月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】タクシー業界のイメージを変える 独自の働き方改革で若手社員が定着

2020-06-11 16:53

2020年、創業100年を迎えた国際自動車株式会社。業界に先駆けて新卒採用に注力し、働き方改革をスタート。女性活躍推進にも取り組み、2019年には、妊娠中の女性社員の働きやすさ向上に向けた「プレママサポートプログラム」を導入。こうしたさまざまな施策によって、女性を含めた若手人材の定着率向上につなげている。

取材・文◎石田ゆう子

実は残業が少なく、有給も取得しやすいことが強みに

 kmブランドでおなじみ、タクシー、ハイヤー、バス事業を展開する同社。働き方改革のきっかけは10年ほど前にさかのぼる。当時、タクシー業界は中途採用がメインで、社員の年齢層は高かった。「このままでは業界の将来はない。もっと若い人や女性に働き手になってもらおうと、採用部門から刷新。若手中心の採用専門チームを編成し、若い人に訴求できるようなホームページを作成するなど、新卒採用に取り組むことから始めました」と、取締役総務部長佐々木達也さんは話す。2010年、初の大学新卒ドライバーが入社。以降、年々増加し、2013年には、43人に。うち2人は女性だった。
 働き方改革というと、労働時間の課題に目がいきがちだが、もともとタクシー業は、お客さまの命を預かる公共交通機関としての仕事。法律で厳しく労働時間が定められている。多くの社員が担当する隔日勤務の働き方でいうと、1回の勤務で残業は約2時間までしかできない。月に11回出勤したとしても、残業は22時間。意外に少ない。さらに、有給休暇などを組み合わせることで、長い休みも比較的取りやすい。会社もシフトの組み方など協力的だ。「そういう働き方を魅力的だと感じる若い人は多い。以前は大々的にうたっていなかったのですが、わかりやすく伝えていくようにしました」。

充実の教育と健康経営で新卒の定着率に成果

 教育にも力を入れた。ビル一棟をホスピタリティカレッジとしてオープン。そこで、1、2か月かけて、特に接客面を強化した研修を実施後、現場に配属するようにした。また、研修期間および現場に出てからの6か月から8か月間は、一般的な大卒新卒初任給の固定給とし、安心して仕事を覚えてもらってから歩合制に移行するようにした。こうした取り組みの成果は定着率に表れた。よく新卒は3年で30%が辞めるといわれるが、同社は、3年で約25%だ。「今は、新卒ドライバーのキャリアプランから職種変更をして内勤職や管理職を目指しています。また、当社では、kmブランドで個人タクシーを事業主として開業できる仕組みも作りました」。
 新卒が増えるにつれ、課題となったのは健康管理だ。体調はもちろん、タクシーは、接客メインのサービス業。メンタルケアの重要性も高まってきた。そこで、健康管理室を人事労務課の直轄組織として設置。産業医と連携し、看護師、保健師を常駐させて、現場とのコミュニケーションを取りながら、健康管理体制を強化した。さらに、会社を通さずに相談できる外部のカウンセリング窓口も設けた。これらの活動もあって、2018年から連続して、健康経営優良法人に認定されている。

妊娠しても無理なく仕事を継続できる制度を開始

 一方で、女性活躍推進にも取り組んできた。すべての営業所に女性専用の休憩スペースやパウダールームを作るなど、女性が働きやすい環境作りを進めるのはもちろん、女性タクシードライバー採用特設サイトを作り、女性社員の生の声などを発信。これを見て「女性のことを考えてくれている企業なんだな」と、入ってきてくれる女性も増えているという。そうした活動の一環で、2019年5月、「プレママサポートプログラム」を導入。これは、妊娠後、今までと同じ業務をすることが難しいと本人が判断した場合、一時的に適した職場に配属される制度。同社には、以前から女性従業員としてドライバー、バスガイド、整備士がいたが、結婚や妊娠を機に退職することがほとんどだった。しかし、スキルを持った人が辞めてしまうのは双方にとって残念なこと。なんとかできないかと、社員にヒアリングしていくと、やはり、妊娠したら運転や立ち仕事は控えたい、でも、仕事は継続したい。そして、復帰するときには再び元の仕事に戻りたい、との声が多かった。そうした声から生まれたのがこの制度だった。
 利用は本人の申告制。それを受けて、就業可能な部署を人事労務課が選定して、マッチングをする。利用しやすいよう、妊娠の報告が上がってきたときには、「こういう制度があることは知っていると思うけれど、利用する気持ちがあるなら、人事から所属長に一報いれるからね」と、声を掛けるようにもした。中には、配属先が変わることで通勤時間が長くなる、といった事情でマッチングが不成立になる場合もあるが、この1年で利用者は4人。増えてきている。今年の3月から利用している社員は、コールセンター業務を経て、新型コロナウイルス感染症対応で多忙となった人事に配属された。違う仕事を覚えるのは大変そうだが、「研修もあり、しっかり教えてもらえるのでスムーズ。こういう制度があることがありがたいです」と、好評だ。

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利用者の声で制度を改善し一層人が集まる会社に

 課題は、就業可能な業務をどう切り出していくか。いかに、受け入れ側、本人の双方にとってストレスにならないようにするか。実際、この制度を利用し、育休から復帰する社員が出てくるのはこれから。その意見を反映し、より良い制度にしていくことで、さらに女性社員が増えていくのでは、と、同社は期待を寄せ
る。「女性ドライバーはお客さまからの評判も良く、会社としても女性ならではの視点で気付かされることも多い。この先、お子さんを持った上でタクシーの運転をする人からのフィードバックが受けられるようになれば、さらに事業にも良い影響がある。いろいろと可能性が広がる制度だと考えています」。
 現在、タクシー業界全体の女性ドライバーの比率は2パーセント前後。対して同社は5パーセントと、成果は出ている。今後も、労働時間の規制など法律で守るだけではなく、独自の取り組みで、社員が働きやすい環境作りと、お客さまへのサービス向上の両立を目指していく。


【会社DATA】
国際自動車株式会社
本社:東京都港区赤坂2-8-6 km赤坂ビル
設立:1920年3月
代表者:代表取締役社長 西川洋志
資本金:1億円
従業員数:7,177人(2019年4月現在)
https://www.km-group.co.jp


国際自動車株式会社
取締役総務部長
佐々木達也さん
ささき・たつや●1990年入社。ハイヤー部門営業を経て、企画、経理、役員室長などの管理畑を歩み、2018年より現職。新型コロナウイルス感染症対応では、総務セクションの重要性と困難さを痛感。休日は(草むしりに近い)庭いじりと、遅ればせながら1年前より始めたゴルフの練習に精を出し、静と動のバランスを心掛けている。