メンタル既往歴での「一律線引き」が損失に? 不調経験者の受け入れが採用力強化につながるわけ
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採用のご相談を受けていると、時折、こんな声をうかがうことがあります。「応募者のメンタル面の既往歴を、どうにか確認できないだろうか」「ストレス耐性の検査結果が低い人は、一律で見送るルールにしようかと思う」――。最初に申し上げておきたいのは、こうした声を責める気持ちになれない、ということです。背景にあるのは多くの場合、悪意ではなく切実さだからです。入社後に体調を崩したら、本人が何よりつらい思いをします。受け入れた現場にも負荷がかかります。会社には安全配慮義務があり、人事・総務の担当者は、その重い責任を日々背負っています。実際にメンタルヘルス対応に当たる方の苦労を思えば、「入り口で慎重になりたい」という心理は、ごく自然なものだと思います。かくいう私自身、事業会社で採用責任者をしていた頃、同じ不安を抱えて選考に臨んでいました。ですから本稿は、誰かを断罪するためのものではありません。
精神的な不調は「特別な人」の話ではない
まず、前提となる事実の確認です。精神的な不調は、ごく限られた特別な人に起こることではありません。国際的な調査では、児童・青年期のうちに何らかの精神的な問題を経験する人は約2割に上るとされ、生涯を通じて見ればさらに多くなります。人生には、誰にでも、過重な負荷が続く時期や、深い喪失に見舞われる時期があります。そこで心身の調子を崩すことは、弱さの証明ではありません。
むしろ現場でしばしば見かけるのは、責任感が強く、手を抜くことができない誠実な人ほど、無理を重ねて燃え尽きてしまう、という光景です。そして大切なことですが、多くの方は適切な治療と休養を経て回復されます。復帰後、以前にも増して活躍している方、ご自身の経験があるからこそ、部下の変調に早く気付ける管理職になった方を何人も見てきました。
つまり、「メンタルの既往歴」とは、特別な誰かに貼られたラベルではなく、「誰でも、ときと場合によってはなり得ること」の記録なのです。もし過去に一度不調を経験したことが、あらゆる会社の入り口で一律に不利に扱われるのだとしたら ―― それは、回復して働こうとする人から機会を奪うだけでなく、いつか自分や家族がその立場になるかもしれない、私たち全員にかかわる問題だと思うのです。
「過去の一時点」で人を固定していないか
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