月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】会社と組合が理念の下に一致団結! 有休取得率100パーセントを継続

2019-10-25 14:30

1960年設立。四輪車や二輪車用シート、自動車内装品を世界14か国に提供するグローバルな部品メーカー、テイ・エス テック株式会社。同社は、企業理念「人材重視」「喜ばれる企業」の実践に向けて、会社と組合が一体となって有休取得を促進。有休繰り越し分の取得率100パーセントを20年以上継続している。

取材・文◎石田ゆう子

「有休」の本質について議論することからスタート

 前身は本田技研工業(以下、ホンダ)の作業服メーカーだった同社。その縫製技術を買われて二輪車用シートの生産事業を開始しておよそ60年。現在、世界14か国のグローバルネットワークを生かし、ホンダ向けの四輪車用シートや内装品、ヤマハ、スズキ、カワサキ、ハーレーダビッドソン向けの二輪車シートなど、高品質な製品を提供し続けている。
 そんな同社が大切にしているのが、TSフィロソフィー。「人材重視」「喜ばれる企業」を企業理念として掲げ、現在の働き方改革に先駆けて、働く社員をサポートする環境作りを推進。そうした中、20年以上も前から取り組んできたのが、有休取得促進活動だった。
 「年間総労働時間1800時間台を実現しようとの世の中の流れを受けて、労使で話し合いを始めたのがきっかけです。メリハリのある働き方を考える上で、有休というのは社員の権利であり、それを取らないのはおかしい、との声が上がり、労使で有休について議論を重ねてきました」と、人事部 労政課 課長の恩田英逸さんは話す。
 会社も、社員に休んでもらい、リフレッシュしてもらいたいとの思いは当然ある。業務調整や取得状況の確認など、試行錯誤しながら推進したところ、業務が滞るわけでもない。逆にリフレッシュしてもらえれば、仕事で良いパフォーマンスを発揮してもらえる。
 結果的にウィンウィンだと、労使の思いが一致した。そこから有休取得促進に取り組み続けた結果、1997年度以降、組合員の有休繰り越し分の取得率100パーセントを達成し続けている。

有休の残日数や取得予定はシステムで見える化

 こうした人事制度そのものを労働組合と一緒に作り込んでいくのは労政課の役割。実際の運用を担うのは人事課だ。「有休取得の取り組みであれば、日々のマネジメントは各部門のマネジャーがしますが、今、誰がどういう取得状況にあるのかなど、全体の状況を把握できる勤怠管理システムの導入をはじめとする環境整備は、われわれ、人事課がやっています」と、人事部 人事課 課長の高橋壮宜さんは話す。
 同システムでは、誰が、何日の有休を持っているのか。昨年度発生した分が残り何日で、今期になって発生した分が何日か、という内訳がわかるようになっている。また、社員それぞれの有休取得予定などのスケジュールも見える化されている。これらを参考に現場ではマネジメントをする。
 ここで重要なのは、有休の取得が月末や期末に集中しないようにすることだ。「できるだけ有休が重ならないよう、マネジャーが配慮する。そのためには、まめな情報共有、コミュニケーションが大事になってきますが、そこは必然的にやるようになってきたのだと思います」(高橋さん)。
 当然、休むためには、社員も自ら「仕事の調整をしておこう」「周りのメンバーと整合しておこう」と動くようになる。結果、業務の効率化も自然となされてきた。

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会社と組合が連携して、社員の有休取得を後押し

 一方、組合は、社員に対して毎年、「今期の有休取得計画をきちんと立てましょう」「最低でも繰り越し分は取り切りましょう」と働き掛け続けてきた。事業所ごとに運用は若干異なるが、具体的には、期初に組合員全員が「この月は何日有休を取得する」という計画表を提出。もちろん、業務の都合で計画通りに取れないときもあるので、上期が終わったところで見直して、再度計画を出し直す。また、組合も取得状況は常に管理しているので、なかなか取得できていない人がいたら、「この人の有休取得が遅れているようです」とマネジャーに伝える。すると、「じゃあ、取得を促しますね」とマネジャーも動く。
 この連携の良さは、職制懇談会や、定例労使協議会など、組合と会社の交流の場が、かなり多く設けられているからこそ。お互いを理解し合う中で、「有休は取得するのが当たり前」との風土が自然と醸成されてきた。今では社員自ら業務を調整し、計画的に有休を取得。新入社員であっても、最初に「有休というのは法的にも取るべきもの」という教育がなされ、先輩たちからも「休んでいいんだよ」という声掛けもあって、気後れすることなく取得している。

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有休の半休制度も導入。一層働きやすい環境に

 2012年からは、半日単位での有休取得制度も導入。これも組合からの声で実現したものだが、実は、要望が上がった初年度は、「製造ラインなどは仕事が回らないのでは」との意見もあり導入できなかった。しかし、そのあと、「休み方」(働き方)についてあらためて労使で議論を重ね、「結果的に効率アップに寄与していくのだから」と段階的に導入を拡大。現在、年間6日分を半休として利用可能にしている。「結局、1日でも半日でも、取りたいときに取るのが有休。それを、管理職も当然マネジメントはしますが、取る人たちも『今日は半休だから、ちゃんと仕事を終わらせよう』とぞれぞれの仕事を効率的に進めるようになったので、積極的に活用されているのだと思います」(恩田さん)。
 ここまで高い有休取得率を継続できているのは、会社と組合が、企業理念の「人材重視」「喜ばれる企業」の実践という、同じところを目指しているからだろう。「喜ばれる」というところでは、社員もステークホルダー。家族も含めて社員に喜んでもらうということは、会社としても組合としても目指すところ。常に一緒の方向を向いている。立場は違えども、同じところを目指して進んでいる。これは何よりも大きい。


【会社DATA】
テイ・エス テック株式会社
本社:埼玉県朝霞市栄町3-7-27
設立:1960年12月5日
代表者:代表取締役社長 保田真成
資本金:47億円
従業員数:連結 1万6,859人 単独 1,716人(2019年3月31日現在)

https://www.tstech.co.jp/


テイ・エス テック株式会社
人事部
労政課 課長 恩田英逸さん(左)
人事課 課長 高橋壮宜さん(右)
おんだえいいつ●1991年入社。埼玉工場にて資材、生産管理領域で十数年のキャリアを重ねたのち、本社の総務部、人事部に異動となる。休日には、「旅行に行ったり、おいしいものを食べに行って、リフレッシュしています」。
たかはしもりき●2001年入社。2002年人事部に配属。アメリカ駐在、総務部も経験。キャリアのほとんどが人事領域。オフは、「小学校6年の息子を連れて遊びに出掛けたりしますが、基本は家でのんびり過ごしたい派です」。