2022年に労務行政研究所が実施した「人事労務諸制度の実施状況調査」によると、社有社宅制度を採用している企業は17.5%、独身寮を採用している企業は31.5%と半数を大きく割り込んでおり、かつ、2010年調査よりも大きく減少している。しかし、借り上げ社宅制度については、69.5%と7割近くの企業が採用しており、かつ、2010年調査(71.0%)とほとんど変わっていない。この点、退職者・解雇者が借り上げ社宅に居座るケースは古くからあるが、現在においてもまま見られる問題である。そこで、本稿では、退職・解雇されたあとも社宅に居座る元社員を退去させる際の留意点について解説する。
借り上げ社宅の利用関係
労働基準法第10章(第94条~第96条の3)では、「事業の附属寄宿舎」に関する規定が置かれているが、「事業の附属性」と「寄宿性」を有するものが「事業の附属寄宿舎」に該当するとされている。ここでいう「事業の附属性」とは、「宿泊している労働者について、労務管理上共同生活が要請されているか否か」および「事業場内またはその付近にあるか否か」といった基準により総合的に判断され、「寄宿性」とは、「常態として相当人数の労働者が宿泊し、共同生活の実態を備えるもの」をいい、その判断基準として「(1)相当人数の労働者が宿泊しているか否か/(2)その場所が独立または区画された施設であるか否か/(3)共同生活の実態を備えているか否か、すなわち単に便所、炊事場、浴室等が共同となっているだけでなく、一定の規律、制限により労働者が通常、起居寝食等の生活態様をともにしているか否か」によって総合的に判断され、したがって、「社宅のように労働者がそれぞれ独立の生活を営むものは含まれない」とされている(昭23.3.30基発508号)。
以上から福利厚生の一環として設けられた社有社宅や独身寮、借り上げ社宅は、いずれも建物の中で独立の生活を営むものであるので、「事業の附属寄宿舎」には該当しない。
このような社宅における貸し主である会社と借り主である社員との法律関係(利用関係)については、大きく2つに分けられる。すなわち、1つは、社宅関係を賃貸借契約と考え、借地借家法が適用されるという考え方であり、もう1つは、社宅関係を使用貸借契約またはその他の特殊な契約関係と見る考え方である。
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