「AIが書いたESを、AIが読む」時代に、人間が本当に見極めるべき採用の本質と3つのポイント
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エントリーシート(ES)は、1990年代後半に就職情報サイトが登場し、企業に何千、何万という応募が押し寄せたときに生まれた仕組みです。初めて会う学生を、短時間で、大量に、公平に比べなければなりません。その結果として、「学生時代に力を入れたこと」いわゆる「ガクチカ」のような共通の質問が広まりました。ところが、質問が共通化されれば攻略法も共通化されます。「ガクチカはこう書け」という指南書が書店に並び、就職活動は「自分を正直に伝える場」から「いかに評価されやすい形で見せるか」を競う場に変わっていきました。学生が悪いのではありません。周りが盛っているなら、正直に書けば埋もれてしまいます。脚色しなければ不利になる構造に、学生が追い込まれていったのです。
生成AIの登場が崩した「本人の経験」という最後の歯止め
それでも、一つだけ歯止めがありました。どれだけ盛っても、素材はあくまで「本人の経験」だったということです。料理にたとえれば、切り方や味付け、盛り付けは工夫できても、素材は食材そのものでなければなりません。だから、面接で深く掘り下げれば、本人らしさがにじみ出ていたのです。これが、かろうじて採用の本質を守っていました。
ところが生成AIが、この歯止めを外しました。素材が十分でなくても、全くなくても、見た目も味も整った一皿が数秒でできてしまいます。マイナビの調査では、就職活動でAIを使った学生は2026年卒で66.6%、2027年卒では8割を超えました。一方、企業側で「学生がAIを使っている実感がある」と答えたのは、2026年卒の時点で30.6%にとどまります。現場で気付いている以上に、実際の利用は先に進んでいるのです。
判断の対象が「本人」から「文章」にズレている
企業側もAIで対応し始めています。ヘイズ・ジャパンの調査では、採用にAIを使う日本企業の27.8%が書類選考や候補リストの作成に使っていました。学生がAIで応募書類を整え、企業がAIでそれをさばく。私は共著の『AI時代の採用戦略』(日本実業出版社)で、この構図を「AI vs AI」と呼んでいます。
厄介なのは、学生も企業も合理的に動いているのに、採用の本質から遠ざかっていくことです。AIが手助けした文章は整っています。構成も論理も破綻がない。しかし、整いすぎているがゆえに、どこまでが本人の思考か見えません。以前なら「文章はへたでも本人らしさがある」という手がかりがありました。今は、その鍵となる「粗さ」が消されてしまいます。文章の完成度が上がるほど、人物理解は難しくなる。この逆説の中で、採用担当者は「信じたいが、信じ切れない」まま、合否を決めなければならなくなっています。
ここで起きているのは、判断の対象が「学生本人」から「文章」にズレてしまったということです。本来見たかったのは、この学生が何を経験し、そこで何を考えたのかだったはずなのに、AI補助が広がった現在、企業は無自覚のうちに「どれだけうまく自分を整えたか」を見てしまいます。文章がうまいことと、入社後に成果を出すことは、本来別の能力です。
ではAIを締め出せばよいのかというと、そうではありません。問題はAIを使うことではなく、「何をAIに任せ、何を人間が取り戻すか」の切り分けが設計されないまま、双方が最適化を進めていることにあります。
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