近年、雇用の流動化と人材不足により、中途採用の拡大が目覚ましく、2026年5月公表のマイナビキャリアリサーチLabの調査によれば、2022年以降の年平均の中途採用実施率は40%前後で推移しており、2026年4月における中途採用実施率は45.2%、業種によっては50%を上回っている(医療・福祉・介護:56.7%、IT・通信・インターネット:59.3%)。一方、中途採用者が入社後に期待していた能力を有していなかったり、場合によっては、前職を懲戒解雇されていたことなどが発覚する場合もあるが、採用後だと解雇することも容易ではない。そのため、採用過程において応募者の経歴や信用状況を確認する、いわゆる「バックグラウンドチェック(バックリサーチ)」の重要性が高まってきており、特に、専門性の高い職種や顧客の機密情報に接する業種(コンサルティング、法律、会計、医療、金融、情報セキュリティ、その他個人情報を大量に扱う事業など)においては、採用後のリスク回避の観点から、バックグラウンドチェックが不可欠と認識されるようになってきている。そこで、今回は、バックグラウンドチェックの根拠と限界、それを踏まえた手順について解説する。
なぜバックグラウンドチェックが重要なのか?
前述の通り、人材の流動化が進む現代において、履歴書などに記載された情報や採用面接などで取得した情報のみに依拠して採用判断を行うことにはリスクが伴う。すなわち、経歴の誇張や虚偽記載、過去の職場でのトラブルや退職理由の隠蔽、資格や学歴の詐称といった問題が採用後に発覚したとしても、それが本採用後であれば解雇は労働契約法第16条により制限されている。
たとえば、経歴詐称を解雇事由として挙げている会社は多いが、常に解雇が有効となるものではなく、軽微な経歴詐称であった場合には、解雇に合理性や相当性が認められない場合もある。また、試用期間中や内定後であったとしても、常に本採用拒否や採用内定取り消しができるとは限らない。前職を精神疾患を理由とする休職期間満了により退職していたことが内定後に発覚したとしても、退職自体に虚偽はなく、かつ、当該精神疾患は寛解して就労可能な状態であった場合や当該精神疾患の原因がパワーハラスメントであった場合などには、退職の具体的な理由を申告していないことのみをもって内定取り消しとすることも難しい。また、バックグラウンドチェックの結果次第では内定を取り消すことについて同意を得ていたとしても、当該事情をもって内定取り消しが常に認められるものでもない(内定取り消しを否定した裁判例:ドリームエクスチェンジ事件 東京地方裁判所 令元.8.7 判例タイムズ1478号187頁)。
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