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1897年創業の株式会社明電舎。創業120周年を迎えた昨年、技術展の開催や、イメージソングの制作、体験学習や海外ボランティアの実施など、ステークホルダーへの感謝の気持ちを込めてさまざまな記念事業を行った。同プロジェクトをけん引した中心メンバーに、周年記念事業のねらいや進め方のポイント、成果などをうかがった。
取材・文◎石田ゆう子
誰に向けて、何をするか。分科会ごとに事業を展開
同社にとって2017年は、創業120周年であり、設立100周年にもあたる節目の年。社内外に同社の存在意義をアピールするチャンスイヤーとして、社を挙げて記念事業に取り組むことになった。開催期間は2017年の1年間。2015年11月にはプロジェクトを発足し、人事発令。プロジェクトリーダーは副社長。プロジェクトメンバーは30人弱で、基本的には通常業務との兼任だ。
まずは記念事業のコンセプトを決定し、意思統一をはかった上で、技術展/海外ボランティア/プロモーション/体験学習/一体感醸成とテーマ別の分科会を設けて、記念事業を展開していった。
「分科会は、お客さまや取引先向け、地域貢献、社内向けと、ステークホルダー別にターゲットを定めて作りました。この分科会の実務を取りまとめるメンバーには事務局にも参加してもらい、一緒に全体を見ながら進めてきました」と、事務局を務めた経営企画グループ 管理部 管理課長の太田亮人さんは話す。
実は、プロジェクトのキックオフは、2015年3月とさらにさかのぼる。まずはメンバーでアイデアを出し合い、予算や実現性、効果などを踏まえて検討。2015年9月、役員に報告し、素案が固まった。ここからより幅広い発想を得るために、広告代理店にも入ってもらった。
「この段階で、すでにコンセプトは定まっていました。すべてのステークホルダーに感謝の気持ちを伝える。当社の伝統と新しい価値をプロモーションする。社員の輪を作る、と。それをどう表現するかというところは、広告代理店にも入ってもらって、一緒にコンセプトワードを決めていきました。このコンセプトが、最後までぶれずにいけたのはよかったと思います」と振り返るのは、プロモーションの分科会を担当した、営業企画グループ 宣伝課長の村松尚子さん。事業を実現する過程においては、反対意見や迷いも生じる。そうしたときにはコンセプトに立ち返ることでぶれずに進めることができたという。
実際に行った事業としては、記念ロゴの作成や、120周年記念特設WEBサイトの公開。ここでは谷川俊太郎さんによる記念詩や、歴史コンテンツで120年の歩みや想いを伝えた。また、歌手May J.さんを起用してイメージソングも制作。これは従業員から歌詞を募集し、一業所周辺の中学校での理科体験学習、タイでの地域貢献活動も実施。中でもいちばん力を注いだのが、東京、名古屋、大阪で開催した技術展だった。
技術展は、社内外へのいいアピールの場に
「役員も技術も営業も開発も、グループを挙げて総動員で取り組みました」と話すのは、技術展の分科会を担当した、生産統括本部 環境戦略部長の笹本紋子さん。当時、研究開発部門に属しており、「技術展をやるなら開発の人を」と白羽の矢が立った。
「弊社の製品は一般的になじみのないものが多く、お客さまに関心を持っていただくための見せ方やプレゼン方法などに苦心しました」と笹本さん。宣伝課や営業に相談しながら準備を進めたという。
「実際に製品の説体感醸成につなげた。ほか、国内事明員をした技術や開発の担当者も、役員のアドバイスを受けながら、わかりやすい説明を追及しました。通常業務と同時に進めていたのでたいへんでしたが、お客さまと直接コミュニケーションを取ることが少ない技術や開発の担当者にとって、お客さまの生の声を聞かせていただくすばらしい機会になったようです。30年ぶりのプライベート技術展だったので、どうなるか不安でしたが、目標をはるかに超えるお客さまにご来場いただけましたし、社内外ともに評価を得られた成果の大きいイベントとなりました」(笹本さん)。
つながり力と、自社への誇りを持てたことも成果
一体感醸成の分科会を担当した人事・総務グループ 人事企画部 労務企画課長の野口英明さんは、「今回は、従業員と家族、OB、海外も含めての一体感醸成がテーマだったのですが、最初に担当役員からその思いを伝えて、スタッフと意識の共有をはかれたことがよかったですね」と振り返る。
通常の社内イベントにも120周年の冠を付けて、より多くの人に参加してもらえるような企画、運営に努めた。結果、1年を通してのイベントの集客数は、延べ1万人を超えた。
「アンケートでは、ご家族からの喜びの声もあり、これが非常にスタッフのモチベーションになりました。なによりの成果は、明電グループとして一体感醸成がはかれたこと。これに尽きます」(野口さん)。
同社は社員が取るべき行動の精神を5つの言葉で示しているが、特に重視しているのが「つながろう」という言葉。今回も広告代理店や、お客さま、地域、従業員とつながることでここまでやることができた。「社員一人ひとりが自身の仕事の意味をあらためて考える機会となり、自社への誇りを持てたことも記念事業の成果でした」(村松さん)。
周年記念事業は作る過程すべてが財産
社内外から「やってよかった」との評価を集めた周年記念事業。成功のポイントはいろいろある。たとえば、取り組む前には、他社の記念事業について聞きに行った。分科会をまとめる4人が常に連携し、コンセプトからぶれないようにした。
「また、周年特設WEBサイトでは、社外よりもむしろ社内に対して情報を発信。一方で、従業員からはアンケートを取ったり、イメージソングの歌詞を募集したり。双方向でやることも大切だと思います」(野口さん)。また、これをすべき、という正解はないだけに、丁寧に取り組むしかないとも。
「社内の人脈も、社外のリソースも生かす。いろいろな意見に耳を傾けて、粘り強く企画を練り上げる。事務局はその仕掛け作りと、盛り上げをする。周年記念事業はやることだけが目的ではなく、作っていく過程が大事。ここでできたつながりを、またほかの仕事に生かせると思っています」(太田さん)。
【会社DATA】株式会社明電舎
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