『月刊総務』は全国の総務担当者を対象に「オンボーディングについての調査」を実施し、117名から回答を得た。
*オンボーディング:新卒入社者や中途入社者など新しく組織に加わった従業員を職場に定着させ、活躍する人材に育成する施策のこと
- 調査結果概要
「オンボーディング」を理解している総務は約4割
オンボーディングという言葉を知っているか尋ねたところ、理解している総務は約4割という結果になった(n=117)。
新卒入社者向けと比べて中途入社者向けのオンボーディングの充実度が低く、中途向けは7割以上が「充実していない」
新卒入社者向けのオンボーディング施策の充実度をどのように評価するか尋ねたところ、「とても充実している」と「やや充実している」が合わせて47.1%と、約半数が充実していると評価した(n=87/新卒採用をしている企業)。
一方、中途入社者向けのオンボーディング施策の充実度をどのように評価するか尋ねたところ、「とても充実している」と「やや充実している」が合わせて26.9%と、7割以上が充実していないと回答した(n=104/中途採用をしている企業)。
実施しているオンボーディング施策1位「入社時の研修」2位「OJT」3位「フォローアップ研修」
どんなオンボーディング施策を実施しているか尋ねたところ、「入社時の研修」が82.9%で最も多く、「OJT」が73.5%、「フォローアップ研修」が59.0%と続いた(n=117)。
「入社前研修」は新卒採用ありの企業の40.2%が実施しているのに対し、中途採用ありの企業は31.7%と、新卒と中途で差が見られた。
また、「上司など受け入れ先に対する教育」は全体の12.0%にとどまり、現場のフォローまで手が回っていない実情も明らかになった。
オンボーディングの充実が新卒・中途ともに社員の定着とパフォーマンスに効果あり
新卒入社者の定着率について尋ねたところ、オンボーディングが充実している企業は「とても高い」と「やや高い」が合わせて63.4%、充実していない企業は50.0%と、13.4ポイント差という結果になった。「とても高い」の回答も17.3ポイントの差があり、新卒入社者の定着に効果があることが伺える(n=87/新卒採用をしている企業)。
また、中途入社者の定着率について尋ねたところ、オンボーディングが充実している企業は「とても高い」と「やや高い」が合わせて78.6%、充実していない企業は56.6%と、22.0ポイント差という結果になった(n=104/中途採用をしている企業)。
新卒入社者のパフォーマンスについて尋ねたところ、オンボーディングが充実している企業は「とても高い」と「やや高い」が合わせて68.3%、充実していない企業は41.3%と、27.0ポイント差という結果になった(n=87/新卒採用をしている企業)。
また、中途入社者のパフォーマンスについて尋ねたところ、オンボーディングが充実している企業は「とても高い」と「やや高い」が合わせて92.9%、充実していない企業は63.2%と、29.7ポイント差いう結果になった(n=104/中途採用をしている企業)。
9割以上がオンボーディングに課題あり
オンボーディングに課題があるか尋ねたところ、「とてもある」と「ややある」が合わせて97.5%と、ほとんどの企業が課題を感じていることがわかった(n=117)。
オンボーディングの課題は「実施するためのスキルやノウハウがない」が約6割で最多
どんな課題があるか尋ねたところ、「実施するためのスキルやノウハウがない」が59.6%で最も多く、「何をすればよいかわからない」が39.5%、「取り組むための時間がない」が37.7%と続いた(n=117)。
<その他、オンボーディングの課題 / 一部抜粋>
- 上司との面談を制度化しているが、うまく面談ができない上司がいる
- 中途の場合、 現場OJT任せになるため、受入部門によってばらつきがある
- 社内はOJTの嗜好が強く、下支えするような研修を行うことに対しての意識が低くノウハウもない
- 近年増えてきた中途入社社員は、短期の詰め込み教育になってしまい、会社理解という点では問題だと感じています
<オンボーディングで独自の取り組みや、成果を感じられた取り組み / 一部抜粋>
- メンター活動。新入社員の定着だけでなく、メンターの資質向上に繋がっていると感じる
- ビジョン・ミッションを一方的に伝えるのではなく、一緒に考えるワークショップ。参加型に変更することで「つまらなさ」「一方的な進行」を脱却できて、効果を感じている
- 誰もが経験する壁や抵抗感を払拭するための日常的な面談を、入社直後から3か月間実施すると、退職者がゼロになった
- 新入社員に過去の話をする時間よりもこれから仲間となるみんなとどんな会社を創っていきたいか、未来志向の話をする時間を設けている
約6割がオンラインを活用してオンボーディングを実施。メリットは移動時間の削減、デメリットはコミュニケーションの取りづらさ
オンボーディングをオンラインで実施しているか尋ねたところ、「全てオンラインで実施している」と「一部オンラインで実施している」が合わせて60.6%と、約6割がオンラインを活用していることがわかった(n=117)。
注力しているのは「業務に必要な知識やスキルを身につけてもらうこと」「コミュニケーションの取りやすい環境を整えること」など
オンボーディングで注力していることについて尋ねたところ、「業務に必要な知識やスキルを身につけてもらうこと」が59.0%、「コミュニケーションの取りやすい環境を整えること」が58.1%という結果になった(n=117)。
総評
今回の調査では、オンボーディングの充実度が社員の定着率やパフォーマンスに影響していることが顕著になった。
また、オンボーディングの内容としては、全体の73.5%が「OJT」を実施している中で、「上司など受け入れ先に対する教育」は12.0%しか実施していないことがわかった。オンボーディングにおける課題で、上司の面談スキルやOJTの受け入れ体制の不足という声もあったが、総務側でも現場任せにしすぎていないか、必要なサポートができているかを見直す必要があるだろう。
【調査概要】
調査名称:オンボーディングについての調査
調査機関:自社調査
調査対象:『月刊総務』読者、「月刊総務オンライン」メルマガ登録者ほか
調査方法: Webアンケート
調査期間:2022年9月8日〜2022年9月21日
有効回答数:117件
■調査結果の引用時のお願い
※本調査内容を転載・ご利用いただく場合は、出典元の表記をお願いします。
例:「『月刊総務』の調査によると」「『月刊総務』調べ」など
※掲載されている情報は記事公開時点のものです。最新の情報と異なる場合があります。
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