月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】社員と家族の生の声を聞くために「社員の子供だけの会社」を設立

2021-03-12 10:17

2001年設立、2006年に東証マザーズ、2020年に東証1部に上場を果たしたインターネット広告の株式会社アドウェイズ。2014年には全社の指針となるスローガン「なにこれ すげー こんなのはじめて」を策定。その価値観に沿って生まれた施策の一つが、社員の子供だけで構成された子会社「ADWAYS BABY」(アドウェイズベイビー)」だという。

取材・文◎石田ゆう子

社員を愛する会社だから「愛社員」課を設置

 国内最大級のアフィリエイトサービスや、スマ―トフォン向け広告配信サービス、全自動マーケティングプラットフォームなどを手掛ける同社。最近ではARやVRを活用した体験型広告に力を入れるなど、ますます活躍の場を広げている。組織も急拡大する中で、社員間コミュニケーション機会の減少や、社内の一体感の醸成が課題に。「ただ、社員に愛社精神を持ってもらう前に、まず、会社が社員を愛する会社だと示そう、と。そうして生まれたのが、社員を愛する課、愛社員課です」と、人事グループ 人事推進室 愛社員課チーフの中西陽香さんは話す。
 愛社員課は現在2人。ほかの人事業務と兼務しながら、「1、家族を大切にする 2、健康を守る 3、仲間意識を強く持つ」の3つを軸に、制度やイベントの企画、実施に取り組んでいる。
 中でも注目は、社員の子供だけで構成された子会社「株式会社アドウェイズベイビー」の運営だ。
 アドウェイズベイビーは、2014年11月5日(イイコの日)に設立されたれっきとした法人組織。役員になれるのは、2歳以上の未就学児のみ。完全年功序列となっており、基本的には、親である社員が手を挙げて就任する。「今の役員は4人。私の長男(6歳)が社長を、次男(4歳)が、副社長を務めています。本人にも、自分は社長だとの自覚はあるようで、家でも、社長だからできるよ、とやってくれることもあって助かっています(笑)」と、愛社員課の矢ケ崎菜摘さんは笑う。

"なにこれ"を求めた結果、子供だけの会社が誕生

 いったい、アドウェイズベイビーとは何なのか。「元々の目的は、トップを交えての定期的なヒアリングの場を作ることでした」(中西さん)。
 当時、社員の平均年齢が29.6歳となり、結婚、出産などのライフイベントを迎える人が増えていた。ちょうど働き方が変わってくるタイミングだった。そこで、トップと人事部のメンバーが、社員150人に「何か困っていることはないか」とヒアリングしたところ、その答えは実にさまざまだった。
 パパ・ママ社員とひとくちにいっても、親が近所に住んでいる人と、夫婦だけで住んでいる人とでは、抱えている問題が違う。画一的な制度では、すべてを解決することはできない。「それなら、社員と家族に定期的にヒアリングする場を設けて、本当に求められる制度を作っていこう。当社らしく"なにこれ"な形がいい。じゃあ子供だけの会社を作って、年に1回、役員会でヒアリングをしよう、となったわけです」(中西さん)。
 子供がいない社員からも、「アドウェイズらしくていいね」と好評で、採用時にも斬新な取り組みとして興味を持ってもらえているという。

役員会は、「愛社員」精神を示す象徴的な場

 役員会には、「子ども役員」とその家族を中心に、事前に声掛けをして、了承した社員と家族が参加する。
 流れとしては、まず、会社が新たに作った制度を、子ども役員に「お父さんとお母さんが快適に仕事ができるように、この制度をやっていこうと思うんだけど、どうかな?」と、聞いて、「さんせい(賛成)」といってもらう。本当に内容は理解できずとも「さんせい」といえればいい。「さんせい」といえないうちは役員になれない。
 続いて、社員と家族へのヒアリング会を行う。そこで上がった案件に対して新たな制度を作って決議されるのは、次の役員会となる。
 これまでに、確定拠出年金制度などが生まれたが、新たな制度を作るより、今ある制度を修正したり、個別に対応していることの方が多いという。たとえば、希望の多かった時短勤務、中抜け勤務は、すぐに「やってもらっていいよね」となり、現場のマネジャーに伝えて、柔軟に働き方を変えてもらった。

「ファミリーデー」はオンライン開催でも大好評

 もう1つ、役員会には、「ファミリーデー」を同時に開催するという側面がある。前々回のファミリーデーは、「ワクワクすげー体験」をテーマに、Vtuber体験や、プログラミング体験会などのコンテンツを用意。10家族、40人ほどが参加し、盛り上がった。
 2020年度は、コロナ禍で初のオンライン開催となったが、「中止は考えませんでした。なんとかしてやるぞ、と。ヒアリング会はできませんでしたが、ファミリーデーだけは行いました」(矢ケ崎さん)。
 ターゲットの対象年齢を分けて、2日間にわたって開催。1日目は2歳から5歳向けに、パン教室と英会話体験を。2日目は6歳から10歳向けにデザイン体験を行い、オリジナルデザインのLINEスタンプやマグカップを製作。あらかじめ、材料を各家庭に配送して実施した。「オンラインで難しかったのは、子供の反応がつかみにくかったこと。良かったのは、地方拠点の人にも参加してもらえたこと。参加した社員から、『うちの子が将来はアドウェイズに入るといっていたよ』といってもらえたときは、涙が出そうになりました」(中西さん)。
 また、コロナ禍で、子供も大人もストレスフルな状況になっていたときに、少しでもほっとできる時間を提供できたことはよかった。今後は、リアルとオンラインでのハイブリッド型の開催も検討していく。
 愛社員課では、ほかにも「岡村屋」という、トップ自らがカレーなどをずんどう鍋で振る舞うイベントも実施してきた。現在は在宅勤務になったことから、それに代わる取り組みをやりたいと考えている。また、社員の家族の誕生日には、オリジナルパッケージの5キロのお米を贈る制度も実施しており、特に子供がいる社員から好評だ。
 今後の課題は、出社している人と、リモートの人とで不公平感の出ない制度や施策を考えること。Afterコロナでまた働き方も変わるだろう。同社らしい、新たな"なにこれ"な取り組みに期待したい。

ph_adways01.jpg


【会社DATA】
株式会社アドウェイズ
本社:東京都新宿区西新宿8-17-1 住友不動産新宿グランドタワー38F
設立:2001年2月28日
代表者:代表取締役社長 岡村陽久
資本金:16億500万円(2020年3月末現在)
従業員数:915人(グループ全体/臨時雇用者含む)(2020年3月末日現在)


株式会社アドウェイズ
人事グループ 人事推進室
愛社員課(人事企画ユニット兼務)チーフ 中西陽香さん(左)
愛社員課(人事企画ユニット兼務) 矢ケ崎菜摘さん(右)
なかにし・はるか●2014年新卒入社。愛社員課の業務のほか、評価査定などの新しい制度設計も担当。オフの楽しみは、愛犬と遊ぶこと。「在宅勤務になったタイミングで、今なら飼えるかなと、飼い始めたばかりのトイプードルに癒やされています」。
やがさき・なつみ●2018年中途入社。契約社員で入社し、半年後に正社員に。現在、ダイバーシティ推進や、タレントマネジメントなども担当している。やんちゃ盛りの2人の男の子のお母さんだけに、「休日は、もっぱら子供たちと遊ぶ時間です」。