長期化するイラン情勢で揺らぐ資源供給 今、「サーキュラーエコノミー」が求められる理由とは
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本号から1年間にわたり、「企業の新たな成長戦略としてのサーキュラーエコノミー(循環経済)」をテーマに連載をお届けします。
2026年の世界は、まさに資源とエネルギーを巡る不安定な時代に突入しています。2026年2月28日、アメリカとイスラエルがイランに対する軍事攻撃を実施し、中東情勢は急速に緊張を高めました。この衝突の影響で、世界の原油輸送の要衝であるホルムズ海峡周辺の情勢が緊迫し、石油供給への不安から原油価格は大きく上昇しています。国際エネルギー市場では原油価格が100ドルを超える水準に達し、世界経済への影響が懸念されています。
この出来事は、企業経営にとって極めて重要な事実をあらためて示しました。それは、資源とエネルギーはいつでも安定して入手できるとは限らないという現実です。これまで企業は、原材料やエネルギーを市場から購入することで事業活動を維持してきました。しかしながら、近年は、地政学リスクや資源争奪の激化によって、資源供給そのものが企業経営を左右する時代になりつつあります。
こうした背景の中で世界的に注目されているのが、サーキュラーエコノミーへの転換です。
「サーキュラーエコノミー(循環経済)」とは、資源をできるだけ長く使い続け、廃棄物を新たな資源として循環させる経済の仕組みのことであり、従来の「作って、使って、捨てる」という一方向の経済から、「循環する経済」へと転換することを目指すものです。
現在、欧州を中心にこの考え方は単なる環境政策ではなく、産業競争力と経済安全保障を支える戦略政策に位置付けられています。
本連載では、こうした国内外の動向を踏まえながら、サーキュラーエコノミーの基本概念から政策動向、企業事例、そして企業が実務として取り組むべき対応までを体系的に解説していきます。特に、総務部門の視点から、調達、契約管理、資産管理、廃棄物管理など、企業の循環経営を支える実務の在り方についても整理していきます。 初回となる今回は、「なぜ今、サーキュラーエコノミーなのか」という背景について、世界の資源問題と産業政策の変化から見ていきます。
世界が直面する資源制約と企業リスク
(1)資源価格の高騰と供給不安により揺れる経営
近年、企業経営において最も大きな不確実性となっているのが「資源」です。エネルギー価格の高騰に加え、金属資源、化学原料、プラスチック原料などの価格変動は激しく、企業の製造コストや調達計画を大きく揺さぶっています。
これまで企業は、資源を「必要なときに、必要な量だけ、安定的に購入できるもの」として扱ってきました。しかしながら、現在は、そもそもほしい資源が確保できない、あるいは価格が急騰して採算が合わないといった事態が現実に起きています。
この変化は、単なるコスト管理の問題ではありません。資源を安定的に確保できない企業は、製品供給そのものが困難になり、取引先からの信頼を失う可能性すらあります。資源制約は、企業の競争力を左右する重大な経営リスクになりつつあります。
さらに資源価格が不安定になるほど、企業は在庫を多く持つ必要が出てきます。しかしながら、在庫を抱えればキャッシュフローが悪化し、資金繰りや投資計画にも影響が及びます。資源の不安定化は、経営全体に波及する構造的な問題になっているといえます。
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