月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】
技術開発と総務が一緒になって「スクラム」で業務を改善

2017-07-18 10:18

現在、ソーシャルメディアとシェアリングエコノミー領域に注力し、今年2月には新オフィスに移転も果たした株式会社ガイアックス。成長し続ける同社を支える総務もまた、常に課題を改善し、新たなチャレンジをし続けている。今回は、技術開発のメンバーとともに取り組んでいる、「スクラム」での業務改善についてうかがった。

取材・文◎石田ゆう子

ソフトウエア開発の手法で業務を見える化し、改善

 「人と人をつなぐ」をミッションに、インターネット領域で次々と新たな事業を生み出してきた同社。自分の仕事は自分で作り出す社風で、プロジェクトなども、やりたい人が手を挙げて行う。そうした中、総務発信でイントラネットのリニューアルに取り組むことになったという。
 「元々、イントラネットはあったのですが、そういった社風ゆえに、ほかにもたくさんの情報ツールや窓口ができてしまった。それを集約し、ここに行けば、こんなツールがあるとわかる住所録のようなものが作りたい。これが、イントラネットリニューアルプロジェクトのきっかけでした」と管理本部 総務部マネージャーの梅津祐里さんは話す。
 ちょうどその頃、同社ではソフトウエア開発のアジャイル開発手法の一つである、「スクラム」が普及し始めていた。その手法を総務でも取り入れてみたいと、認定スクラムマスター(CSM)の認定を受けた、技術開発部の長南理恵さんに参加してもらうことになった。
 「スクラムというのは、チームのコミュニケーションを重視した手法です。また、少しずつ進めて、振り返り、改善点があれば、それを反映させて、と、小さいサイクルを回していくのも特徴です。エンジニアでなくても使えるのではないかと、非開発チームでもやってみることになりました」と長南さんは説明する。
 今回のスクラムでは、イントラネットのリニューアルはたいへんな業務となるため、まずは総務の通常業務を見える化し、改善、効率化をはかってから、リニューアルと同時進行できるようにしよう、との方向で進めていった。
 

タスクの管理には「かんばん」を導入

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 最初に行ったのは、スクラム開発で用いられる「かんばん」を導入すること。かんばんとは、タスクを書いた付箋を張り出して、チームみんなで進捗を共有するタスク管理の方法。「やることに対して、今、どのフェーズまで進んでいるのか。チームで仕事の進行を見える化する進行表のようなものです」(長南さん)。総務のかんばんは、当初、担当者ごとに付箋の色を分けて、「今日やること」「保留中」「完了」の進捗状況に応じて張っていく形にした。総務チームのスクラムは、2週間に1回の確認ミーティングでそれを振り返り、課題があれば改善しながら進めていった。「かんばんによって工数管理ができるようになりました。特に問い合わせの付箋を付けてみて、こんなにも件数が多いことを認識。この件数も、イントラネットを充実させることで少なくできるのではないかと一つの目標になりました」(梅津さん)。
 一見、アナログ的にも思えるかんばんだが、付箋に書くことで、「そういえばこういうこともあったな」とひも付くタスクに気付くことも多いという。また、ウェブのツールだと見なくなってしまうこともあるが、かんばんなら常に目に見える。ただ、課題となったのは、担当によっては短いスパンの仕事が多く、付箋の数が膨大となってしまうこと。そこは、細かいタスクは付箋にしないなど、個々に合わせた記載方法に変えていった。さらに、他社のかんばんなども見学に行き、より使いやすいようにアップデート。現在は、メンバーの予定、タスク、連絡事項など、知りたい情報が全部集約された、総務チームオリジナルのかんばんになっている。
 

共通認識が持てる言葉で他部門との協働も円滑に

 イントラネットのリニューアル自体は長期スパンで考えており、2年目に突入。現在、総務関連のものから移行中だ。技術開発と総務という部門を超えたチームで進めているわけだが、気を付けているのは、プロジェクトのために本質の仕事が遅れないようにすること。「そのために、次回の確認ミーティングまでのタスクの計画で無理をしない。低めに設定をして成果を味わうようにしています」(梅津さん)。「開発としては、専門用語は使わずに共通認識をそろえるようにしています。たとえば、イントラネット完全リニューアルは、チョモランマ。その前段階、総務のイントラネット完全移行は、富士山を登り切るイメージだね、と」(長南さん)。これはプロジェクトのゴールの認識が、全員バラバラにあった状況を合わせるためでもあった。「まずは富士山。今、何合目くらいまで来たよね、と共通認識が持てるようになりました」(梅津さん)。 
 

今後はリモートワークでのスクラムの取り組みも

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 今後、取り組んでいきたいこととしては、リモートワークへの対応がある。リモートワークは会社として推奨しているが、部署ごとの裁量に任されている。「総務は会社にいないと仕事ができないと思われているのを覆したい。週に1回、1人ずつ交代でやってみようと考えています。
 そうすると、かんばんを見ることができない。それをどうするかが課題です」(梅津さん)。方法としては電子化や、かんばんを写真に撮って、それを見ながらスカイプでリモートの朝会をするといったアイデアも出ている。
 最後にあらためて、スクラムやかんばんを実践してよかったことをうかがった。「以前は、お互い何をやっているのかがあまりよくわかっておらず、忙しいのに仕事をお願いしてしまうこともありました。頼んだ方はレスポンスが遅いと思うし、頼まれた方は今日忙しいのにと、お互いにストレスになっていました。それがかんばんによって改善された。今日のタスク量はもちろん、昨日こんなにがんばってくれたんだ、ということも見える化できたのはすごくよかったです」(梅津さん)。「総務とのスクラムがきっかけとなり、やっていなかった開発チームも取り組むようになったり、ほかの非開発チームからも相談を受けるようになりました。他社から情報交換を持ちかけられることも増えています」(長南さん)。同社としても知見の共有には積極的で、ブログなどで取り組みについて公開している。ぜひ参考にしたい。
 
※『月刊総務』2017年8月号P40-41より
 

【会社DATA】

株式会社ガイアックス
本社:東京都千代田区平河町2-5-3Nagatacho GRID
設立:1999年3月5日
代表者:代表執行役社長 上田祐司
資本金:1億円
従業員数:174人(2016年12月現在)

株式会社ガイアックス
管理本部 総務部マネージャー 梅津祐里さん(右)
技術開発部 長南理恵さん(左)
うめつゆり●2008年中途入社。これまでに採用、労務、総務などを担当。同社初の育休取得者でもあり、その後のロールモデルに。現在、7歳、4歳、2歳の双子の子育て中。「オフは家族とキャンプをしたり、海に行ったり。アウトドアが大好きです」。
ちょうなんりえ●2013年新卒入社。開発、営業、新規事業企画などを経て現職。「体を動かすことと、食べることが好き。最近は時間が取れないのですがフルマラソンやズンバダンスなど。“ 走って踊れるスクラムマスター”がキャッチフレーズです」。