月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】"脱"オフィス・ハンコ・出社でニューノーマル時代の働き方を構築

2021-04-13 09:50

2004年創業、「情報に価値を、企業に変革を、社会に未来を。」を企業理念に掲げる国産ソフトウエアメーカー、ウイングアーク1st株式会社。2020年、コロナ禍を受けて、一部導入していたリモートワークを標準化。「"脱"オフィス」「"脱"ハンコ」「"脱"出社」の「3つの"脱"」の施策で、レガシーワークスタイルからの脱却を進めている。

取材・文◎石田ゆう子

1、「"脱"オフィス」 社員の執務エリアを撤廃

 東京では、約4950平方メートルのオフィスに約500人の従業員が勤務していた。フルリモート後も一部、管理本部などが出社していたが、社員がいないオフィスを見て、「もったいない」と感じた。社員からも「広いオフィスは無駄ではないか?」との声が上がっていた。「今後、オフィスは必要か」「オフィスを撤廃するとどんな問題が起きるのか」と、議論を重ねた。賃貸契約は2年半以上残っていた。早期解約による支出もある。だが、この状況がいつまで続くかわからない。リモートでも混乱なく業務は進められている。結論は、"脱"オフィス。2020年12月、社員の執務エリア約3,300平方メートルを返却した。
 残りのフロアは、接客エリアや会議室、コラボレーションエリアだった。その一部をフリーアドレスの執務エリアや個人ワークエリア、オンラインイベントのスタジオスペースに充てた。一方で、リモート手当や、通信機器費用会社負担などの制度を整備。リモートで働きやすい環境を作ることに力を注いだ。
 社員からは、オフィスというよりどころがなくなる戸惑いも聞かれたが、好意的な意見の方が多かった。1回目の緊急事態宣言解除後も、社員の働き方に大きな変化はなく、2021年2月現在、オフィスに出社しているのは、多い日で20人程度だ。「現状、業務上の問題はありません。しかし、会社としてものごとをダイナミックに進めていくには、部門を超えてのコミュニケーションが足りていない。そこは中長期的に手を打たなくてはいけない課題です」と、執行役員の吉田善幸さんは話す。

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2、「"脱"ハンコ」 紙削減と業務効率化を実現

 フルリモートをきっかけに、管理本部(業務部、経理財務部、法務室、総務部)では、紙ベースだった業務フローを見直し、脱ハンコ、ペーパーレス化に取り組んだ。特に大きな効果が得られたのが業務部だった。
 同部は販売管理部門。これまで受けた注文書は、FAXであろうと電子媒体であろうと印刷し、社内承認のための伝票を紙で出力していた。その後、請求書の発行、さらに電子保管のために紙をスキャンするといった非効率な工程が多数あった。それを2020年5月に変えた。PDFは印刷しない。FAX情報もPDFに変換できる自社製品を活用し、紙出力はゼロに。社内の承認印は撤廃した。「以前は一取引当たり標準15枚、年間25万2,000枚の紙を出力していたのですが、99パーセント削減できました。電子帳簿保存法上の電子取引、電子保存への移行も進めており、保管段ボールは、67箱から1箱になりました」と、管理本部経営管理部長の村山淳さんは話す。
 請求書は、「紙でほしい」という顧客もいるため、フルリモート後も月5回ほど出社して発送していた。それも自社製品で仕組みを作り、自宅からアップロードして印刷会社に入稿。そこから発送できるようにした。実質、出社はゼロになった。社員もコロナ禍で出社せずに済むのは安心だ。「会社は社員のためにそういった対応をしてくれた、と思ってもらえたのもよかった。何より社員の生産性向上につながったことが一番の成果です」(藤本さん)。自社実践の良い事例として、営業に同行し、話をする機会も増えているという。

3、「"脱"出社」 採用も研修もフルリモート

 新卒採用も、会社説明会から、面接、内定式、入社式、研修まで、「Zoom」などを活用してフルリモートで実施した。これまで、一人ひとりの学生と向き合うといったホスピタリティーを大切にしていた同社にとって、リモート採用はそうした強みを失うことになる。「それでも採用を後ろ倒しにする余裕はない。やるしかなかった。やってみたらできた、というのが正直なところです」(吉田さん)。
 結果的に、例年同様の採用に成功。10月、やっと会えた内定者に「就活どうだった?」と聞くと、「会えないのに、ものすごいスピードで選考してくれた。そういった決断の速さからも、いい会社だと思いました」とのうれしい声が返ってきた。
 リモート採用ならではの副産物もあった。これまでリーチできていなかった地方の学生などにも興味を持ってもらえた。また、全職種ではないが、「東京の部門配属になっても東京で暮らす必要はない」とし、居住地と採用拠点の距離というギャップは埋められつつある。
 研修は、半年かけてやっていたものを、2、3か月に短縮して実施。例年はいろいろな職場を経験してから配属先を決定していたが、現場配属を早めた。リモートでも研修はできることがわかったが、新人にとって、4月はネットワーク作りや、会社になじんでいく大事な時期。そこは、出社の頻度を週2日くらいに増やしつつ、現場のリーダーや、管理部門が定期的に会ってフォローをしていく。
 今後は、学生から、「オフィスに来たい」との声もあったため、リモート採用をベースにしながら、状況が許せば、直接会える機会を作る予定だ。ただし、レガシーに戻すつもりはない。リモートでできることはリモートで。今後も、ニューノーマル時代にふさわしいワークスタイルの実現を目指していく。

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【会社DATA】
ウイングアーク1st株式会社
本社:東京都港区六本木3-2-1 六本木グランドタワー
創業:2004年3月
代表者:代表取締役社長兼CEO 田中 潤
資本金:2億円
従業員数:連結651人/単体561人(2020年2月末現在)
https://www.wingarc.com/


ウイングアーク1st株式会社
執行役員CFO 兼 管理本部長 藤本泰輔さん(右)
執行役員人事・組織文化担当 兼 Wellness推進室 室長 吉田善幸さん(左)
ふじもと・たいすけ●大学卒業後、建設会社、広告代理店などを経て2007年ウイングアーク テクノロジーズ(現ウイングアーク1st)に入社。経理財務部長を経て、2016年より執行役員CFO 兼 管理本部長に就任。現在に至る。
よしだ・よしゆき●大学卒業後、本田技研工業や外資系企業を経て、アディダスジャパン、Googleなどで人事トップを歴任。QVCジャパンで人事部門バイスプレジデントを務めたのち、2017年7月ウイングアーク1st入社、執行役員就任。現在に至る。