月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】コミュニケーション改革から進める 70年企業のリブランディング

2020-02-14 10:06

2018年6月、日立工機から社名変更した電動工具メーカーの工機ホールディングス株式会社。同年10月1日には、メインブランド名を「HiKOKI(ハイコーキ)」に変更。リブランディングを進めている。70年以上の歴史ある企業がどのように改革に取り組んでいるのか。マーケティング・コミュニケーションの担当者にお話をうかがった。

取材・文◎石田ゆう子

日立グループから離脱。まず着手したのは文化改革

 プロ向けの電動工具など、パワーツールのメーカーである同社。グローバル企業として展開する中、2017年日立グループから離脱。米投資会社KKRの傘下に入り、2018年6月1日、第二の創業のスタートを切った。
 「私が入社したのは、社名が変わるちょうど1か月前。誰もが知る『日立』という名前から離れたときに、いかに新しい社名を、新しいブランドを浸透させていくのか。そのためのさまざまなコミュニケーション活動を推進してきました」と、経営戦略本部 マーケティング・コミュニケーション室長の玉川岳郎さんは話す。
 リブランディングには、社員がこの先、自分たちで自立して、どんな未来を作っていくのか、と発想できる風土が必要だった。そのためにまず取り組んだのは、企業文化の改革。ノーネクタイが許されるだけで「すごい」と考えられていた同社で、2018年7月から3か月間、夏場だけでもカジュアルな服装で過ごせるようにした。これも、ただやるのではなく、「会社のコーポレートカラー、グリーンを表現しよう。緑色の服なら何でもオッケー」と、「カジュアルグリーンデイズ」の名称で展開。すると、経営陣が会議の場で緑色の服を着るようになった。
 一方で、「緑色の服を持っていない」という声も聞かれた。そこで、2018年の秋、緑色のポロシャツを会社が支給。2019年7月からの「カジュアルグリーンデイズ」では、一層社内が緑色に染まった。この成果を受けて試験的に、10月から品川本社では服装を自由とした。自由といってもTPOに合わせて自分で考えなくてはいけない。そうした「自分で判断する文化」を醸成するねらいもあった。
 「最初の1週間は私が体を張って、限界となる服装で社内を歩き回りました。今後、本社でアンケートを取って、好評であれば全社展開しようと思います」
 実際、社員の服装が自由になってきた感じはある。それだけでコミュニケーションの在り方も変わりつつある。「もちろん、文化の改革は一足飛びにはいきません。ですが、わりと自由に働いていいんだな、自由に発言していいんだな、という機運は高まってきていると思います。これからも多様な意見を聞きながら、改革を推進していきます」

ブランドの思いを伝える新たなタグラインも導入

 社外向けコミュニケーション活動としては、ブランド名変更に合わせて、新たなタグライン「UNLEASH the NEXT(解き放つ、その先へ。)」を導入。その作成にあたっては、外部のコンサルタントも含めた少数精鋭のプロジェクトチームで、「ハイコーキのブランドの意味合いとは何か」から議論した。
 ハイコーキ製品の一番の価値とは、プロが使うものならではのパワー、精度、耐久性。それと、もう一つ。強みとする「思い通りの仕事がどこでもできる」コードレス製品に象徴される、ユーザーの声を反映した製品やサービス。それらを踏まえ、「私たちは、パワーツール領域で、進化する極上のユーザー体験を提供し続ける」ことを、ハイコーキブランドの約束事として結論付けた。
 2018年10月1日、販売店やエンドユーザー向けイベントを開催。新ブランド、ハイコーキの要諦を発表した。同イベントは、順次海外でも実施。また、デジタルマーケティング活動も展開している。たとえば、ハイコーキ製品によって、絡まるコードから解放される職人さんを描いたウェブ動画は、ユニークな中にも製品の魅力が伝わる内容。これらの活動により、ハイコーキブランドのユーザーからの反応は良好だという。

会議は議論しやすい車座に。社長との距離感にも変化

ph_b_1.jpgのサムネイル画像 2019年4月1日、森澤篤新社長が就任。その豊かな発想から、一層コミュニケーションの変革が進んでいる。たとえば、会議の仕方。経営会議は、テーブルを取り除き、車座でのスタイルとした。するとオープンな議論をする雰囲気が生まれ始めた。また、効率的に進行できるよう会議の種類も分けた。1時間から2時間の「あっさり会議」、半日から1日ほどの「じっくり会議」、1泊2日合宿の「とことん会議」といった具合だ。「私も部内のリーダー会議は車座でやっています」。

 ほか、社長の考えを理解する場として、10人前後の少人数グループが、オフィス近くの飲食店で社長とざっくばらんに語り合う「夕暮れドキ会議」も実施。この人数だと社長を囲み全員が一緒の話題に参加できるのがいい。また、社内報とは別に、経営からのメッセージに特化した、社員向けニュースレターも四か国語で発行を始めた。「さらに最近ではオンライン中継による初めてのグローバルタウンホールミーティングも行いました」。

世の中との接点を増やし、一層ブランド価値の向上を

 このように、さまざまなコミュニケーション活動を推進する上で気を付けていることは、全体が一つの世界観としてつながっていること。リブランディングは、次の未来を作っていくため、成長していくためのもの。そのためには、お客さま目線で何ができるかを考え続けることが大切だ。「まだまだ道半ばです。いかにブランドを成長させていくか。その価値を高めていくか。これからもグローバルで探求し続けていきます」。
 社内向けには、さらに社員の理解が進み、行動が変わるように影響を与え続けていく。結果、チームワークが良くなり、もっと能動的に事業を推進できる、筋肉質なワンチームになるであろうことを期待している。
 「私が考える広報とは、世の中の窓口。窓口として、世の中との接点を増やせば増やすほど、コミュニケーションの流通量を増やせば増やすほど、おのずと事業に好影響を与えられるし、ブランド価値に良い影響を与えられる。社員にとっては、自己の存在価値を再認識できる。私たちの役割は、それをインスパイアすることだと思っています」


【会社DATA】
工機ホールディングス株式会社
本社:東京都港区港南2-15-1(品川インターシティA棟)
設立:1948年12月18日
代表者:代表取締役 社長執行役員 森澤 篤
資本金:178億円(2018年3月31日現在)
従業員数:連結6,446人(2018年3月31日現在)
https://www.koki-holdings.co.jp


工機ホールディングス株式会社
経営戦略本部
マーケティング・コミュニケーション室長
玉川岳郎さん
たまがわ たけお●リード エグジビション ジャパン、日本オラクル、日本IBM、日本マクドナルドを経て、2018年5月入社。今、オフで一番の楽しみはキャンプツーリング。外で食べるご飯のおいしさは格別!と、「自宅でも週末、テラスでキャンプ飯を作って食べています(笑)」。