月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】階級も役職もなく、価値観を軸に エンゲージメント高く働ける会社

2020-03-13 10:00

求人メディア「Green」や、組織改善プラットフォーム「wevox」、ビジネスマッチングアプリ「yenta」などを展開する株式会社アトラエ。現在、54人の企業ながら東証1部に上場。一方、働きがいのある会社ランキングで国内1位も獲得※。そのエンゲージメントを高める働き方に注目が集まっている。

※Great Place to Work(R) Institute Japanの2019年版「働きがいのある会社」ランキング調査 従業員25-99人部門
取材・文◎石田ゆう子

誰もがイキイキと働ける理想の組織創りを優先

 2003年創業の同社は、成功報酬型求人メディア「Green」を主力事業とし、「世界中の人々を魅了する会社を創る」とのビジョンの下、事業領域を拡大。現在、エンゲージメントの測定サービス「wevox」、ビジネスマッチングアプリ「yenta」を加えた3事業を柱に展開している。2016年、東証マザーズに上場し、2018年東証1部に市場変更。働きがいのある会社ランキング(国内)のベストカンパニーには3年連続選出されている。とはいえ、社員のエンゲージメントを向上させようと、特別な取り組みをしているわけではない。「会社のために自分はどういう貢献がしたいのか。自分からしたいという感情があるから、そういう行動が生まれ、結果的に組織が良くなって、エンゲージメントが高い会社になる。そういったイメージの方が私たちにはしっくりきます」と、谷口孟史さんは話す。
 そもそも同社は、「理想の組織を創りたい」というトップの思いから生まれた会社。同社の代表の新居佳英さんは就職活動時、サラリーマンの姿に希望が持てず、唯一、いいなと思えたのが、スポーツ選手やアーティストだったという。それは、やりたいことに没頭しているからだと感じた。そんな思いがきっかけとなり、新居さんは他社でビジネスの経験を積んだあと、同社を起業。そのときから、「意欲ある人が無駄なストレスなく仕事に没頭できる、イキイキと働ける会社」であることを大切にしてきた。無駄なストレスとは、上司と部下の関係や、出世争い、派閥など。ゆえに同社は役職や階級のないホラクラシー型組織だ。そうした創業の経緯もあり、イキイキと働ける風土を大切にしてきた結果、エンゲージメントが高い会社として認知されるようになっていたという。

コアの価値観を軸にしたぶれない判断がポイント

 同社にとって、「組織に貢献したい」という気持ちがわく風土を維持することは大前提。そのためには、経営がビジョンを語るのはもちろん、採用も働き方も、すべては「無駄なストレスなく、イキイキと働けるか」を判断軸にしてきた。中途採用だと軸がぶれる人もいたので、同じ思いを持つ人を新卒から育てる形を大切にしている。採用基準は、いわゆる利他、ワン・フォー・オールの考え方の人。施策で重視しているのは、情報の透明化だ。会社の情報には全社員がアクセスできる。議論も、社内チャットツールなどオープンな場で行われ、1対1のダイレクトチャットは原則禁止。情報格差がストレスになるからだ。また、月に1回、全社員参加で、会社の価値観やビジョンについて、さまざまなテーマでディスカッション。「理想の組織を創る」という原点に立ち返っている。

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仕事ぶりは成果ではなく、貢献を360度評価で見る

 働き方の自由度は高い。コアタイムなしのスーパーフレックス。仕事も、事業部ごとにやることは決まっているが、誰が何をするかは自由。自ら手を挙げる、あるいは、みんなで相談して決める。「子供も、遊ぶときと学級会ではリーダーが違いますよね。ビジネスでもそのときどき、自然とそれに長けている人がリーダーシップを取るのが理想的。その方が、生産性も上がると考えています」。部門を超えての仕事も多い。組織を良くするためのプロジェクトもある。「私は、『Green』に属して、企画の仕事をしていますが、ほかに、評価制度、社内クレドの策定、内部統制のプロジェクトを持っています。時間の割合としては、本業の方が少ないですね」。
 もちろん結果は求められるが、それも、自分たちで「この人はどれだけ貢献したか」と360度評価で決める。ノルマはない。目標は半年に一度、自分で決める。「1、自分が人生で何をしたいか 2、自分が周囲から期待されている貢献は何か」の2つの問いに対する答えの重なる部分を目標とし、全社に公開する。大事なことは、どちらかを犠牲にするのではなく、どちらも取る方法を考え続けること。「会社はそれを応援します。たとえば、子供と一緒にいたいけれど、会社での貢献も落としたくない、という人には、リモートワークするなり、会社に子供を連れてくるなりしていいよ、との形で応える。そうやって、その人なりの貢献や、いろいろな方面からのアイデアが集まることで、組織は強くなっていくのではないでしょうか」。

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人が嫌がる仕事こそ評価が上がるチャンスに

 当然、誰もやりたがらない仕事が出てくることもある。が、同社の評価は貢献で決まる。誰もやったことのない重要な仕事をした人は、会社に貢献していることになり、評価は上がる。あるいは、誰もやりたがらない仕事なら、なくす方法を考えることも。ちなみに、みんなが嫌がる煩雑なチェック作業を伴う業務があったが、それは、社内のエンジニアに頼んで自動化した。
 「やらされ仕事が生まれた瞬間に、好きな仕事をしている人と、そうでない人という偏りができる。その瞬間に当社の考え方とずれてしまう。基本的には、自分が貢献につながると思ってやっている仕事だけにしたい。多少コストがかかっても、結果、生産性は上がるという考え方です」
 今後の課題は、新しい価値を生み出していける人材をいかに育てていくか。事業もやりたい人が手を挙げて、立ち上げるのが同社のやり方。一人ひとりがそういう能力を身に付けていけたら、と考えている。「あとは、一人ひとりの生きがいを仕事に組み込むという当社のやり方が、価値あるものなのか。それを世に問うていくことが一番のチャレンジ。最終的には一つのグッドケースとして、世の働き方が変わっていくきっかけになればうれしいです」。
 同社のやり方は特別に思えるかもしれない。しかし、会社の価値観を見直して、あらためて宣言し、それに基づいた判断を徹底していく。そこからなら、どんな企業でも始められそうだ。


【会社DATA】
株式会社アトラエ
本社:東京都港区三田1-10-4 麻布十番日新ビル2F
設立:2003年10月24日
代表者:代表取締役 新居佳英
資本金:10億9,800万円
従業員数:54人(2019年12月31日現在)
https://atrae.co.jp


株式会社アトラエ
谷口孟史さん
たにぐち・たけし●2012年中途入社。営業、コンサルティング業務などを経て、現職。昨年11月に第1子が誕生。勤続3年ごとに付与される1か月の有給休暇(サバティカル休暇)制度も利用して今年1月まで育休を取った。趣味のスノボとゴルフは、社内でメンバーを募って行くことも。