」に視点を移したとき、この概念は単なるリサイクルにとどまらず、より広がりを持つ概念となります。

地域には、自然資本や廃棄物といった資源、働き手・生活者・担い手といった人材、そして歴史や風土に根ざした文化的知恵が存在します。これらを循環させることで、地域自らが持続可能な発展の道筋を描くことができるのです。

具体的には、以下のような循環が重要です。

  • 資源循環:廃棄物や副産物を再資源化し、地域内で利用する
  • 人材循環:若者・高齢者・移住者が地域の産業やサービスに関与する仕組みをつくる
  • 文化循環:伝統や地域の物語を新しい価値に変換し、観光や産業に生かす

この3つの循環を組み合わせることこそが、SXにおける「ローカル・サーキュラーエコノミー」の核といえるでしょう。

リジェネラティブな地域再生とは

次に重要となるのが「リジェネラティブ(再生的)」な視点です。従来の持続可能性(サステナビリティ)は「現状を維持する」ことに重きがありましたが、リジェネラティブなアプローチは「失われた自然や社会的価値を再生する」ことを目指します。

たとえば、荒廃した耕作放棄地を再生し、自然環境に最大限配慮した再エネ設備の導入や有機農業の拠点とする取り組み、空き店舗や商店街をリノベーションして地域住民や移住者の新たな拠点整備とする試み、さらには未利用不動産を起業支援や医療・福祉・教育事業に活用する動きなどが、その具体例として挙げられます。

さらに、老朽化した公共インフラを単に維持管理するのではなく、地域の防災拠点や新しいモビリティの拠点に転換することも、リジェネラティブな発想の一つです。

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プロフィール

一般社団法人サステナブル経営推進機構(通称「SuMPO(さんぽ)」) 代表理事/専務理事
壁谷 武久

経済産業省を経て、2007年4月、一般社団法人産業環境管理協会に転籍。2019年6月、一般社団法人サステナブル経営推進機構を設立、同10月に同機構に移籍し現在に至る。2023年10月、株式会社LCAエキスパートセンターを設立、代表取締役社長を経て、代表取締役会長を務める。現在は、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)戦略の実現に取り組んでおり、企業経営や地域経営における未来戦略作りにチャレンジ中。

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