出張旅費の不正受給の処分はどうなる? 裁判例から読み解く懲戒解雇の有効性と普通解雇との違い
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社員が手当の不正受給などの非違行為に及び、会社が当該社員の解雇を検討する際、懲戒解雇と普通解雇のどちらを選択するかによって、解雇の有効性の判断が分かれる場合がある。会社は、懲戒解雇と普通解雇の違いについて理解した上で、その選択について慎重に判断しなければならない。そこで今回は、出張旅費の不正受給を題材とし、懲戒解雇と普通解雇の違いについて解説する。
懲戒解雇処分を有効に行うための成立要件
出張の多い社員が、自家用車を利用していたにもかかわらず、公共交通機関(新幹線および特急列車含む)を利用したものとして出張旅費の支給を受け、ガソリン代や高速道路料金との差額を着服し、その額は直近半年間で約50万円に及んだ事案が発覚した場合に、会社は懲戒解雇処分をすることができるか。
労働契約法第15条は、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質および態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とする」と規定している。
したがって、懲戒処分の一種である懲戒解雇が有効となるためには、(1)懲戒処分の根拠規定の存在、(2)懲戒事由への該当性、(3)懲戒処分の相当性(懲戒処分がその違反行為の程度に照らして均衡の取れたものであること(荒木尚志著『労働法〔第5版〕』(有斐閣刊))が必要とされている(菅野和夫・山川隆一著『労働法〔第13版〕』(弘文堂刊)、以下『労働法〔第13版〕』)。
この点、ほとんどの会社が、就業規則の懲戒解雇事由に手当の不正受給に関する規定を定めているので、懲戒解雇の要件である(1)の要件は満たしている。また、客観的事実(高速道路のETC記録など)や自認により、(2)の要件も満たすことになる。そこで、上記例では、手当の不正受給を理由とした懲戒解雇の相当性が問題となる。なお、相当性判断の一要素として、弁明の機会の付与等の手続きの適正も問題になる(『労働法〔第13版〕』)。
手当の不正受給に基づく懲戒解雇に関する裁判例では、日帰り出張旅費につき70万円を上回る額を過大請求した課長代理の職にあった者の懲戒解雇が有効とされたNTT東日本(出張旅費請求)事件(東京地方裁判所判決 平23.3.25 『労働判例』1032号)などがあるが、金額の多寡のみで判断しているものではない。
裁判において、懲戒解雇の意思表示に普通解雇の予備的追加主張はできるか?
多くの会社が退職金不支給条項を設けているなど、懲戒解雇は労働者に与える不利益の大きさからその有効性は厳格に解されている。そして、仮に裁判の場で懲戒解雇が相当性を欠き無効と判断された場合には、会社は懲戒解雇した社員を復帰させるだけではなく、懲戒解雇処分をしてから当該解雇無効の判決までの未払い賃金を支払う必要がある。これを「バックペイ」という。
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