月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】訪問看護の現場の声に寄り添った独自の働き方改革を推進

2020-05-18 10:06

"英知を尽くして「生きる」を看る。"とのミッションを掲げる、在宅医療サービス業界大手のソフィアメディ株式会社。2018年、働き方改革「ソフィアWOW!」(Work for our wonderful life !)プロジェクトを立ち上げ、2時間単位で取得できる有給休暇などの新施策をスタート。現場の声を反映した施策は今も進化し続けている。

取材・文◎石田ゆう子

長時間労働になりやすい医療職の働き方改革に着手

 高齢化が急速に進む日本において、今後、ますます必要となる医療インフラ、在宅医療。まだ社会的認知は高くないが、国としても、地域包括ケアシステムの構築をうたっている。同社は、その中核となる訪問看護を中心に、現在、五五の拠点を展開。看護師やリハビリの専門職、理学療法士などが700人ほど在籍しており、自転車や車で定期的にお客さまを訪問。医療的なケアを行っている。「同時に、お客さまの状況を、医師や介護ヘルパーさんに伝達もします。訪問看護は、在宅医療のネットワークの中でも重要な役割を担っていると思っています」と、VMS推進本部 人材開発グループ グループマネジャーの宗梨恵子さんは話す。
 そうした現場で働くスタッフが、より安心して、長く働けるようにと、2018年、働き方改革に着手。「医療職には利他の心を持っている人が多く、お客さまのことを思って突き詰めてしまいがち。長時間労働になりやすい傾向がありました。ただ、サービスを提供する側も健康でなければ。これまでもさまざまな施策を行ってきましたが、あらためて、ほかの産業と同程度の時間外労働に抑えられるよう、会社のシステムとして整えられないかと考えたのが、取り組みのきっかけでした」。
 2018年4月、会社の代表が交代したのを機に、経営方針やミッションを新たに作る「北極星プロジェクト」がスタート。そちらと連携しながら、人事の方でもミッション実現に向けた制度作りを進めた。現場の人と個別面談を行い、長時間労働になってしまう背景や現場の課題を聞きつつ、解決策を探っていった。それを形にしたのが、2018年12月に発表した、働き方改革「ソフィアWOW!」(以下、WOW!)の10の施策だった。

2時間単位の有給休暇で急に空いた時間も有効活用

 WOW!の中でもよく利用されているのが、2時間単位の有給休暇制度だ。以前は、最小で半日単位だったものを2時間単位からにし、当日申請可と緩和した。「訪問看護はどうしても急なキャンセルが発生します。空いてしまった時間も、この制度を使って用事を済ませたり、リフレッシュしたり。有効活用してもらえるようになりました」。これが功を奏して、以前は遠慮しがちだった有給の取得も、「みんなで協力して取っていこうね」という雰囲気が生まれたという。
 ほか、女性社員が多く、平均年齢が30歳代半ばということもあり、育児時短制度の対象を3歳までから、小学校3年生の子供を持つ人までに拡大。ベビーシッターの利用補助や、マタニティー制服の貸与も始めた。また、ダイバーシティの考え方を社内に広め、「当社はアライ(支援者)として受け入れます」との姿勢を示そうと、LGBTQ(Lesbian, Gay,Bisexual, Transgender, Questioning)の人の結婚、育児、就労支援をする施策も整備。同性同士の事実婚への結婚お祝い金支給や、慶弔休暇、育児休暇の取得も可能にした。
 再雇用制度の上限も75歳まで引き上げた。体力的に訪問が難しくなれば、指導者的な役割を担ってもらうなど、働き方にも多様性を持たせられるように考えている。
 さらに、公私にわたる相談窓口として、社内外のホットラインを設置。社内融資制度、給与前払い制度なども設けた。「当社のミッションは、お客さまだけでなく、社員に対しても掲げているもの。社員の『生きる』を看ていきたい。仕事面も生活面も安心してもらうことが、WOW!のねらいです」。

ストーリー仕立ての冊子でわかりやすく制度を浸透

 専門的な部分は社労士に相談しながら規定に落とし込んだ。工夫したのは、社員への伝え方。浸透しやすいよう、わかりやすい小冊子にしてみんなに配った。「この中では、この制度をどんなときに、どのように活用するのかを、一人の看護師が結婚、妊娠、出産を経て、また復帰する、というようなストーリー仕立てで紹介しています。これは、新しく入社してくる人にも必ず渡して、内容を全部説明しています」。
 この5月には、WOW!第2弾としてプラス8つの施策をリリース。内容としては、たとえば、訪問看護は生死に向き合う仕事であり、精神的なダメージを受けることもある。メンタルケア専用の相談窓口を設けることにした。
 今後の課題は、長期休暇の取得促進。仕事が属人的にならないよう、お客さまの担当を個人からチーム制にすることを検討中だ。電子カルテはタブレット端末で見られるようになっており、情報共有はできている。病院では不特定多数の看護師が担当するのは普通のこと。訪問看護も申し送りをすれば問題はない。逆に長期休暇でリフレッシュできれば、サービスの質が上がることも期待できる。

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今後も働きやすさを追求し友人も誘いたくなる会社へ

 もう一つ、解決しなければいけないのが、オンコール体制の問題だ。看護師は、緊急用の携帯電話を当番制で持っている。もし、夜中に対応する事態があった場合、翌日は半休にするなどのインターバル制度の導入を進めているが、現場としては、急にシフトを組み直すのが難しい状況もある。
 「翌日の勤務の中で1時間単位で、最長4時間休みが取れるような仕組みを考えています。事業所内でお互いさまの精神で対応してもらうと同時に、会社側のサポートも敷いていきます」
 WOW!施行後、社員の反応としては、「会社は社員のことを考えてくれているんだな」と好意的な声が多いという。この業界は引く手あまた。嫌であればすぐ他社へ移ってしまう。離職率の改善は大きな課題だが、実際に離職率は下がってきている。「これはWOW!だけの成果ではありませんが、理念に共感して定着していただいたり、新しい仲間が増えたり、という形になってきています。今後、私たちとしてはリファラル採用に力を入れていきたい。会社にエンゲージメントを持っていただいて、その人が友達を呼んでくる。そんな仕組みができたらいいですよね」。


ソフィアメディ株式会社
本社:東京都品川区西五反田1-3-8 五反田PLACE3階
設立:2002年8月
代表者:代表取締役社長 山本遼太郎
資本金:1億2,800万円(資本準備金込み)
従業員数:800人(2020年4月1日現在)
https://www.sophiamedi.co.jp/


ソフィアメディ株式会社
VMS(ビジョン・ミッション・スピリッツ)推進本部
人材開発グループ グループマネジャー
宗 梨恵子さん
そう・りえこ●2009年中途入社。今後必要となる産業に魅力を感じ、人事総務は未経験ながら入社。当時は180人ほどの会社で「ここまで大きくなるとは思っていなかった」という。最近の趣味は海釣り。「自然の中で波の音を聞きながら没頭できるのがいい。引きがあるとまた楽しいです」。