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日々、さまざまな不祥事が報道されています。最近は、不正アクセスや品質・データ偽装、営業秘密の持ち出し、経営層によるハラスメント行為などが目立っています。一方、企業の総務・広報担当者として働いているみなさんにとって、公表が必要になる不祥事に直面する機会は決して多くないでしょう。私は、ある組織で7年近く広報担当者として働いていましたが、公表が必要な不祥事は一度も発生しませんでした。いざ公表要否の検討が必要な不祥事が発生すると、どのようなタイミングで公表すればよいのか判断に迷います。公表した場合、不祥事自体に対する批判は避けることはできませんが、「公表の遅れ」を報道機関や世間から批判されないようにしたいものです。今回は、不祥事発生時の公表遅れの批判を招きやすいケースや公表のタイミングを考えるポイントなどを紹介します。
公表の遅れを批判された事例
2015年以降に、報道で「公表が遅れた」ことについて言及された事案を調査しました。該当する事案は30件以上ありましたが、いくつか代表的なものをピックアップします。
最も古いものは2015年の年初に公表があった、日本マクドナルド株式会社の異物混入騒ぎです。当時、日本マクドナルドでは、異物混入が立て続けに発覚していましたが、過去に起きていた事象を、後から公表したことで批判の声が上がりました。該当事案では、日本マクドナルドが問題を把握したのは2014年8月で、公表したのは2015年1月。つまり、約5か月経ってから公表されたのです。「安全性に問題がない」など、非公表とした理由は明確にされていたのですが、食品は直接的に身体に影響を与える恐れもあり、すぐに公表すべきだったと批判的に報道されたケースです。
最近の代表的な事例は、三井石油開発株式会社の蒸気噴出です。北海道で地熱発電の資源量を調べる採掘作業中に蒸気が噴出し、高濃度のヒ素が検出されました。蒸気が噴出したのは、2023年6月29日。三井石油開発は、当日中に蒸気が噴出している事実関係を第一報で公表しました。このときは「人的被害なし」としています。一方、7月4日になって、6月29日の蒸気噴出時に、現場敷地内に配送のため訪れていた人が体調不良を訴えて入院していたこと、さらに硫化水素中毒と診断されていたことを公表しました。同社は不安をあおることを防ぐため公表を控えたとしましたが、公表の遅れを強く批判されました。健康被害については、同社が問題を把握してからおよそ5日後に公表したということですが、当初は人的被害なしと公表していたことも相まって批判が強まったといえるでしょう。また、その後も7月3日に蒸気の噴出現場直下に滞留していた水たまりでヒ素が検出され、敷地外に放出したことを7月6日に公表。事前に知らせることなく放出したことについて、近隣住民、広域・基礎自治体、報道機関から激しく批判されました。
また、東京電力の福島第一原子力発電所事故における炉心融解や新型コロナウイルス関連の問題についても、公表遅れの報道が多くありました。
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