月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】ゲーム感覚でスキルアップができる リモートに適した評価制度を導入

2021-05-17 12:11

創業8周年を迎えるデジタルマーケティング企業、株式会社オレコン。創業当初から、フルリモートワークを導入していた同社は、総務省の令和元年度「テレワーク先駆者」の11社に選定されており、そのノウハウをビジネスとして顧客企業にも提供。中でも、リモートワーカーのやる気を引き出す評価制度「オレコンWay」が社内外から好評だという。

取材・文◎石田ゆう子

きっかけは、「評価されない」との離職理由を減らすため

 中小企業の経営者向けに、集客や生産性向上につながるウェブマーケティングのコンサルティングをしている同社。現在の主力事業は、2つ。1つは、通販サイトの購入ボタンなどにある小さいテキストによって売り上げの改善をはかる「マイクロコピーTM」。もう1つは、ウェブサイトのデザインに、ターゲットが好んで読む雑誌のデザインなどを応用し、信用を高めて購買につなげる「トラストフォーマットTM」だ。「それに加え、コロナ前からフルリモートワークをしていた当社には、リモートワーカーの採用や教育、評価に関するノウハウがあります。それをビジネスコンテンツとして提供しています」と、人材開発部 ブランドマネージャーの安藤英美さんは話す。
 同社には現在、業務委託や正社員など、60人のスタッフがいる。創業時からリモートワークにしていたのは、優秀な人材を採用しやすいことが大きな理由だ。ただ、採用はできても、「評価されない」「何のためにやっているかわからない」などを理由に離職する人が多いことが課題だった。そこで2016年、「何をしたら報酬が上がるか」を明確にした評価制度を構築。さらに2020年11月、「ゲームのステージをクリアするように、仕事に熱中してスキルを上げていけたら」と、ゲームの仕組みを制度設計に応用。いつでも誰でも見られるリアルタイム昇給制度「オレコンWay」を確立させた。

課題達成ごとに報酬アップ。全クリアで次のステージへ

 オレコンWayは、一般企業でいう、(1)新人、(2)若手中堅、(3)係長、(4)課長、(5)事業部部長、(6)事業立ち上げ(独立)の6つの階層(ステージ)からなり、ステージごとに30個程度のクリアすべき課題がチェックリスト形式で設定されている。項目には「時給換算で〇〇円」と明記してあり、チェック(達成)するごとに報酬が上がる。すべてクリアすると次の階層に昇進。ベースアップする。評価チェックは随時受け付け。月末
締めで翌月から昇給となる。
 ステージが上がれば課題の難易度も上がる。新人ステージでは、「自社商品の動画を観た」などの行動項目がメインだが、事業立ち上げステージになると、「売上数字目標を達成した」といった内容になってくる。ちなみに、同社の人材育成方針は、会社の中でどうなるかではなく、社会の中でどう評価されるか。そのために自分のスキルをどう上げていくか。ゴールは、事業を立ち上げて卒業すること。事業を持たないにしても、経営の視点は身に付けた方がいいという考えだ。
 たとえば、新人ステージをクリアするための最終項目は、「担当の業務数値を10パーセント改善、または10パーセント以上のコストカット達成」。それをどう達成していくかは、各自の業務に当てはめて考える。「それぞれ、自分のやりたいことを仕事にして取り組んでいくので、やらされ感がありません」。

仕事はどんどん引き継いで新しい仕事でさらに成長

 特徴的なのは、自分の仕事を「引き継ぐ」項目があること。仕事はどんどん新しい人に引き継いで、自分は空いた時間に新しいことをやって成長する。結果、仕事が属人化しない。いずれその人が卒業しても会社は困らないというわけだ。
 また、新人と上司の評価は対になっていて、連動した項目があることもポイント。「顧客から課題を引き出した」という新人の項目があったら、上の人にも、「新人が顧客から課題を引き出す機会を作った」という項目がある。上は、下の人を成長させていくことで、自分の評価も上がる。また、上司には、「部下のタイムログを見てスピードを10パーセント改善させる」といった項目もあって、新人の働きすぎなどを抑制する役割も果たしている。
 職種、契約形態にかかわらず、評価ボードは同じ。全員が同じ課題をクリアしなくてはいけない。導入当初、「顧客対応に関する項目は営業の業務だから達成できない」というウェブデザイナーもいた。そこは、「社会で求められる人材になるには、お客さまとセッションしてデザインをやれるようになった方が自分のためになるよ」と必要性を説明し、理解してもらった。
 難しいのは、管理部門が売り上げに関する項目を達成すること。それも各自で工夫。「私の場合は、この評価制度やリモートワーカーの採用ノウハウを外販し、売り上げを作りました。30社ほどに導入していただき、好評です」。

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会社の課題も項目に加えて自然と解決できる仕組みに

 オレコンWayのシステムは、「Trello」という管理ツールを利用。1人1枚のカードがあり、クリックするとそれぞれのチェックリストが立ち上がる。いつでも誰でも見ることができる。「何をして達成されたか」も記されているので、「こういうことをすればこの項目は達成できるのか」と参考にしたり、お互いの仕事を知る場にもなっている。
 現在、最終ステージまで上がって、事業を立ち上げた人が数人いる。卒業も近いという。課題であった定着率は、25パーセントから67パーセントに改善。年商は毎期10パーセント以上拡大を続けている。
 このように成果を出している制度だが、半年に一度はマイナーチェンジ。項目を見直している。たとえば、「セミナー開催に自ら手を挙げて取り組んだ」というような、社内でできていないことを項目に追加。評価制度が課題解決の施策にもなっている。「クリアの難易度が上がって、スタッフとしては少し大変なところもあります。ただ、それも含めて自分のスキルを上げるゲーム感覚で楽しんでいます」。
 今後は、キャンパスがなくオンライン講義のみのスタイルが話題になっているミネルバ大学のカリキュラムで学べるデザイン思考や、コミュニケーション能力などを、評価制度に応用できないかをリサーチ中。「この評価制度がもっと世に広がれば、どこに行ってもどこでも働ける人が増えるのではないか。それが今の私がやりたいこと。5年前の自分からは成長したと思っています」。


【会社DATA】
株式会社オレコン
本社:大阪府大阪市中央区北久宝寺町3-6-1-7階
創業:2013年4月18日
代表者:代表取締役 山本琢磨
資本金:1,100万円
従業員数:60人(2021年4月現在)
https://orecon.co.jp


株式会社オレコン
人材開発部 ブランドマネージャー
安藤英美さん
あんどう・えみ●2017年入社。5年間の専業主婦期間を経て入社。現在、評価制度構築や人材育成、キャリア面談などを担当。在宅ワークを希望する主婦向けのオンラインスクール「Herbest」を運営。オフの楽しみは料理。「得意なのは、おでんや、煮込み料理系。長時間、鍋をかけておけるのも、リモートワークならではですね」。