月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】子育てと就業の両立を支援する、「子ども同伴勤務制度」を導入

2020-01-10 11:15

1998年創業のハウスメーカー、タマホーム株式会社。同社は「すべては"Happy Life"のために"Happy Home"を提供する」とのミッションステートメントの下、社員の多様な働き方の実現に取り組んでいる。2018年4月に導入した、子供を職場に同伴して勤務することを認める「子ども同伴勤務制度」についてお話をうかがった。

取材・文◎石田ゆう子

いざというときに子供や孫を職場に同伴できる制度

 高品質で適正価格な注文住宅の供給を主力事業とする同社。"Happy Home"をお客さまに提供するためには、社員も幸せでなくては、と、多様な働き方を選択できる制度や、風土作りを進めている。そうした人事企画を担っているのが人づくり部。「いわゆる人事部です。人材がいちばん大事だという経営の思いもあってこうした名称になっています」と、人づくり部課長代理事務センター課長代理の梶原元紀さんは話す。
 「子ども同伴勤務制度」は、2017年12月から10か所の支店で試験運用を開始。その結果を踏まえ、2018年4月より、本社を含めた全拠点245か所で本格導入した。対象は、満二歳(育児休業終了)から、小学校卒業までの子または孫を持つ正社員。利用条件は、2つだけ。1、子供が認可保育園に入れずに「待機児童」となってしまった場合や、子供の休暇などの際に預け先を確保できないなどの緊急時。2、事前に所属長に許可を得ること。同伴時間や利用回数に制限はない。

きっかけは社員の声と勤続を願う経営の思い

 この制度が作られたきっかけは、社員の声からだった。同社が新卒採用を始めて15年以上。かなりの人数が子育て世代になっていた。そうした育休中の社員や、育休から復帰した社員の話を聞くと、これからも子育てをしながら意欲的に働きたいという声が多い半面、現実的には、なかなか預け先が見つからない。見つかったとしても、子供が休みのときなど、どうしても就業に制約が掛かる。働きたい気持ちはあっても、最終的に辞めざるを得ないと考える人もいた。
 「そうした中に、職場に子供を連れてこられたらいいな、という声があった。であれば、会社がいざというときの受け皿になろう、と考えたのが発端でした」
 当時、経営からも、育休や復職社員の退職を止められないか、という話が出ていた。経営と現場の思いが一致した。
 「うまくいくだろうとの予測はありました。理由は、お客さま向けのキッズスペースがあったこと。かつ、社員もお客さまのお子さんが近くにいる中で商談をすることに慣れていたこと。受け入れ体制はクリアしていました」
 試験導入後のアンケートでは、反対意見は1割のみ。理由は、業務効率が下がるのではないか、子供の安全は確保できるのか、という不安だった。
 「基本的には同伴した社員が、子供の責任は持つ。周囲はできる範囲内でお手伝いをしてもらえたらいい。なので、できるだけ受け入れる形でお願いします、と試験運用をし、大きなトラブルは起きなかった。それならば、と、本稼働へ進むことができました」

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導入のポイントは利用のハードルを上げないこと

 導入時に工夫したのは、とことん利用のハードルを下げること。事前に所属長に許可を得るといっても決められたフォーマットはない。伝達手段も自由。電話でもメールでもいい。所属長さえ了承すれば当日の朝でもかまわない。とはいえ、制度導入前は、「騒ぐ子供は受け入れなくてもいいのか」というような質問も寄せられた。それに対しては、「所属長の判断で断ってもらってかまわない。ただ、子供はそもそも騒ぐもの。どうか制度の趣旨を理解していただき、できるだけ許可してあげてください、と。そこは、お願いベースでお話をさせていただいています」。
 力を入れているのは安全健康対策。同伴した子供には、基本、キッズスペースで遊んでもらう。お客さまのお子さんと一緒に遊んでもらうこともある。もちろん、お客さまには趣旨を説明。とても好意的に受け止めてもらえている。これは想定外の効果だった。キッズスペースがない拠点では、簡易的に遊べるスペースを作って、その横で親が仕事をする。動き回ることも事業所内であればかまわないとしている。ほかの社員も子供がいれば、ようすを見たり、声を掛けたりする。そこは自然に、自由に。ただし、危険なので外への連れ出しは禁止。また、工具や刃物などは子供の手が届かないところに置くよう徹底。机の角なども必要があれば緩衝材で保護している。それと、もう一つ大事なのは、子供が感染症にかかっている場合は、同伴不可とすること。一方で軽度の体調不良の場合は、同伴社員の判断に委ねる。利用しやすさが第一だ。

職場が和むといった効果も。今後の課題は利用の拡大

 制度が本稼働して1年以上。課題は、利用率が伸びていないことだ。現状、利用者は月におよそ10人。ただ、1回利用すれば、継続して利用する人が多い。一度利用してみれば、今まで就業制限が掛かっていた社員が「子供同伴でなら出られます」となり、会社も社員も助かる制度だとわかる。「確かに、業務効率が下がってしまうときもあるかもしれません。けれど、それ以上に得られるものがあると思います。子供がいることで職場が和む。明るい雰囲気になる。一体感が生まれる。これからも一生懸命働こう、という気持ちにもつながります。いかに、二の足を踏んでいる社員の気持ちをくんで、もっと使いやすい制度にしていくか。それと圧倒的に女性の利用が多いので、いかに男女の差なく使える制度にしていくか。そこが課題です」。
 同社は、公益財団法人1more Baby応援団を設立するなど、子育て支援や環境作りへの思いが強い。また、法定休暇以外にも、アニバーサリー休暇(本人や家族の記念日に取得できる休暇)や、ハローベイビー休暇(配偶者や直系親族の出産準備や立ち会いなどのために取得できる休暇)を導入するなど、子供を育てながら働き続けられる仕組み作りに注力している。「私も育児経験者なのでわかることも多いのですが、子育てをしながら仕事をするのは本当にたいへんです。それでも仕事を続けていただけるよう、これからもより良い制度を作って推進していきたいと思います。がんばります!」。


【会社DATA】
タマホーム株式会社
本社:東京都港区高輪3-22-9 タマホーム本社ビル
設立:1998年6月3日
代表者:代表取締役会長 玉木康裕/代表取締役社長 玉木伸弥
資本金:43億1,014万円(2019年5月31日現在)
従業員数:3,348人(2019年5月31日現在)
https://www.tamahome.jp/


タマホーム株式会社
人づくり部 課長代理 事務センター 課長代理
梶原元紀さん
かじわら げんき●2007年4月新卒入社。人づくり部、金融部、事務センター部を経て現職。オフはもっぱら家族と過ごす時間。3人目も誕生したばかりで絶賛家事育児中!「6歳の長女、4歳の長男を連れて公園に遊びに行ったり、ドライブに行って、自分もリフレッシュしています」。