『月刊総務』は、全国の総務担当者を対象に「育児との両立支援についての調査」を実施し、159人から回答を得た。
- 調査結果 概要
- 「男女ともに育児を担う前提」で制度を運用する企業は52.2%
- 55.3%が「周囲の従業員へ負担が偏る」を課題に挙げ最多
- 66.2%が育児期の課題に制度・運用で「対応できている」と回答、3割強は「できていない」
- 60.4%が育児中の従業員への対応に管理職による差を「感じる」
- 管理職による対応の差、「育児支援に対する理解の差」が最多
- 育児中の従業員への支援、「柔軟な勤務時間制度」が87.4%で最多
- 制度だけでは対応しきれない支援、「子の長期休暇中の働き方」が最多
- 71.7%が制度整備に加えて「業務の属人化防止」が重要と回答
- 育児中の従業員のキャリア停滞を防ぐ配慮、半数超が「できていない」
- 65.4%がキャリア停滞を防ぐために「働き方にかかわらない公平な評価・昇進機会」が必要と回答
- 55.3%がコロナ禍と比べ「今の方が両立しやすい」と回答、「変わらない」も約3割
- 従業員の配偶者の勤務先の育児支援制度、約6割が把握
- 78.0%が育児中の従業員を支える周囲への配慮に「業務量・業務分担の見直し」が必要と回答
「男女ともに育児を担う前提」で制度を運用する企業は52.2%
自社の育児と仕事の両立についての考え方や実態を尋ねたところ、「育児は男女ともに主体的に担うことを前提に、制度を運用している」が52.2%で最多となった。次いで「男女ともに育児を担うべきだと考えているが、制度や運用は十分ではない」が24.5%、「特に明確な考え方はない」が13.8%で続き、「どちらかといえば、女性の育児負担を前提とした運用になっている」は9.4%だった。男性の育児負担を前提とした運用はなかった(n=159)。
55.3%が「周囲の従業員へ負担が偏る」を課題に挙げ最多
育児中の従業員が働き続けるうえで、自社にどのような課題があると感じるかを尋ねたところ、「周囲の従業員へ負担が偏る」が55.3%で最多となった。次いで「育児中の従業員を支えるための人員に余裕がない」が45.3%、「部署によって対応にばらつきがある」が41.5%で続いた。上位には支える側の人員や業務配分に関する課題が並んでいる(n=159)。
66.2%が育児期の課題に制度・運用で「対応できている」と回答、3割強は「できていない」
育児期の従業員が直面する課題に自社の制度や運用が十分に対応できていると思うかを尋ねたところ、「ある程度対応できている」が60.9%、「十分に対応できている」が5.3%で、合わせて66.2%が「対応できている」と回答した(n=151/育児中の従業員が働き続けるうえで課題がある企業)。
60.4%が育児中の従業員への対応に管理職による差を「感じる」
育児中の従業員への対応について、管理職による差を感じるかを尋ねたところ、「とても感じる」が16.4%、「やや感じる」が44.0%で、合わせて60.4%が差を感じると回答した(n=159)。
管理職による対応の差、「育児支援に対する理解の差」が最多
差が生じる理由として大きいと思う要因を尋ねたところ、「管理職の育児支援に対する理解に差がある」が66.7%で最多となった。次いで「ルールや判断基準が明確でなく、管理職の判断に委ねられている」「管理職向けの教育・研修が不足している」がともに43.8%で続いた。個々の管理職の意識だけでなく、判断基準や研修といった組織側の仕組みが整っていないことが、差を生む構造的な要因になっていると考えられる(n=96/管理職による差を感じる企業)。
- 管理職の育児支援に対する理解に差がある:66.7%
- ルールや判断基準が明確でなく、管理職の判断に委ねられている:43.8%
- 管理職向けの教育・研修が不足している:43.8%
- 会社の育児支援に対する方針が管理職に十分浸透していない:26%
- 管理職が人事部門などに相談できる体制が整っていない:12.5%
- その他:6.2%
- 理由はわからない:5.2%
育児中の従業員への支援、「柔軟な勤務時間制度」が87.4%で最多
育児中の従業員を支えるために現在実施しているものを尋ねたところ、「柔軟な勤務時間制度(フレックスタイム、短時間勤務、時間単位休暇など)」が87.4%で最多となった。次いで「在宅勤務・リモート勤務」が62.3%、「育児事情に応じた勤務・人事上の配慮(残業・休日勤務、転勤・配置転換など)」が54.1%で続いた。時間や場所の柔軟性といった制度面の整備が中心で、管理職の育成やキャリア支援といった運用・人の面は比較的手薄な実態となっている(n=159)。
- 柔軟な勤務時間制度(フレックスタイム、短時間勤務、時間単位休暇など):87.4%
- 在宅勤務・リモート勤務:62.3%
- 育児事情に応じた勤務・人事上の配慮(残業・休日勤務、転勤・配置転換など):54.1%
- 育児支援制度に関する情報提供・周知:27%
- 定期的な面談や相談窓口の設置:23.3%
- 応援人員の配置や業務分担の見直し:18.2%
- 管理職向けの研修:15.1%
- ベビーシッター代や保育費用などの補助:12.6%
- キャリア形成に関する支援:11.9%
- 家事代行代の補助:3.8%
- 託児所の運営:1.9%
- その他:0.6%
- 実施していることはない:5%
制度だけでは対応しきれない支援、「子の長期休暇中の働き方」が最多
育児中の従業員への支援として、現在の制度だけでは対応しきれていないと感じるものを尋ねたところ、「子の長期休暇中の働き方」が46.5%で最多となった。次いで「キャリア形成」が39.0%、「不登校への対応」が37.1%で続き、「小1の壁」も36.5%、「小4の壁」も23.3%に上。乳幼児期の就業継続だけでなく、学齢期以降も見据えた長いスパンでの支援設計が求められていることがうかがえる(n=159)。
※「小1の壁」「小4の壁」とは
「小1の壁」は、子どもの小学校入学を機に、保育園に比べて預け先の時間が短くなるなどして、仕事との両立が難しくなる問題を指す。「小4の壁」は、学童保育の利用が終了するなど放課後の過ごし方や学習面の課題が増える小学4年生前後に、同様に両立が難しくなる問題を指す。
71.7%が制度整備に加えて「業務の属人化防止」が重要と回答
育児中の従業員が働き続けるために、制度の整備に加えて重要だと思うものを尋ねたところ、「業務の属人化防止」が71.7%で最多となった。次いで「上司の理解と適切なマネジメント」が68.6%、「同僚の理解と協力」「職場の風土」がともに54.1%で続いた。制度の整備に加え、誰かが休んでも業務が回る仕組みと、それを支える上司・職場の理解が重視されていることがわかった(n=159)。
育児中の従業員のキャリア停滞を防ぐ配慮、半数超が「できていない」
育児中の従業員に対して、時間制約があってもキャリアが停滞しないような配慮ができていると思うかを尋ねたところ、「あまりできていない」が43.4%、「全くできていない」が10.7%で、合わせて54.1%が「できていない」と回答した(n=159)。
65.4%がキャリア停滞を防ぐために「働き方にかかわらない公平な評価・昇進機会」が必要と回答
キャリア停滞を防ぐために必要だと思うものを尋ねたところ、「働き方にかかわらない公平な評価・昇進機会」が65.4%で最多となった。次いで「育児中でも挑戦できる役割・業務設計」が60.4%と続いた。評価や役割設計など、働き方にかかわらずキャリア形成を支える仕組みが重視されていることがうかがえる(n=159)。
55.3%がコロナ禍と比べ「今の方が両立しやすい」と回答、「変わらない」も約3割
コロナ禍と比べて、現在の方が育児と仕事を両立しやすいと思うかを尋ねたところ、「今の方が両立しやすい」が26.4%、「どちらかといえば今の方が両立しやすい」が28.9%で、合わせて55.3%が「今の方が両立しやすい」と回答した。「変わらない」は27.0%、「どちらかといえばコロナ禍の方が両立しやすかった」「コロナ禍の方が両立しやすかった」を合わせると17.6%だった。半数超が改善を実感する一方、約2割はコロナ禍の方が両立しやすかったと感じており、働き方の変化の受け止め方は分かれている(n=159)。
<不便になったと感じること/一部抜粋>
- 出社日が増えたことで、保育園や学校からの急な連絡にも対応しづらくなりました。オンラインで完結していた会議も対面が増え、予定変更の自由度が下がったと感じている。
- 出社頻度があがり、共働きだとお迎えどうする問題がある。
- コロナ禍では週3テレワークができていたが今は週1しかできないため通勤時間の負担が大きくなった。就業時間後に子供の病院を受診しづらくなった。
- 在宅だと休憩時間に家事ができていたのができなくなった。
従業員の配偶者の勤務先の育児支援制度、約6割が把握
育児支援制度を利用する自社の従業員について、その配偶者が勤務先で利用できる育児支援制度を把握しているかを尋ねたところ、「十分に把握している」が9.4%、「一部把握している」が47.2%と、約6割が把握していることがわかった(n=159)。
78.0%が育児中の従業員を支える周囲への配慮に「業務量・業務分担の見直し」が必要と回答
育児中の従業員を支えるうえで、周囲の従業員への配慮として必要だと思うものを尋ねたところ、「業務量・業務分担の見直し」が78.0%で最多となった。次いで「周囲のサポートに対する評価・処遇への反映」が61.6%、「応援人員や代替要員の確保」「業務の標準化と情報共有」がともに55.3%で続いた。課題として最多だった「周囲の従業員へ負担が偏る」こととも関連しており、育児中の従業員本人への支援とあわせて、支える側の負担と納得感をどう設計するかが、両立支援を持続させるうえで重要な要素であることがうかがえる(n=159)。
<働き続けられる組織になるために重要なこと/一部抜粋>
- 業務の標準化として、マニュアル化や情報共有を進めて属人化をなくし、誰が休んでも現場の業務が止まらない体制を作ることが欠かせないと思う。
- 周囲への還元として、不在者をカバーした同僚の貢献を正当に評価や手当で還元し、支援側ばかりに負担感が残らない仕組みが必要だと思う。
- 特定の従業員に負担が集中しないよう、人員配置や業務分担を見直し、管理職が積極的にサポートできる体制を整えることが必要だと考える。
- 育児中の従業員だけを支援するのではなく、周囲の従業員にも配慮した業務分担や評価制度を整えることが重要だと考える。
総評
今回の調査からは、育児と仕事の両立支援において、制度の整備だけでなく、制度を現場で機能させる運用が重要になっていることがわかった。柔軟な勤務時間制度は多くの企業で実施されている一方、管理職による対応の差を感じる企業も6割に上り、育児中の従業員のキャリア形成についても半数超が「できていない」と回答している。制度を整えるだけでなく、管理職の理解や判断基準、業務を支える仕組みまで含めて整備することが重要だ。
また、周囲の従業員への負担の偏りや、管理職による対応の差といった課題も明らかとなった。育児中の従業員を支援するだけでなく、支える側の業務量や業務分担、評価にも目を向け、誰かが休んでも業務が回る仕組みを整えることが重要だ。両立支援を一部の従業員への配慮として捉えるのではなく、職場全体で支え合える環境として設計していくことが求められる。
総務には、育児と仕事の両立を個人の努力に委ねるのではなく、管理職や周囲の従業員も含めて無理なく支えられる仕組みを整える役割が求められる。業務の属人化を防ぎ、柔軟な働き方や公平な評価を支える運用まで設計することで、育児中の従業員だけでなく、誰もが安心して働き続けられる組織につながる。制度を整えるだけでなく、現場で機能する運用まで設計する視点が、これからの総務には重要になるだろう。
【調査概要】
調査機関: 自社調査
調査対象:『月刊総務』読者、「月刊総務オンライン」メルマガ登録者ほか
調査方法: Webアンケート
調査期間: 2026年8月6日〜2026年8月20日
■調査結果の引用時のお願い
※本調査内容を転載・ご利用いただく場合は、出典元の表記をお願いします。
例:「『月刊総務』の調査によると」「『月刊総務』調べ」など
※掲載されている情報は記事公開時点のものです。最新の情報と異なる場合があります。
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