月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】業務を洗い出し、不要業務を廃止。業務DXの実践で、生産性向上へ

2020-04-10 09:30

JBCCホールディングス株式会社を純粋持株会社とするIT企業グループ(JBグループ)へシェアードサービスを提供しているC&Cビジネスサービス株式会社。生産性の向上に取り組む中で、業務DXを実践。ポイントは、最初の難関といわれる"業務の棚卸し"を社員の負担にしないことだったという。

取材・文◎石田ゆう子

業務プロセスの分析も一つに絞って負担なく

 人事・総務、経理・財務、情報システム、業務サービス(業務支援、業務管理)などを、JBグループの事業会社にシェアードサービスで提供している同社。「業務を集約し、効率化をはかることは設立時からの使命でした」と話すのは、取締役上級執行役員人事担当の小野勝さん。それが、昨今の働き方改革によって加速。トップから、「業務の棚卸しをして、定型、非定型の業務を洗い出し、その中から何をどうできるかを考えよう」との指示があり、2017年、業務DXを含めた生産性向上のミッションが走り出した。
 「RPAやチャットボット(AI)は、あくまでもツールです。まずは、業務棚卸表の作成から始めました」
 業務棚卸表のポイントは、業務を大分類、中分類、小分類に分けて、ざっくり書き出してもらうこと。「ここに時間をかけると嫌になってしまいますから。やっていることを、そのままバーッと書いてくださいとお願いしました」。
 その中から、業務量の多いものを一つ選んでプロセスを分析。このとき、何を元にインプットし、何をアウトプットしているのか、といった「イン・アウト表」を書いてもらった。
 そこから「実は必要なかった」業務や工程も見えてきたので、なくしていいものは廃止。次に、定型業務の中から、自動化可能なプロセスを抽出してRPA化し、非定型業務の中から、ボリュームの大きかった問い合わせ業務をチャットボット化していった。

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RPAは実務担当者が作ることがポイント

 RPAは導入前にフローを見直し、分岐を少なくすることも重要だった。
 実例でいうと、同社は毎月、人事が、通勤費システムから出てきた明細を見て、その月の対象者で通勤経路が変わった社員をピックアップして、「通勤費が変わりました」とメールに添付して送っていた。これを、対象者全員に自動配信するようにした。
 ピックアップする作業は廃止。しかも、メールを送る、という作業は、RPAで部品化したので、他の業務にも再利用可能になった。
 「この発想は、業務に精通している担当者だから出てくるもの。経理財務部門などは、部門内で勉強会を行ったので、多くの人がRPAを作れる。実務担当者が作っているのもポイントです」
 ほか、基幹システムに社員情報を登録する作業は、これまで社員本人が作ったエクセルのデータを、人事担当がコピー&ペーストしていた。それをRPAで完全自動化した。
 現状、見えてきた課題は、RPAに慣れて作る人と、わからないから作らないという人の差が出てきたこと。いかに全社に浸透させていくか。これからのテーマの一つだ。

AIチャットボットは答えが出やすい選択式に

 問い合わせチャットボットは、人事総務と、経理財務で導入した。事前に必要となる質問と回答のデータを蓄積するに当たっては、それぞれが異なるやり方をした。
 人事総務は、問い合わせDBを作った。これまでは個人宛ての電話やメールでの対応だったため、保留にされることが、社員の満足度の低下にもつながっていた。DBは全員が見るので、答えが保留になっていれば誰かが気付く。最初のうちは問い合わせメールの返信に「次回からはこちらに」とDBのURLを末尾に加えて周知徹底。このDBにたまったものをベースにして、チャットボット化した。
 経理財務は、問い合わせチャットを作り、当番制でタブレット端末から回答。そこでログをためた。「チャットボットで重要なのは、答えが出やすいようにすること。答えが出ないと社員に使ってもらえない。フリーワードからではなく、選択式にすると答えに行き着きやすくなります」。
 経理財務では、科目、社外支払い、個人精算、というような項目を作って、選んでもらうようにした。経費精算ワークフローにも、チャットボットのキャラクターがいて、「これなんだっけ?」となったら、チャットボットに飛べるようリンクを張った。この利便性が功を奏し、利用頻度は上がっている。

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業務DXの進捗状況は月1回マネジャー会議で確認

 情報システム部門から作り方は教わったが、チャットボットの質問回答表を作ったのは、担当部門。それを情報システム部門に上げて、プレリリース。操作性や、回答速度に問題ないことを確認したのち、ブラッシュアップして、本リリースした。「全くやったことのない人たちが、およそ3か月でここまでできたのは大きい。今後の課題は、未回答数を減らしていくことです」。
 特に悩ましいのが類義語の対応だ。現在、答えにたどり着かなかった場合は、問い合わせDBに飛べるようになっているが、その前に、「解決しなかったのはどんなことでしたか?」とのアンケートに記入してもらうようになっている。それらを反映し、月に1回、アップデートしているという。
 また、AIの機能を活用することで、一例だが、最初は、「詳細は就業規則に載っています」までしか案内できなかったものが、「就業規則の第何章にあると思います」まで答えられるようになった。この先が楽しみだ。
 2018年から本格的に実践してきた同社の業務DX。その取り組みについては、月1回、マネジャー会議で各部門がどうやっているのか、進捗状況を報告してもらっている。工数の増減も見える化したので、工数が跳ね上がっている箇所があれば、「次はここをやろう」などの話もしている。
 2019年度は年間1万440時間の削減目標に対して、 1万1,160時間と106.9パーセントで2年連続目標を達成。
 「これだけ削減できれば、新しいこともできます。生産性を上げて、付加価値を作る時間をどれだけ持てるか。会社として目指しているのは、バリュースタッフです。事業会社に価値ある提案をしていく。そういう会社になれるようにがんばります」


【会社DATA】

C&Cビジネスサービス株式会社
本社:神奈川県川崎市幸区堀川町580 ソリッドスクエア西館17F
設立:2002年4月1日
代表者:代表取締役社長 高橋保時
資本金:1億円
従業員数:105人(2019年4月1日現在 出向社員、嘱託社員含む)
https://www.ccbs.co.jp/


C&Cビジネスサービス株式会社
取締役上級執行役員 人事担当
小野 勝さん
おの・まさる●1985年中途入社。以来、人事総務領域一筋。新入社員を見続けてきたため、その成長を見られることが喜び。社内で随一の社員の顔と名前が一致している取締役でもある。趣味は、60、70年代のロックを聴くこと。「中古CD屋で探していた一枚を見つけたときがいちばん楽しいです」