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昨年から不祥事の報道が目に付くようになりました。直近では、小林製薬株式会社のサプリメントなどによる健康被害問題が注目されています。この事例では公表が遅れたことについて、特に強く批判されました。同社が事態を把握してから公表するまでの間に、自社で製品と健康被害との因果関係の調査を行っていましたが、マスコミ側は、もっと早くに何らかの注意喚起があれば被害を防げたのではないか、監督官庁への報告・相談が不十分だったことから隠ぺい意図があったのではないか、と捉えているようです。本連載でも何度か危機管理広報関係を扱ってきましたが、発生事象を解説するものが多かったので、今回はそもそも危機管理広報とは何なのかを整理して扱います。
危機管理広報とは何か
そもそも、何らかの問題が起きたとき、企業・報道機関・一般社会の3者で「期待」することが異なります。
企業は、レピュテーションや企業イメージに与える負の影響を最小限にしたい一方で、報道機関は同種の不祥事・不正行為の発生を社会全体で防ぎたいと考えます。その内容や対応・対処の在り方について問題を浮き彫りにし、社会全体で共有財産にすることを目指しています。単に企業を批判したいのではなく、再発を防止したいのです。また、不祥事・不正行為の情報に触れたときやその被害を受けたときには、「不安」や「怒り」などストレスの原因となる負の感情が生まれます。一般社会では、そうした感情を避けて、できるだけストレスの少ない暮らしをしたいと考えます。
危機管理広報はこの3者の期待を満たすものでなければなりません。そのためには「迅速かつ適切な情報開示」が必要です(図表)。しかし、企業側は批判されそうな情報をできるだけ出さないようにする方向で考えてしまいがちです。このため、情報開示が遅れたり、問題を矮小化したりしてしまいやすいのです。すると報道機関や一般社会の期待を裏切ることになり、レピュテーションを毀損してしまいます。このように、危機管理広報では、企業側の期待と報道機関・一般社会の期待が相反しやすいものなのです。
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