月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】デジタルサイネージによる情報開示で社員の「自律自走」をあと押し

2021-07-21 11:38

仮設機材などの開発・製造から、販売、レンタル、設計、施工、管理・物流まで、建設工事にまつわるサービスをワンストップで提供している株式会社タカミヤ。同社では、社員自身に働き方を考えてもらう「気付き」になればと、平均給与や管理職登用年齢、残業時間、有休取得率などの情報を開示。大胆にもデジタルサイネージで公開しているという。

取材・文◎石田ゆう子

シビアな内容も公開し、働き方を見直す気付きに

 既存事業に加えて、新規のアグリ事業を展開したり、グループ企業を増やすなど、経営基盤を強化し、成長し続けてきた同社。2014年8月、大阪本社移転を機に、エントランスや来客スペースなどに大型モニター(デジタルサイネージ)を設置。「ほかの支店や工場にも導入。さらにモニターを設置できない営業所などでも見られるよう、社員向けPCのスクリーンセーバーにも同じコンテンツが表示されるようにしました」と、経営管理本部人事部人事企画課の小園啓介さんは話す。
 当初、デジタルサイネージの内容は、グループ企業が同フロアに集結したこともあり、社員の出身地ランキングや、今週の誕生日の社員紹介など、コミュニケーション促進を目的としたライトなコンテンツが中心だった。
 その後、グループ間認知も深まったところで、よりシビアな内容に移行。現在は、社員の平均給与や、初めて管理職に登用されたときの平均年齢、残業時間、有給休暇取得率などの情報を開示している。社外の人の目にも留まるため、「こんな数字まで公開していいの?」と驚かれることも多いが、「当社は、自律自走の方針を掲げているので、社員自身で考えて、行動を起こすための"気付き"を与えられたらと、あえて公開しています」。

「気付き」を与えられるコンテンツを工夫

 たとえば、建設現場にうかがう同社の営業には移動が伴う。その平均移動時間ランキングを開示。自分の部署が他の部署と比べて移動時間が長ければ、「何か課題があるのではないか」と、人員配置などを見直す。働き方改革のきっかけとなっている。
 また、年代別の平均給与など、社員同士でもなかなか話をしないところも開示している。「自分の給与が平均と比べて低ければ、がんばらないといけないな、と気付きますし、逆に高ければ、ちゃんと評価してくれているんだな、とのフィードバックになる。特に反発の声はなく、自分の立ち位置に気付いて考える、いいきっかけにしてくれているようです」。こうしたオープンな社風を感じてもらうことで、お客さまの同社への理解が進むといった、副次的効果もあるそうだ。
 デジタルサイネージの内容は、トップの考えや経営方針に基づき、いかにそれを社員に気付いてもらうか、との視点から考えて提案。了承されれば、それを発信する。「気付きにつながりやすいよう、ランキング方式を多く取り入れ、グラフや図を使って見せています。見慣れてくると景色の一部になってしまうので、同じ内容でも、定期的にデザインを更新。経年変化が必要なデータは継続しつつ、半期に一度は内容を刷新しています」。今後は、見るだけのサイネージではなく、そこからより詳細な情報へのアクセスができるような仕組みにできたら、とも考えている。

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「シェア制度」でノウハウの共有も推進

 社員の自律自走を応援する施策は、ほかにもある。たとえば、シェア制度。「社内のポータルサイトにシェアページがあり、業務効率化事例や、外部から得た役立つ情報、仕事に有効なアイデアなどを投稿します。全社員が見られるので、役立つ資料があればダウンロードしたり。私の場合は、何か困ったときに調べる仕事辞典のように利用しています」。ノウハウの横展開はもちろん、「この人はどんなことをしている人なのか」「この新人さんは、よく考えてやっているな」といったことがわかるのも、この制度のいいところ。投稿には、「いいね」と思ったら押せる「つかえるネ!」ボタンがあり、毎月ランキングを集計。月間MVPの投稿は、全社員参加の定例会で発表してもらっている。
 ちなみに、「そういう環境に身を置かないと考えない」との理由から、1人月3件の投稿が義務化されている。ランキング上位の人たちは、シェアのためにしているわけではないが、常日頃、自然と考えながら仕事をしているので、できる仕事にも幅があるという。
 年に1回、年間総合ランキングも発表。上位者は、新年交礼式にて表彰され、旅行券と特別休暇の賞品が贈られる。2021年は、やむなくオンラインで実施したが、こうしたイベントを大切にするのも同社の文化。例年、年末には創業の地で、お客さまを招いての餅つき大会も行っている。「それも昨年末は、Zoomで全国の拠点をつないで、餅つきリレーという形で行いました。次はまた違った切り口で楽しんでもらえるものを考えます」。

事務職のスキルアップは「スターキャリア制度」で

 始めたばかりの施策もある。事務職を対象に、自発、自律的なキャリア形成の推進を目的とした「スターキャリア制度」だ。これまで同社の事務職は、転勤を伴わない職種コースということもあり、新たな経験をしてみたいと思ったときに挑戦できるような仕組みがなかった。「そこで、エントリーすれば、上司を通さずに人事と直接面談ができ、調整がつけば、希望の部署に異動ができる。異動先で一定期間を経て、スキル認定されれば、星が1つ付き、手当が支給される。星が増えれば給与も増えていくというスキルアップの制度を作りました」。さまざまなスキルを持った人を増やしていけば、会社全体の繁忙期、閑散期に合わせて、バランスよく人員配置ができる。会社にとってもメリットのある制度だ。「繁忙期には、経験部署に戻って勤務してもらうこともある。それを了承できることが、エントリー条件です」。
 第1回目の募集には、まだ様子見という雰囲気もあったが、手を挙げる人も多く、今後、成功例が出てくれば、エントリーが当たり前のようになるだろうと考えている。「働き方改革には、社員が自分のキャリアプランや、ライフプランに合わせて、勤務の形態や場所、職種コースなどを自由に選択できるようにすることがとても大事。それが社員にも会社にもメリットになるような施策を、これからも考えていきたいです」。


【会社DATA】
株式会社タカミヤ
本社:大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪 タワーB27階
設立:1969年6月21日
代表者:代表取締役会長 兼 社長 ?宮一雅
資本金:10億5,011万円
従業員数:711人(連結従業員数 1,221人)
https://www.takamiya.co


株式会社タカミヤ
経営管理本部 人事部 人事企画課
小園啓介さん
こぞの・けいすけ●2014年入社。希望の総務部に配属され、新卒採用を中心に担当。2021年4月組織変更で総務部から人事が独立し、現職。オフは、ほとんど犬と遊ぶ時間に充てつつ、「レコードを集めたり、今に続く音楽の歴史をひも解いたり。コロナ禍でも好きな音楽を満喫しています」。